キング・デバイス

黴男

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018-邂逅

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次の試合でも観戦するかと外を眺めていた時。

「ちょっと、貴方」

唐突に声をかけられた。
窓に反射して、誰であるかはすぐにわかった。

「な、何でしょうか」
「ここは貴族専用のサロンよ、どうして貴方がここに居るの?」

ミユキ・カナタだった。
サロンには人が居らず、また彼女も誰も連れていなかった。

「シュレイン伯爵家の方に、貴女の試合を観戦したいと頼んで連れてきてもらいました」
「...そう、貴方も私のファンというわけね」

彼女は神妙な表情で僕を見る。
そんな顔で見られても、困るだけなのだが...

「いえ、ファンというにはあまりに浅学です。ただ僕は、貴方の戦い方を参考に出来たらと思って見に来たんです」
「ここに入るために、平民がどれだけ苦労すると思って? 偶然とはいえ、その機会を私の試合を見るためだけに使って良いのかしらね?」
「他に何を見るというのですか?」
「...それもそうよね」

決闘場の上位勢はミユキ・カナタだけではないが、現在上位勢の大多数を占める上級生たちは入学式で見たっきりで、決闘場に姿を現していない。
なら、現状ミユキ・カナタ以外は雑魚と切って捨てても問題ないレベルの実力だ。

「どうしてこちらへ?」
「たまには他人の試合を見るのも良いと思ったのよ。丁度良いわ、付き合いなさい」
「分かりました」

滅多にないチャンスだ。
しかし、下心はない。
僕は純粋に、マニピュレーターの未熟な挙動で多彩な戦闘を行う彼女の技術を盗みたいと思っているだけだからだ。

「貴方は変な人ね、この決闘場でエース以外の試合を真面目に見る人は居ないわ」
「全員僕より上手いですから」
「そうなのね...それなら納得だわ」

僕に視線を向けていた琥珀色の瞳が、窓の外で始まった試合へと移る。
そこでは、バドックⅢとイカイドが戦っていた。
すごい戦いだ。
僕らの使っている型落ちのバドックⅡではなく、最新の正式軍採用のバドックⅢは、戦争よりも決闘に重きを置いたイカイドに勝るとも劣っていない。
纏電鋼剣装備のイカイドに対して、バドックⅡはビームレイピアで戦っていた。
ビーム装備はエネルギー消費が激しいが、抜き差しする時の充填でしか消費しないゆえに、長時間維持できるメリットがある。

「貴方は、本当にナイトフルアーマーが好きなのね」
「はい、勿論です」
「自慢じゃないけれど、私って容姿が良いのよ」
「?」

突然何を言ってるんだ?
僕の思考は混迷に陥った。

「美人だからか知らないけれど、私と話す人はまず顔を見るわ。どこかを見ているふりをしていても、視線だけは時折り私に向かう。髪、眼、口、胸なんかもそうかしら」
「何を仰りたいのか、僕には...」
「貴方は、外しか見ていないわよね、意図的にそうしているわけではない...初めてよ、KFAに魅力で負けたのは」

これは...怒っているのか?
それとも...とりあえず謝った方がいいか。

「申し訳ありませんでした」
「いえ? 別に怒っていないわ」

不思議な人だ。
ここで僕と話すほど暇なんだろうか。
しかしそれを言い出すのは、貴族相手には失礼に当たる。
下手な貴族ならともかく、カナタ伯爵家相手はまずい。
将来食って行くのに邪魔なことをわざわざする必要はない。

「私もそうだったもの。小さい頃は、戦っているKFAばかり見ていたわ」
「その...先程の動きはどこで?」
「難しいことじゃないわよ、自分の動きをプログラムとして入力しただけだもの」

ということは、ミユキ・カナタはKFA抜きの実戦でもかなり強いという事か。
僕は運動能力は全くと言っていいほど優秀ではないので(KFA操縦が優秀かどうかは置いておいて)、彼女のようになるには自らを鍛える他ないのだろう、やはり。

「まあ、真似出来るとは思えないわ。私のように自分の機体を持っていて、技術者を雇える身分でないとこういう事をやるのは難しいもの」
「そうですか...」

KFAは一機買うのも無理な話だ。
買ったとして、貴族でもエースでもない僕には維持費が払えない。
技術者は.........まぁ、ラウルに頼めばやってくれそうではある。

「でも...そうね、将来卒業したら私のところに来なさい。騎士として雇ってあげるわ」
「ほ、本当ですか!?」
「あら、少しは私を見てくれる気になったかしら」

その時。
バドックⅢが唐突に蹴りを入れ、イカイドを牽制。
そのまま斬撃を叩き込み、イカイドの頭部を刎ねた。

『勝者:コレン・アラマキ』
「おお...そんな戦い方が」

ミユキ・カナタだけじゃない。
武器に頼らない戦いをする騎士はもっと沢山いるのか。
そう思った僕は、視線をミユキ・カナタに戻す。

「あ、すみません...」
「いいわよ、やっぱり貴方は、面白い人だわね」

彼女はすっと立ち上がると、そのまま足早に去っていってしまった。
僕は生きた心地がしないまま、暫く時を過ごすのだった。
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