2度目の結婚は貴方と

朧霧

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異世界でした

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 「僕の恋人になってよ! もちろん君との結婚も考えてるからさ。僕は父さんからレストランを引き継ぐしリオナちゃんもオーナーの妻になれるんだ。ねえ、いいでしょう?」

「ごめんなさい。結婚したくないからお付き合いはできません…」

私は即答した。

「なんで? 好きな人がいるの?」

「いえ、いませんよ。結婚がしたくないからです」

はぁぁ…。
仕事関係で知り合ったハラル。18歳で1つだけ歳下だけど頭の中は随分と幼い感じ。取引先に出入りする度に話しかけられて告白されたけど困ったな。

普段から勘違いされないように男女関係なく気をつけてたんだけどなぁ。ハラルさんは項垂れているし沈黙が続き気まずいのでそろそろ挨拶をして立ち去ろうと思う。

「それではこれからもお取引よろしくお願いします。失礼します」

「…」

次に会うときは気まずいだろうけど仕事だから仕方ない。ミシェルさんに話しておこうかなぁ…なんて考えながらその場から早歩きで商会に戻ることにした。

この国はダイナダス王国。魔法もない、聖女も妖精も伝説や物語ではいるが実際にはいない。魔獣もいないが獣は森深く行けばいるのかな?

王国というだけあって身分制度は王族、貴族、平民に分かれているが平民の私にしてみれば王族なんてもちろん貴族にすら滅多にお目にかからない。

国は全体的に平和だと思う。他国と戦争をしたのは100年以上前になり周辺諸国とは友好的にしているようだ。国内は男女差別が残念ながらある。
貧富の差はあるが働いていれば食べていけないこともない。それだけ国が潤っているだろう。

私の名はリオナ、19歳。このダイナダス王国の王都にあるタニフアカ教会の孤児院の前におくるみに包まれた状態で放置され、シスター達が保護をしてくれたので孤児院には14歳までいた。

髪色も瞳の色も焦茶色、髪質はくせ毛でホワホワしている。
身長や体重も孤児院で育ったわりには標準だと思う。顔立ちも目は奥二重、鼻筋は低くもないし高くもない。口は唇が薄めで小さい方でとにかく平凡な顔立ちだと思う。

唯一、平凡でないのは前世の記憶が鮮明にあること。記憶が出てきたのは6歳ぐらいからで全部一度に思い出すのではなくゆっくりと。完全に思い出したのは9歳くらいだと思うが最終的に全て思い出したときには毎日泣いていた。

前世の記憶は日本人で48歳くらい。死んでしまったのかどうかもはっきりと覚えてないけど違う人間になったということはおそらく死んでしまったと思う。そして今の状態は異世界転生だと思った。

知らない国、知らない言語であるし生活環境も全く異なる。最初は外国に生まれ変わったかなと思ったが違うことを認識した。全く異なる世界でここは地球ではない。

孤児院では毎日平凡に過ごした。家事もほとんどできるし、前世で短大卒業後に正社員やパートで長年事務仕事をしてきたから勉強も苦にならなかった。

読み書きと計算ができるだけで女性でも働き口は見つけられ、成人する15歳に孤児院を出されるときにも無事に巣立って行くことができた。

今はマララ商会で事務兼、雑用の仕事をしている。会長のミシェルさんは女性で男女差別をせず個人の能力や適材適所で仕事を与えるし、私のような孤児も多く雇い差別なく接する。

ミシェルさんは金髪にブルーの瞳、白い陶器肌の顔立ちが整った美女。31歳の独身で離婚歴があるが子供はいない。離婚後は実家の商会で働き、親から引き継いで会長となった。
元の旦那さんは美男子で結婚後も浮気を繰り返し、浮気相手に子供ができたことで呆れ離婚したらしい。再婚する気はあるが気にいる相手が見つからないといつも笑っている。

「戻りました。遅くなってすみません」

「あら、おかえりリオナ。珍しく遅かったわねぇ」

「ちょっと困ったことがありまして。ミシェルさんに相談しようかと…」

「なになに? 今だったら時間があるから聞くわよ」

「個人的なことでお仕事中にすみません。今日サラーネレストランに紅茶の請求書をお渡ししてきました。
困ったことというのは、オーナーさんの息子であるハラルさんに告白されたのではっきりとお断りしてきました。
お取引はちゃんと対応しますが、もしも商会に因縁をつけてきたりしたら申し訳ないと思いお話しておきます」

「ぷっ、真面目ねぇ。でも話してくれてありがとう。そんな理由で因縁をつけてくるお店だとしたら取引しなくてもいいわよ。あの店のオーナーさんは人柄も問題ないし大丈夫だと思うわ。でもリオナくらいの歳だと告白されたらもっと喜んだり照れたりしないの?」

「恋愛や結婚に興味がないので分かりません」

「そう…興味ねぇ。ま、そのうちあるでしょう」

クスクス笑いながらミシェルさんは仕事に戻っていった。私の心中はと言うと男の人が嫌いでもなく恋愛は楽しみたいが結婚だけはしたくない。
同じくらいの歳の女の子に話すと信じられない…と変わった目で見られるのが面倒になり、恋愛も結婚もしたくないと言っておけば済むこと気が付いたからそうしている。
前世の記憶もなく普通な精神年齢であれば今頃結婚に対して希望も持てたんだろうけど。

 昼休みになり同僚のレーナとライモンドと昼食を取る。2人とは商会で働くようになってからすぐに仲良くなった。

「リオナ、ミシェルさんから聞いたけど今日サラーネのハラルさんに告白されたんだって?」

レーナの表情が何故か暗いがライモンドは興味津々である。

「おっ、リオナもついに婚約かぁ。遅いけど」

「あのね、ライモンドは親が決めた婚約でしょ? 自力で見つけたわけじゃあるまいし。私は結婚したくないからいいの! だいたい19歳くらいまでに婚約なんて早すぎるじゃない」

「20歳までに婚約者もいないと行き遅れになるよ。そうだよな、レーナ?」

「…」

レーナは何も答えず食事をしているがやはり暗い表情でぼんやりしている。

「? 人は人、比べてどうする。ライモンドとレーナは婚約者がいるのは知ってるけど私は自分で人生決めるわ。ところでレーナ、様子が変だけど食事が不味いの?」

「リオナ、ライモンド…。私、婚約破棄されるかも。婚約破棄どころか別れるのよ、多分。」

「「えっっ!」」

ライモンドと私はレーナの瞳から大量に流れる涙に固まった。

「よし、今日は仕事が終わったら3人で飲みに行こうぜ!」

ライモンドが提案し私も賛同した。

終業時間となり3人で行きつけの酒場へ行く。この酒場は昼間は食事、夜は食事とお酒を提供し安価で人気なお店だ。
とにかく食事が美味しいので満席な時も多々ある。入店すると賑わっていたが空席があったので私達は席に着いた。
 





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