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シーズン1-クロトザク戦線
038-『ラー・アーク』
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その日、皇国は、侵略者に土足で踏み入られた。
『クロトザク皇国の民よ、聞け。諸君らは我等ノーアトゥーン連邦国に完全敗北を喫した』
全ての通信システム、放送システムが瞬時にハッキングされ、シンの声が皇国中に響く。
『戦争の責任者である皇女は、48時間以内に出頭せよ。出頭しない場合、クロトザク首都惑星への総攻撃を開始する。』
そして、皇都の民は見た。
悪夢のような巨艦が、雲を割いて皇都へと降下するのを。
自分たちだけのものだった空を、夥しい数の艦船とドローンが埋め尽くした。
『直ちに戦闘行為を中止せよ。こちらは民間人への攻撃を厭わない』
「ふざけるな! 俺たちはまだ負けてな――――」
拳を振り上げ、翻意を示した勇敢な男がいた。
皇国でノーアトゥーンに反撃の意思を示した、最初の男だった。
しかし、小型ドローンによる遠距離射撃で、呆気なく即死した。
それによって起こった騒ぎは広まっていく。
『以降の戦闘行為に参加した人間は、容赦なく射殺する。これはこちらの最大限の恩情である。感謝せよ』
それを以て、通信は切断された。
混乱の極致にある皇都で、将軍は一人高笑いしていた。
「わーーっはっはっはっは!!! ははははははは!!!! こいつは傑作じゃな!!」
将軍は笑いながら、管制塔の屋上から身を投げたのであった。
その頃。
皇城にいた騎士団長は、皇女を探していた。
だが、探しているうちに既に皇城がもぬけの殻である事に気付く。
「皇女....それがあなたの選択かっ!!」
騎士団長は怒り狂った。
そして、一握りの者しか知らない皇城の地下へと降りていく。
何個もの扉を開け、そして見た。
「ああ.....『ラー・アーク』が......」
広大な空間を。
そこに本来収まっていたはずの箱舟は、どこにもなかった。
「ハハ....ハ......」
騎士団長は、同行させてもらえなかった自分を恥じ、抜いた銃で自分の頭を撃ち抜いたのであった。
「大勝利だな」
俺は笑う。
こちらの損害はほぼゼロ、しいて言えば首都防衛の戦力がゼロに近いという事だが....
「まぁ、イレギュラーなんかそうそう無いだろう」
『誠に残念ですが、司令官。ワープ反応を感知』
「冗談だよな?」
『戦闘に関して嘘は吐けませんから』
つまりそれ以外は嘘を吐けるんだな?
そう思った俺だったが、直後にそうも言ってられなくなった。
「何だ...?」
ワープしてきたのは、大型の戦艦サイズの船だった。
装甲は黒く塗りつぶされており、明らかに皇国の船のデザインではない。
『司令官、相手側が通信許可を求めてきています』
「スクリーンに投影しろ...それから二人は、下でご飯でも食べてこい」
「え...」
戦闘の様子を眺めていたルルが、悲しそうな目をする。
俺はそれを、首を振って否定した。
「すぐに終わる、待っていろ」
「...はい」
ルルとネムが退出した後、俺は制帽を被り直して通信に応じる。
『ようやく見つけたぞ、貴様らの本拠地を...さあ観念するがいい、そんな城程度、このラー・アークで捻り潰してくれる!』
「わざわざ皇女が直々に和平交渉に来てくれるとは、感謝の至り。さぁ、五体投地して懇願しろ、国民を助けてくださいとな!」
我ながら物凄い悪役ムーブしてると思うが、先に仕掛けてきたのはあっちだし皇女は謝らないし、正直使い潰す方向でいいなと思っている。
『いつまで余裕でいられるかな! 主力艦隊が本星にいる以上、お前に勝てる術はない!』
「お前は一つ、間違いを犯したな。...まぁ、結果がものを言うだろう」
『抜かせ!』
直後、ラー・アークが砲撃を開始する。
皇国の兵器群とは比べ物にならない威力だが。
『シールド、99%に低下』
「ホールドスターのシールドは650億分はあるからな...」
これがホールドスターが絶対堅固の牙城と呼ばれる所以である。
だが、シールドが完全に剥がれると再構築に時間がかかるのもまた事実。
「ホールドスター、戦闘モードへ移行! ターゲットロック開始!」
俺は指示を飛ばし、ホールドスター迎撃戦を開始するのであった。
『クロトザク皇国の民よ、聞け。諸君らは我等ノーアトゥーン連邦国に完全敗北を喫した』
全ての通信システム、放送システムが瞬時にハッキングされ、シンの声が皇国中に響く。
『戦争の責任者である皇女は、48時間以内に出頭せよ。出頭しない場合、クロトザク首都惑星への総攻撃を開始する。』
そして、皇都の民は見た。
悪夢のような巨艦が、雲を割いて皇都へと降下するのを。
自分たちだけのものだった空を、夥しい数の艦船とドローンが埋め尽くした。
『直ちに戦闘行為を中止せよ。こちらは民間人への攻撃を厭わない』
「ふざけるな! 俺たちはまだ負けてな――――」
拳を振り上げ、翻意を示した勇敢な男がいた。
皇国でノーアトゥーンに反撃の意思を示した、最初の男だった。
しかし、小型ドローンによる遠距離射撃で、呆気なく即死した。
それによって起こった騒ぎは広まっていく。
『以降の戦闘行為に参加した人間は、容赦なく射殺する。これはこちらの最大限の恩情である。感謝せよ』
それを以て、通信は切断された。
混乱の極致にある皇都で、将軍は一人高笑いしていた。
「わーーっはっはっはっは!!! ははははははは!!!! こいつは傑作じゃな!!」
将軍は笑いながら、管制塔の屋上から身を投げたのであった。
その頃。
皇城にいた騎士団長は、皇女を探していた。
だが、探しているうちに既に皇城がもぬけの殻である事に気付く。
「皇女....それがあなたの選択かっ!!」
騎士団長は怒り狂った。
そして、一握りの者しか知らない皇城の地下へと降りていく。
何個もの扉を開け、そして見た。
「ああ.....『ラー・アーク』が......」
広大な空間を。
そこに本来収まっていたはずの箱舟は、どこにもなかった。
「ハハ....ハ......」
騎士団長は、同行させてもらえなかった自分を恥じ、抜いた銃で自分の頭を撃ち抜いたのであった。
「大勝利だな」
俺は笑う。
こちらの損害はほぼゼロ、しいて言えば首都防衛の戦力がゼロに近いという事だが....
「まぁ、イレギュラーなんかそうそう無いだろう」
『誠に残念ですが、司令官。ワープ反応を感知』
「冗談だよな?」
『戦闘に関して嘘は吐けませんから』
つまりそれ以外は嘘を吐けるんだな?
そう思った俺だったが、直後にそうも言ってられなくなった。
「何だ...?」
ワープしてきたのは、大型の戦艦サイズの船だった。
装甲は黒く塗りつぶされており、明らかに皇国の船のデザインではない。
『司令官、相手側が通信許可を求めてきています』
「スクリーンに投影しろ...それから二人は、下でご飯でも食べてこい」
「え...」
戦闘の様子を眺めていたルルが、悲しそうな目をする。
俺はそれを、首を振って否定した。
「すぐに終わる、待っていろ」
「...はい」
ルルとネムが退出した後、俺は制帽を被り直して通信に応じる。
『ようやく見つけたぞ、貴様らの本拠地を...さあ観念するがいい、そんな城程度、このラー・アークで捻り潰してくれる!』
「わざわざ皇女が直々に和平交渉に来てくれるとは、感謝の至り。さぁ、五体投地して懇願しろ、国民を助けてくださいとな!」
我ながら物凄い悪役ムーブしてると思うが、先に仕掛けてきたのはあっちだし皇女は謝らないし、正直使い潰す方向でいいなと思っている。
『いつまで余裕でいられるかな! 主力艦隊が本星にいる以上、お前に勝てる術はない!』
「お前は一つ、間違いを犯したな。...まぁ、結果がものを言うだろう」
『抜かせ!』
直後、ラー・アークが砲撃を開始する。
皇国の兵器群とは比べ物にならない威力だが。
『シールド、99%に低下』
「ホールドスターのシールドは650億分はあるからな...」
これがホールドスターが絶対堅固の牙城と呼ばれる所以である。
だが、シールドが完全に剥がれると再構築に時間がかかるのもまた事実。
「ホールドスター、戦闘モードへ移行! ターゲットロック開始!」
俺は指示を飛ばし、ホールドスター迎撃戦を開始するのであった。
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