29 / 35
出産
お腹が大きくなるにつれてレオナードさんの過保護度が増してきた。
階段の昇り降りも危ないと休日に非番の団員を引き連れて手すりを作り取付けたり、栄養のある物を食べさせたいと色々な食材を買い込んできたりと大変だ。
前世の妊娠中の辛い経験も思い出すことなくレオナードさんは愛情を注いでくれた。
いよいよ出産月に入り少し前から仕事の日数を減らしている。ある日、仕事中に腹痛を感じトイレに行くと下着に血が付いていた。おしるしだわ…。
ミシェルさんのところへ行き、事情を説明してから早退させてもらった。これから陣痛が始まるから一日くらいかかるかな。自宅に帰り陣痛の間隔を紙に書いておく。
間隔は長いからまだまだ大丈夫と考えていたらレオナードさんが凄い勢いで帰ってきた。
「ん? おかえりなさい。まだお仕事中ですか?」
「何を言っているんだ! 産気づいたとミシェルさんから連絡があって急いで帰ってきた」
「そうなんですか? 陣痛の間隔も長いのでまだまだ産まれませんよ? 痛みは徐々に強くなってきていますから順調です」
「は? そうなのか? すぐに産まれるのではないのか…」
「はい、大丈夫ですよ。それより産婆さんのところへ行ってこの紙を渡してもらえますか? 陣痛の間隔が書いてあるので出産に間に合うように来てくださいと伝えてください」
「任せろ、すぐ行ってくる。本当に一人で大丈夫か?」
「まだ耐えられる痛みですから大丈夫です」
レオナードさんは多分すぐにスポンと産まれてくると思っているんだろうけどね。前世のときにはずっと一人で長い陣痛も耐えたからレオナードさんの優しさに感謝していた。
しばらくすると玄関の扉が開き産婆さんが引きずられるように付いてきてレオナードさんが帰ってきた。
「リオナ、まだ大丈夫か?」
「えっっ! どうして産婆さんまで?」
「産まれるから連れてきた」
「はい? まだまだかかると言いましたよね?」
「もう心配で堪らないから一緒に連れてきたんだ」
「はぁぁ、産婆さん。どうもすみません…」
「いやぁ、この男は強引でこっちの話も聞かん。とにかく来てくれとうるさいから早めに来たわ。どうだ、痛みは」
「ありがとうございます。まだ間隔も短くないのですが痛みが更に増してきました」
「そうか、ならあと半日くらいかかるかもしれんなぁ」
「半日? なぜそんなにかかるんだ。リオナがこんなに痛がっているのに早く何とかしろ!」
「お前さん、だいたい赤子が出てくるのに時間がかからんわけないだろうが。ゆっくり出てくるんじゃよ。いいから黙って腰でも摩ってやらんか」
「はい…」
レオナードさんは少し落ち着いてきた。
しばらくすると本格的に我慢できないくらいの痛みが短い感覚で襲ってくる。力みたいけど「まだ我慢」と産婆さんの指示で我慢するが辛すぎる。
歯が折れそうなくらい口を噛み締めているとレオナードさんが手を握り絞めてくれた。
「もうすぐだな、力んでいいぞ、それっ! ずっと力んではいかん。息を吸い整えて…もう一度じゃ」
何回か力むのを繰り返しやっと出てきて痛みから解放されてくる。
「男の子だな」
その言葉に涙が出た。前世も息子だったから思いを重ねてしまった…。
「ありがとう…、リオナ。大切にする」
お湯で綺麗になった我が子を抱きながらレオナードさんは泣いてはいないが目に涙を溜めている。それにとっても嬉しそう! 我が子は茶色い産毛が薄く生えていて瞳の色もどうやら茶色で顔立ちはレオナードさんにそっくりだった。
後産も問題なく終わり初めての母乳をあげる。たしか初めて出る母乳には赤ちゃんに必要な物が含まれている記憶がある。ちゃんと母乳も出ているし上手く吸えているようで一安心した。
産後の疲れから何度も眠くなるが母乳以外はレオナードさんが赤ちゃんのお世話をしている。副団長さんが、翌朝レオナードさんに会いにきた。
「リオナちゃん、レオおめでとう! リオナちゃんベッドに居なくちゃ駄目だよ。僕はレオに用があっただけだから」
「ありがとうございます。今この子も起きていますし寝てばかりだと駄目なので少し座って過ごしていたんですよ」
「どれどれ、顔を見せてもらおうと」
ジルベルトさんが我が子を覗き込む。
「あはは! レオそっくりだなぁ。まるでレオが小さくなったみたいだ」
「はい、そっくりですよね。母乳を飲む力も強くて元気な子です」
「名前はもう決まったの?」
「あぁ、俺が決めた。ルーク」
「ルークかぁ。いい名前だな。ジルおじちゃんです、よろしく」
「ルークが笑っていますよ、副団長さん」
それからルークがぐずりだしどうやらおしめの交換のようだ。レオナードさんが早速交換しているのを副団長さんが見て笑っていた。
「見て、リオナちゃん。レオが大きすぎて猛獣が子供を襲っているみたい。でもレオがこんなに子煩悩だとは思わなかったな」
「ふふ、そうですよねぇ。母乳以外はレオナードさんができるだけ手伝ってくれるので助かります」
「そっかぁ、出産を頑張ったリオナちゃんに優しい副団長さんから贈り物。レオはしばらくお休みできることになったからゆっくり体を休めてよ」
「えっ、皆さんにご迷惑じゃないんですか? 産後の経過も良いので大丈夫ですよ?」
「元々レオは休暇をほとんど取っていなくてね。今のところは団長がいなくても僕が代わりにするから気にしないで」
「そうですか…、お気遣いありがとうございます!」
副団長さんはレオナードさんと話をして帰っていった。レオナードさんは本当に子煩悩で私より世話をしているから感謝の気持ちでいっぱいだった。
階段の昇り降りも危ないと休日に非番の団員を引き連れて手すりを作り取付けたり、栄養のある物を食べさせたいと色々な食材を買い込んできたりと大変だ。
前世の妊娠中の辛い経験も思い出すことなくレオナードさんは愛情を注いでくれた。
いよいよ出産月に入り少し前から仕事の日数を減らしている。ある日、仕事中に腹痛を感じトイレに行くと下着に血が付いていた。おしるしだわ…。
ミシェルさんのところへ行き、事情を説明してから早退させてもらった。これから陣痛が始まるから一日くらいかかるかな。自宅に帰り陣痛の間隔を紙に書いておく。
間隔は長いからまだまだ大丈夫と考えていたらレオナードさんが凄い勢いで帰ってきた。
「ん? おかえりなさい。まだお仕事中ですか?」
「何を言っているんだ! 産気づいたとミシェルさんから連絡があって急いで帰ってきた」
「そうなんですか? 陣痛の間隔も長いのでまだまだ産まれませんよ? 痛みは徐々に強くなってきていますから順調です」
「は? そうなのか? すぐに産まれるのではないのか…」
「はい、大丈夫ですよ。それより産婆さんのところへ行ってこの紙を渡してもらえますか? 陣痛の間隔が書いてあるので出産に間に合うように来てくださいと伝えてください」
「任せろ、すぐ行ってくる。本当に一人で大丈夫か?」
「まだ耐えられる痛みですから大丈夫です」
レオナードさんは多分すぐにスポンと産まれてくると思っているんだろうけどね。前世のときにはずっと一人で長い陣痛も耐えたからレオナードさんの優しさに感謝していた。
しばらくすると玄関の扉が開き産婆さんが引きずられるように付いてきてレオナードさんが帰ってきた。
「リオナ、まだ大丈夫か?」
「えっっ! どうして産婆さんまで?」
「産まれるから連れてきた」
「はい? まだまだかかると言いましたよね?」
「もう心配で堪らないから一緒に連れてきたんだ」
「はぁぁ、産婆さん。どうもすみません…」
「いやぁ、この男は強引でこっちの話も聞かん。とにかく来てくれとうるさいから早めに来たわ。どうだ、痛みは」
「ありがとうございます。まだ間隔も短くないのですが痛みが更に増してきました」
「そうか、ならあと半日くらいかかるかもしれんなぁ」
「半日? なぜそんなにかかるんだ。リオナがこんなに痛がっているのに早く何とかしろ!」
「お前さん、だいたい赤子が出てくるのに時間がかからんわけないだろうが。ゆっくり出てくるんじゃよ。いいから黙って腰でも摩ってやらんか」
「はい…」
レオナードさんは少し落ち着いてきた。
しばらくすると本格的に我慢できないくらいの痛みが短い感覚で襲ってくる。力みたいけど「まだ我慢」と産婆さんの指示で我慢するが辛すぎる。
歯が折れそうなくらい口を噛み締めているとレオナードさんが手を握り絞めてくれた。
「もうすぐだな、力んでいいぞ、それっ! ずっと力んではいかん。息を吸い整えて…もう一度じゃ」
何回か力むのを繰り返しやっと出てきて痛みから解放されてくる。
「男の子だな」
その言葉に涙が出た。前世も息子だったから思いを重ねてしまった…。
「ありがとう…、リオナ。大切にする」
お湯で綺麗になった我が子を抱きながらレオナードさんは泣いてはいないが目に涙を溜めている。それにとっても嬉しそう! 我が子は茶色い産毛が薄く生えていて瞳の色もどうやら茶色で顔立ちはレオナードさんにそっくりだった。
後産も問題なく終わり初めての母乳をあげる。たしか初めて出る母乳には赤ちゃんに必要な物が含まれている記憶がある。ちゃんと母乳も出ているし上手く吸えているようで一安心した。
産後の疲れから何度も眠くなるが母乳以外はレオナードさんが赤ちゃんのお世話をしている。副団長さんが、翌朝レオナードさんに会いにきた。
「リオナちゃん、レオおめでとう! リオナちゃんベッドに居なくちゃ駄目だよ。僕はレオに用があっただけだから」
「ありがとうございます。今この子も起きていますし寝てばかりだと駄目なので少し座って過ごしていたんですよ」
「どれどれ、顔を見せてもらおうと」
ジルベルトさんが我が子を覗き込む。
「あはは! レオそっくりだなぁ。まるでレオが小さくなったみたいだ」
「はい、そっくりですよね。母乳を飲む力も強くて元気な子です」
「名前はもう決まったの?」
「あぁ、俺が決めた。ルーク」
「ルークかぁ。いい名前だな。ジルおじちゃんです、よろしく」
「ルークが笑っていますよ、副団長さん」
それからルークがぐずりだしどうやらおしめの交換のようだ。レオナードさんが早速交換しているのを副団長さんが見て笑っていた。
「見て、リオナちゃん。レオが大きすぎて猛獣が子供を襲っているみたい。でもレオがこんなに子煩悩だとは思わなかったな」
「ふふ、そうですよねぇ。母乳以外はレオナードさんができるだけ手伝ってくれるので助かります」
「そっかぁ、出産を頑張ったリオナちゃんに優しい副団長さんから贈り物。レオはしばらくお休みできることになったからゆっくり体を休めてよ」
「えっ、皆さんにご迷惑じゃないんですか? 産後の経過も良いので大丈夫ですよ?」
「元々レオは休暇をほとんど取っていなくてね。今のところは団長がいなくても僕が代わりにするから気にしないで」
「そうですか…、お気遣いありがとうございます!」
副団長さんはレオナードさんと話をして帰っていった。レオナードさんは本当に子煩悩で私より世話をしているから感謝の気持ちでいっぱいだった。
あなたにおすすめの小説
【完結】愛とは呼ばせない
野村にれ
恋愛
リール王太子殿下とサリー・ペルガメント侯爵令嬢は六歳の時からの婚約者である。
二人はお互いを励まし、未来に向かっていた。
しかし、王太子殿下は最近ある子爵令嬢に御執心で、サリーを蔑ろにしていた。
サリーは幾度となく、王太子殿下に問うも、答えは得られなかった。
二人は身分差はあるものの、子爵令嬢は男装をしても似合いそうな顔立ちで、長身で美しく、
まるで対の様だと言われるようになっていた。二人を見つめるファンもいるほどである。
サリーは婚約解消なのだろうと受け止め、承知するつもりであった。
しかし、そうはならなかった。
【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。
彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。
さて、どうなりますでしょうか……
別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。
突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか?
自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。
私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。
それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。
7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
【完結】試される愛の果て
野村にれ
恋愛
一つの爵位の差も大きいとされるデュラート王国。
スノー・レリリス伯爵令嬢は、恵まれた家庭環境とは言えず、
8歳の頃から家族と離れて、祖父母と暮らしていた。
8年後、学園に入学しなくてはならず、生家に戻ることになった。
その後、思いがけない相手から婚約を申し込まれることになるが、
それは喜ぶべき縁談ではなかった。
断ることなったはずが、相手と関わることによって、
知りたくもない思惑が明らかになっていく。
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
【完結】あの子の代わり
野村にれ
恋愛
突然、しばらく会っていなかった従姉妹の婚約者と、
婚約するように言われたベルアンジュ・ソアリ。
ソアリ伯爵家は持病を持つ妹・キャリーヌを中心に回っている。
18歳のベルアンジュに婚約者がいないのも、
キャリーヌにいないからという理由だったが、
今回は両親も断ることが出来なかった。
この婚約でベルアンジュの人生は回り始める。
【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。
たろ
恋愛
セレンは15歳の時に16歳のスティーブ・ロセスと結婚した。いわゆる政略的な結婚で、幼馴染でいつも喧嘩ばかりの二人は歩み寄りもなく一年で離縁した。
その一年間をなかったものにするため、お互い全く別のところへ移り住んだ。
スティーブはアルク国に留学してしまった。
セレンは国の文官の試験を受けて働くことになった。配属は何故か騎士団の事務員。
本人は全く気がついていないが騎士団員の間では
『可愛い子兎』と呼ばれ、何かと理由をつけては事務室にみんな足を運ぶこととなる。
そんな騎士団に入隊してきたのが、スティーブ。
お互い結婚していたことはなかったことにしようと、話すこともなく目も合わせないで過ごした。
本当はお互い好き合っているのに素直になれない二人。
そして、少しずつお互いの誤解が解けてもう一度……
始めの数話は幼い頃の出会い。
そして結婚1年間の話。
再会と続きます。