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魔物の理性は信じないほうがいい

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 帝国の城にあるツバキの部屋には、当たり前だけど主人が在室中は侍女もいる。三人いる侍女のうち、一番多くツバキと一緒にいるのはサクラだ。ほんと邪魔。

 サクラは部屋の隅でチクチクと裁縫をしている。今度ツバキがお忍びで街へ行くときのスカートを作っているらしい。

 ツバキはソファに座ってのんびり読書していた。のんびりと言っても、皇女のしぐさが身についているツバキの姿勢は良い。本に走らせる視線が動くたび、ツバキを見つめる俺に気づかないかなーなんて思ってるけど、まったくその気配はない。

 俺はというと、ソファの端に置いてあったクッションを背もたれにして寝そべり、ツバキの太腿に足を置いてくつろいでいた。魔物の俺は行儀なんて気にしないから、本当にだらけている。


 おやつの時間までまだ二時間もある。だけど小腹が空いたので、ツバキの魔力を吸うことにした。

 魔力には味があって、高い魔力ほどおいしい。皇族の魔力は平均して高いけどツバキはその中でも群を抜いている。千年近く生きているけど彼女以上の味は知らない。
 考えたら我慢できなくなってきた。

<ツバキ。魔力ちょうだい>

 契約すると人と魔物は思念(頭の中)で会話できる。
 俺は足を動かしてツバキの太腿を揺すりながら語りかけた。
 それを受け取ったツバキはちらりと本から視線を外して俺を見る。

<朝あげたばかりでしょ>
<でも昼飯量が少なかったもん。お腹空いた>
<あとちょっとでおやつ出るから我慢して>
<やだ>

 俺はスカートの裾を足でめくって中へ滑らせた。

<あっ。ちょっと!>
<早くちょうだい>

 必死で俺の足を押しのけようとする手をもう一方の足で防いで、スカートを捲り上げる。
 白い綺麗な太腿が露わになった。
 たまらなくなった俺は起き上がって肩を密着させて座り、手で太腿をまさぐる。

<ちょっとカオウ! やめてったら>
<じゃあ魔力ちょうだい>

 太腿の間に手を押し込んで、彼女の下着に指を這わせた。

「あっ」
<静かに。さくらに聞かれてもいいの?>

 サクラは下を向いて裁縫に夢中になっている。
 人差し指で下着の上からツバキの敏感な部分を擦った。顔を紅潮させるツバキはすごくかわいい。

<やめて。魔力あげるから!>
<じゃあ俺の部屋行こ>
<ここで印に手をかざせばいいでしょ>

 契約の証につけた印から魔力を吸うには、体の一部をかざせば事足りる。だから基本的に印は手首に付ける。人に変身できない魔物でも、手首にあれば吸いやすい。

 でもそれじゃあ気持ちが足りない。

<俺は口から欲しいの。別にサクラに見られてもいいならここでもいいけど>
<嫌よ>
<じゃあさ、お願い。だめ?>

 俺はしょげた顔をして少し上目遣いでツバキの瞳を見つめた。こうすると、大抵ツバキは折れてくれる。俺の金色の瞳が大好きなんだって、俺は知ってる。

 ツバキは下唇を噛んで何かに耐えるように顔をしかめた。二人きりになると魔力を吸うだけで終わらないかもって考えているんだろう。それは正解なんだけど。

<……少しだけだよ?>
<うん>

 俺はにいっと笑って、サクラに見つからないうちに俺の部屋……ここから隣の部屋へ瞬間移動した。
 
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