【完結】SFゲームの世界に転移したけど物資も燃料もありません!艦隊司令の異世界宇宙開拓紀

黴男

文字の大きさ
40 / 247
シーズン1-クロトザク戦線

038-『ラー・アーク』

しおりを挟む
その日、皇国は、侵略者に土足で踏み入られた。

『クロトザク皇国の民よ、聞け。諸君らは我等ノーアトゥーン連邦国に完全敗北を喫した』

全ての通信システム、放送システムが瞬時にハッキングされ、シンの声が皇国中に響く。

『戦争の責任者である皇女は、48時間以内に出頭せよ。出頭しない場合、クロトザク首都惑星への総攻撃を開始する。』

そして、皇都の民は見た。
悪夢のような巨艦が、雲を割いて皇都へと降下するのを。
自分たちだけのものだった空を、夥しい数の艦船とドローンが埋め尽くした。

『直ちに戦闘行為を中止せよ。こちらは民間人への攻撃を厭わない』
「ふざけるな! 俺たちはまだ負けてな――――」

拳を振り上げ、翻意を示した勇敢な男がいた。
皇国でノーアトゥーンに反撃の意思を示した、最初の男だった。
しかし、小型ドローンによる遠距離射撃で、呆気なく即死した。
それによって起こった騒ぎは広まっていく。

『以降の戦闘行為に参加した人間は、容赦なく射殺する。これはこちらの最大限の恩情である。感謝せよ』

それを以て、通信は切断された。
混乱の極致にある皇都で、将軍は一人高笑いしていた。

「わーーっはっはっはっは!!! ははははははは!!!! こいつは傑作じゃな!!」

将軍は笑いながら、管制塔の屋上から身を投げたのであった。



その頃。
皇城にいた騎士団長は、皇女を探していた。
だが、探しているうちに既に皇城がもぬけの殻である事に気付く。

「皇女....それがあなたの選択かっ!!」

騎士団長は怒り狂った。
そして、一握りの者しか知らない皇城の地下へと降りていく。
何個もの扉を開け、そして見た。

「ああ.....『ラー・アーク』が......」

広大な空間を。
そこに本来収まっていたはずの箱舟は、どこにもなかった。

「ハハ....ハ......」

騎士団長は、同行させてもらえなかった自分を恥じ、抜いた銃で自分の頭を撃ち抜いたのであった。






「大勝利だな」

俺は笑う。
こちらの損害はほぼゼロ、しいて言えば首都防衛の戦力がゼロに近いという事だが....

「まぁ、イレギュラーなんかそうそう無いだろう」
『誠に残念ですが、司令官。ワープ反応を感知』
「冗談だよな?」
『戦闘に関して嘘は吐けませんから』

つまりそれ以外は嘘を吐けるんだな?
そう思った俺だったが、直後にそうも言ってられなくなった。

「何だ...?」

ワープしてきたのは、大型の戦艦サイズの船だった。
装甲は黒く塗りつぶされており、明らかに皇国の船のデザインではない。

『司令官、相手側が通信許可を求めてきています』
「スクリーンに投影しろ...それから二人は、下でご飯でも食べてこい」
「え...」

戦闘の様子を眺めていたルルが、悲しそうな目をする。
俺はそれを、首を振って否定した。

「すぐに終わる、待っていろ」
「...はい」

ルルとネムが退出した後、俺は制帽を被り直して通信に応じる。

『ようやく見つけたぞ、貴様らの本拠地を...さあ観念するがいい、そんな城程度、このラー・アークで捻り潰してくれる!』
「わざわざ皇女が直々に和平交渉に来てくれるとは、感謝の至り。さぁ、五体投地して懇願しろ、国民を助けてくださいとな!」

我ながら物凄い悪役ムーブしてると思うが、先に仕掛けてきたのはあっちだし皇女は謝らないし、正直使い潰す方向でいいなと思っている。

『いつまで余裕でいられるかな! 主力艦隊が本星にいる以上、お前に勝てる術はない!』
「お前は一つ、間違いを犯したな。...まぁ、結果がものを言うだろう」
『抜かせ!』

直後、ラー・アークが砲撃を開始する。
皇国の兵器群とは比べ物にならない威力だが。

『シールド、99%に低下』
「ホールドスターのシールドは650億分はあるからな...」

これがホールドスターが絶対堅固の牙城と呼ばれる所以である。
だが、シールドが完全に剥がれると再構築に時間がかかるのもまた事実。

「ホールドスター、戦闘モードへ移行! ターゲットロック開始!」

俺は指示を飛ばし、ホールドスター迎撃戦を開始するのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...