2度目の結婚は貴方と

朧霧

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2人の結婚

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 レオナードさんと子供達に囲まれて暮らせることに幸せを感じていた。
ただ、お父さんは寿命で亡くなり会わず終いだったけれども葬儀には家族で出席して花を添えてきた。

ルークは宣言通り騎士団に合格したので15歳で家を出て行った。
前世であれば中学生を終わったばかりの歳で子供だと思うけれども、この国の成人年齢は早いから仕方ない。ジルベルトさんもいるし騎士団棟の宿舎に住むことになっているから少し安心した。

シークはどうやらオタク気質のようだ。私の日記を見ながら机に向かうことが多い。私の日記は前世の知識を書き留めている。知識といっても一般人だったから専門的ではなく何かのきっかけになるくらいだ。

それでもレオナードさんや子供達に何かを残せるかと思い、思い出す度に言葉や絵を長年書き留めていった。
シークは未知の知識にはまってしまったらしく何冊もある日記を読んでいるから質問も多い。

「ねぇねぇ、お母さん。この自転車って何? 馬車みたいな感じだけど座るところが無いよ? 乗り物って書いてあるけど何に使うの?」

「座るところはあるわよ? 絵に書いてあるこの部分がサドルというんだけどね、ここに座ってペダルを足で漕ぐでしょ。前も後ろも車輪の中央に歯車があってチェーンで後ろの歯車を足で漕ぐ所の歯車に繋いだら回るの。前の車輪は進めば回るわ。遠くまで行くのは少し大変で遅いけど、馬を使わないからとっても便利よ。そんな感じだったけど作り方は知らないし木材で作るとするとどうだか…。それにタイヤの材料もないわね」

「へぇ、よく分からないけど馬を使わないのは便利そうだね。一人で乗るのは大変?」

「練習すれば簡単に乗れるようになるし慣れるまでは後輪の両脇に小さい補助の車輪を付けるのよ」

「僕、自転車作りたい! 絶対作れるように研究する。完成したら領地の色々なところに行ってみたい」

「そう、たくさん絵に描いて残しておくから諦めなければ叶うかもね。お母さんも久しぶりに乗りたいから楽しみにしているわ」

生きている間に完成するかは分からないけどキラキラした瞳で語るシークはとても可愛かった。シークもあと少ししたら王都の学園に通うようなり寮生活だ。
貴族もいるが平民がいるような学園をレオナードさんは選んでいる。

レオナードさんは騎士団で稼いでいたから学園に通うことも即答で了承していた。私はどのくらい稼いでいたのかは知らないが教育費はレオナードさんが全て出すことになっている。

ルナは家事のお手伝いが大好きで女の子らしく育っていた。最近知り合った近所の男の子に揶揄われたらしいけど泣いてはいなかったから案外芯は強いのかもしれない。

そしてシークも王都に行き2年後にはルナもマララ商会で働くために王都に旅立った。

久しぶりのレオナードさんと私の二人きりの生活だ。子供達がいないのは寂しかったけれども二人での生活ものんびりしていて満喫した。

たまに子供達も帰ってくるしレーナ夫妻やライモンド夫妻、ミシェルさんやテオドールさん夫妻も訪れてくる。

穏やかな日々を送り暮らしているとレオナードさんが55歳になる頃、48歳になった私は突然倒れた。
何かの病にかかっているらしいが薬などを使わずに延命治療を拒み寿命を受け入れることにした。

レオナードさんはとても悲しい顔をして聞いていたけれど翌日からは普段通りに接してくれた。相変わらず優しい人だ。

倒れてから最初の頃は普通に体も動かせたが、2ヶ月程経つとベッドでの生活が長くなってくる。急激に病が進行しているようで痛みに耐えられないときも多くなり泣きそうだったけど、常にレオナードさんが傍にいて抱きしめてくれた。

まだ体が動かせるうちにと思い子供達やミシェルさん、リイベル会長、レーナやライモンドに手紙を書いた。私が亡くなった後にでもレオナードさんに渡してもらおう。

そして、とうとう起き上がることも苦労するようになり私は意識があるうちにどうしても伝えたいことをレオナードさんに告白した。

「レオ、今更だけど私と結婚してくれる? レオに出会えてからずっと幸せだった。もしレオがいなかったら死ぬまで結婚する気になれなかった。本当にありがとう」

レオナードさんは聞きながら初めて私の前で泣いていた。

「やっと返事をもらえて嬉しいよ。もちろん今すぐに結婚しよう! リオナに出会えて幸せだよ。愛してるよ、リオナ」

「私も愛してる、レオ」

待っててくれと言って部屋を出たレオナードさんはすぐに戻ってきた。
手には紙と箱のような物を持っていたのが見えて何だろう? と思った。

「出会った頃からいつでも結婚できるように用意をしていたんだ。さぁ、手を出して」

紙は結婚誓約書で箱の中身は結婚指輪だった。病の影響で手が震えたが気持ちを込めて誓約書にサインをした。
私の左手を取り結婚指輪を薬指にはめたが痩せてしまいブカブカだった。
思わず笑ってしまったらレオナードさんはポケットからチェーンを取り出し指輪を通してネックレスにすると私の首に付けてくれた。

「ほら、これなら大丈夫だろ? 俺にも指輪をはめてくれ」

レオナードさんの指輪はピッタリだった。結婚指輪を見ると嬉しくてレオナードさんの首に抱きついて誓いの口付けを自分からした。

結婚する気になるまでに出会ってからかなり時間が経ってしまったけれどもレオナードさんは喜んで受け入れてくれた。

前世で寿命を迎えたのも48歳くらい。何か関係があるかもしれないが病にかかっても短い人生でも私はとても幸せだった…。

誓約書も提出し晴れて夫婦として過ごしていたある日、いよいよ意識がなくなりそうになるのを察知したレオナードさんはしがみつくように私を抱きしめていた。

「リオナ、俺を置いていかないでくれ。頼むからまだまだ一緒に生きてくれ。いなくなるなんて嫌だ…」

「レオ…向こうで待ってるから大丈夫よ…。それに私は寄り道するところがあるの…だからゆっくり来て…慌てて来てもいないわよ、私」

「寄り道してなかなか来なくても俺はずっと待ってるから。リオナ、愛してる…愛してるよ」

「ちゃんと生きてよ………早く来たらレオには会わない……約束。愛してるわ、レオ」

この言葉を最後に今世での意識を手放した……。
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