2度目の結婚は貴方と

朧霧

文字の大きさ
35 / 35

父さんと母さん(シーク)

しおりを挟む
 俺はシーク、半年ほど前に母さんが亡くなり父さんと兄弟だけになった。

ルーク兄さんは騎士団で働いている。結婚して今では二児の父親になった。子供は男の子と女の子の年子。

妹のルナはマララ商会で知り合った男性と結婚し一児の母だ。結婚してからあっという間に子供ができた。

俺はどうも女性が苦手な方で母さんみたいに頭の良い女性がいい。なかなか見つけられなくて結婚は考えていない。

父さんも母さんも無理に結婚しなくてもいいけど一人で生きていくなら自分で生きていけるようにしなさいと言っていた。だからなるべく迷惑をかけないように無駄遣いはせずにお金を貯めて自炊をして健康にも気を使っている。

俺はもうすぐサハリー商会のリイベル会長に誘われてイルベナ国へ移住する。

母さんから譲り受けた日記の知恵を参考にして研究開発をし商会で売り出すのだ。主にはサハリー商会で仕事をするが、今後はマララ商会とサハリー商会の掛け持ちになると思う。

開発は難しい方が多い。上手く行くときもあれば失敗するときもあるけれど、母さんはいつも「また挑戦すれば良いのよ。考えて失敗したなら改善できるでしょ? 人の真似じゃないんだから」と言って励ましてくれたのを思い出す。

母さんは不思議な人だった。日記を見る限り孤児とは思えない。昔、不思議に思って聞いてみたが他国の商人の話や本を参考にしていると言っていたが今思えば誤魔化していたのが分かる。

日記の内容に関しては決して人に話したり見せたりしてはいけないし悪用する人がいるから自分の考えとしてなら話して良いと言われた。

俺はミシェル会長やリイベル会長に色々聞かれることもあるが、日記の存在を兄弟以外には隠し続けている。

つい最近まで父さんは母さんが亡くなったときからもぬけの殻になった。俺もかなり当時は落ち込んだが、父さんは母さんをすごく愛していたからなかなか元気を取り戻せなかった。

子供達の前では決して泣かなかったし葬儀でも泣かなかった父さんは別人のような感じがした。

母さんが亡くなったときに驚いたのは父さんと母さんがいつの間にか結婚をしていたことだった。母さんが亡くなる直前に求婚の返事をしたらしく母さんの首と父さんの指に結婚指輪がしてあった。

普通の生活がなかなかできない父さんはテオ叔父さんに叱られたらしい。それでどうにか表面上は父さんも普通になったけれども悲しみが深すぎて本当は立ち直れていないと思った。

俺がイルベナ国へ行ってからしばらくして父さんも病にかかった。テオ叔父さんから延命治療を父さんが拒否していると聞き兄弟で相談した。

父さんが寿命をそのまま受け入れるなら好きにしたらいいと意見が一致してテオ叔父さんに伝えた。

俺は亡くなる直前には間に合わなかったが最期を見届けた家族によると、父さんは病にかかっている悲壮感もなくテオ叔父さんと共に暮らし逝ってしまったと聞いた。

おそらく母さんに早く会いたくてたまらないんだろうねと兄弟達と話しをした。

父さんと母さんは仲良く眠っている。僕達兄弟はこの夫婦の子供に産まれて幸せだと思う……。
しおりを挟む
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

ナンシー
2022.02.22 ナンシー

殺伐とした話は読みたくなくて、こちらに辿り着きました。
真っ直ぐな生き方の二人が出会う…スッキリしました。ありがとうございました!

2022.02.22 朧霧

こちらこそ感想ありがとうございました(^^)

解除
ネフェル
2021.07.04 ネフェル

初めまして。
読み終えた後の余韻が心地よい作品でした。素敵な物語を有難うございます。次回作、お待ちしております。

2021.07.04 朧霧

ネフェル様

初めまして。そうおっしゃっていただき嬉しいです! 最後までお読みいただきありがとうございました。こちらこそ次回の作品でお会いできることを楽しみにしています。

解除
orange peco
2021.07.02 orange peco

読み終わるのが惜しくなるお話でした。
余談ですがリオナが前世で産んだ子供の話なども読んでみたかったです。 

2021.07.02 朧霧

orange peco様

感想ありがとうございます! 細部までご興味を持っていただき嬉しく思います(^^) 個人的には前世の子供はリオナの精神を受け継いでいて欲しいですね。いつか短編や番外編などで投稿することができたときにはお読みいただければ幸いです(o^^o)

解除

あなたにおすすめの小説

年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました

チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。 そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。 そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。 彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。 ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。 それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。

リアンの白い雪

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。 いつもの日常の、些細な出来事。 仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。 だがその後、二人の関係は一変してしまう。 辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。 記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。 二人の未来は? ※全15話 ※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。 (全話投稿完了後、開ける予定です) ※1/29 完結しました。 感想欄を開けさせていただきます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

私の願いは貴方の幸せです

mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」 滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。 私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

《完結》恋に落ちる瞬間〜私が婚約を解消するまで〜

本見りん
恋愛
───恋に落ちる瞬間を、見てしまった。 アルペンハイム公爵令嬢ツツェーリアは、目の前で婚約者であるアルベルト王子が恋に落ちた事に気付いてしまった。 ツツェーリアがそれに気付いたのは、彼女自身も人に言えない恋をしていたから─── 「殿下。婚約解消いたしましょう!」 アルベルトにそう告げ動き出した2人だったが、王太子とその婚約者という立場ではそれは容易な事ではなくて……。 『平凡令嬢の婚活事情』の、公爵令嬢ツツェーリアのお話です。 途中、前作ヒロインのミランダも登場します。 『完結保証』『ハッピーエンド』です!

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。