私って何者なの

根鳥 泰造

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第四章 この世界の秘密

四天王にも、卑怯者はいました

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 第四階層は、薄暗くじめじめした森だった。腐葉土の様な枯れ葉が一面を覆っていて、柔らかくて足場が悪く、太い木がそこら中に生えていて、攻撃もしにくい。
 しかも、魔物の気配が、どこにもない。天井の上にS級らしき魔物の気配がするが、おそらくそれはベルゼブブのもの。この階層のボスらしき魔物の反応がない。
 もう一度、注意深く調べてみたが、辺り一面の地面から、弱い魔物反応があるものの、B級以上の反応はどこにも存在しない。
 どうやら、この魔物も気配を完全に消せるらしい。沢山の雑魚を使役して、雑魚魔物で襲い掛かり、こちらが混乱している隙に、攻撃してくるつもりらしい。
「きゃあ」
 ミラが落とし穴に落ちてしまった。トラップまで仕掛けてある。
 ミラを穴から助けようとすると、巨大な芋虫の様なものが、ぞろぞろと穴の中に出てきて、その一匹がミラの足に噛みついた。
「この野郎」
 メグがハンマーでその芋虫を一撃で潰したが、足を痛めた様子で、足を引きずっている。
「芋虫自体はたいしたことないが、あの顎の力は脅威だ。踵の骨を砕かれた」
 直ぐに治療魔法を掛けていると、腐葉土からも芋虫が出てきて、襲ってきた。
 今度は交わして、リットが岩柱壁で吹き飛ばし、ケントのボーガンで仕留めたけど、隙を見せると、芋虫が襲ってくる。
 迂闊に動けばトラップに掛かるし、じっとしていれば、芋虫が襲ってくる。
 ボスがどこかに隠れているのも不気味だ。
「リット、爆裂魔法で枯れ葉を一掃して」
「どこを吹き飛ばしますか?」
「ボスは一番奥にいるのが定石でしょう」
 リットが爆裂魔法を発動すると、腐葉土や、木が綺麗に吹き飛んで、硬い床が現れた。
 そして、同時に巨大な魔物の気配が、その右横からして、そこに、枯れ葉模様で周囲に溶け込んで隠れていたクワガタ虫の様な魔物が居た。
「クワガタ虫の魔物なのに、擬態するのかよ」
「本当に、S級なのかな」
 ケントやミラの言い分はよくわかる。擬態は弱い生物が、強い敵から身を守るためのもの。それに昆虫魔物は、C級以下がほとんどで、強い魔物はいないというのが、常識だからだ。
 でも、この気配は、まぎれもなくA級以上の強い魔物で、この階層のボスということは、四天王ということになる。
「S級魔物かはわからないけど、強いのは間違いないから。注意して」
 ケントとミラが敵に近づこうとするのを制して、今度はメグが爆裂魔法を放つ。
 だが、虫は、羽を広げ、こっちに向かって飛んでくる。
 急いで、火球を放って、爆発させたが、十分な距離を稼げなかったので、爆風でこっちも吹き飛ぶ羽目になった。
「やったか?」
 爆炎が治まると、虫がひっくり返っていて、起き上がろうと、必死にもがいている。足も何本か無くなっている。
「トラップ注意」
 走り寄ろうとするミラに注意した。
 虫の近くは、ところどころ床が見える程で、トラップもなくなっているが、私達周辺は、厚い腐葉土の枯れ葉に覆われたままだ。
 トラップに注意して、慎重に進んでいたら、ケントが大声を上げた。
「見ろ、あいつ、再生してる」
 なんと、欠損していた足が生えてきて、起き上がってしまった。迷彩模様なので、分かりずらいが、身体中、皹だらけで、右上翅が欠けて、胴体が見えていた。
 でも、みるみる皹が塞がっていき、右上翅も徐々に再生していく。
 急がないと、完全に元に戻ってしまう。
 そう思っていると、目の前に竜巻が現れた。
「リット、ナイス」
 メグも、竜巻トルネードを繰り出し、虫への道を造っていると、手足が完全に復活した虫が、こっちに向かって突進してきた。
 ケントがすぐさま拳銃を放つが、その弾丸が跳弾となって、そこら中に飛び散り、こっちが危ない程。まるで戦車の装甲のように硬い鎧だ。
 ケントは銃では無理と、ボーガンで、爆裂弾付き鉄矢を放った。
 それが眉間を貫通して突き刺さった。
 それでも虫は、突進を続け、その大顎で、ケントを挟み込んだ。
「ミラ、眉間の矢を打ち込んでくれ」
 ミラは、ハンマーで鉄矢を根元まで頭に打ち込んだが、それでもクワガタは生きていて、ケントを離さない。それどころか、更に強く大顎で、ケントを締め付けてきた。
「ぐわっ」
 肋骨が折れ、肺に刺さったのか、顔がみるみる蒼ざめていく。
 一刻も早く助けないと、ケントが死んでしまう。
 なのに、芋虫が、ウジャウジャと湧き出して来た。
 ここは腐葉土が薄くなっているので、事前に姿を確認でき、突然噛まれる心配はなくなったが、それでも足元を注意せざるをえず、クワガタを攻撃できなくなってしまった。
 全身を固い鎧で覆われているので、魔法は効かないし、どうしようと、芋虫退治しながら悩んでいると、クワガタの右上翅の迷彩柄が半透明に透けていることに気が付いた。
 すでに、再生したとはいえ、右上翅の下側半分は、まだ柔らかそうだ。
「ミラ、右上翅を砕いて」
 ミラが、そこ目掛けて、必殺ハンマーを繰り出し、見事、右上翅を破壊することに成功した。
 芋虫が、足元に噛みつき攻撃してくるので、そこに攻撃を集中させる事も難しかったが、それでも、クワガタもかなりつらい様子で、ケントを放し、再び枯れ葉が沢山ある場所に潜り込むようにして、その気配を消した。
 メグがすぐさまケントに駆け寄り、治癒魔法を掛け始める。
「そこにいる」
 青白い顔のケントは、狩人の目で、虫の移動先を目で追い続けていて、虫の場所を教えてくれた。
「動いちゃだめ。暫くは安静にしていなさい」
 ボーガンを撃とうとしたケントを押さえつけて、宥めた。
「勇者の加護のお蔭で、痛みを感じないかもしれないけど、絶対安静の重傷なのよ」
「わかった。戦闘は任せ、俺は奴を目で追うことだけに専念するよ」
 大人しくしてくれる約束をしてくれ、三人で攻撃に向かうため、リットが、竜巻で虫までの通路を確保しようとしたのだが、それが不味かった。
 葉っぱが舞い上がった所為で、ケントにも虫の場所が分からなくなってしまったのだ。
「御免、僕の所為で見失うことになって」
「卑怯な野郎だな。これで振り出しに戻ってしまったじゃないか」
 振り出しじゃない。恐らくクワガタは、再生して元通りになったはずだが、ケントは戦闘不能だし、メグも左足の踵を粉砕骨折している。
 あの自動再生能力をなんとかしないと、こっちが全滅しかねない。
 
 でも、敵から攻撃してこないのなら、芋虫退治しながら、時間が経つのを待ち、もう一度、爆裂魔法を掛ける手はある。
 メグは皆にその作戦を指示して、足場のしっかりしたこの周辺で、ひたすら芋虫退治し続けた。
 すると、敵もこちらの作戦に気づいたらしい。急に気配を現わし、再び飛行して、こっちに襲い掛かってきた。
 今度はリットを狙ってきたが、岩柱壁で、防ぎ、逆に吹き飛ばす。そして、ミラが痛い足で、高くジャンプして、ひっくり返ったクワガタの腹に、ハンマーをぶち込んだ。
 メグもスロウラを出して、一気に仕留めに掛かったが、虫も起き上がり、また一目散に、枯れ葉地帯に逃げ込んでいった。
「逃がさないよ」
 ミラが、片足でジャンプして襲い掛かるが、虫は迷彩で枯れ葉にまぎれ、また姿を消してしまった。
「そこだ」ケントが指さしてくれた。
 竜巻はだめでも、近づく方法は他にもある。
 トラップや腐葉土毎、凍結させて、足場をかため、一気に近づいた。
 クワガタも、気配を出して、反撃してきたが、こうなればこっちのもの。
 湧き出してくる芋虫退治は、ケントとリットに任せ、ミラと二人で、クワガタ退治に専念した。
 ケントは、二丁拳銃で、近接する芋虫を射殺し、リットは竜巻や火炎放射で確保して、周囲に現われる芋虫をつらら攻撃や放射型鎌鼬、石礫、高圧水刃等で、近寄らないようにしてくれた。
 お蔭で、足元を気にせず、クワガタ退治に専念できる。
 固い鎧は厄介たが、岩柱壁でひっくり返せば、ダメージは通る。立ち上がれないように、足を潰したり、関節部で切り落としたりして、腹を集中的に攻撃し、足が再生し始めると、また足を攻撃するをくりかえした。
 それでも、タフでなかなか倒れなかったが、二十分程、一方的に攻撃しつづけていると、芋虫も現れなくなり、クワガタの内臓もぐちゃぐちゃになり、絶命させることに成功した。

 クワガタの魔物は、A級だったらしく、塵になって消え、直径三十センチ程の黒い魔晶玉を残して、姿を消した。双子のセイレーンは、普通の緑の魔晶玉だったが、こんな巨大な黒い魔晶玉は初めてだ。あの黒龍フェルニゲシュのより一回り大きい。玉の大きさが、強さに比例しているのかは分からないが、おそらく、A級最強の魔物だったのだろう。

「ケントは、ここで休んでな。あの魔人はボク達だけでやっつけて見せるから」
「いや、俺も行く。お前に鍛えてもらった寝技は、もう出せないが、メグのライトニングがあれば、ボーガンを当てることもできるからな」
「そんな蒼い顔をして、流石に無理よ。安静にしてないと、死んじゃうかもしれないでしょ」
「否、行かせてくれ。ベルゼブブ退治は、俺の夢の一つなんだ」
『セージ、私の左手を自由に使っていいから、戦闘中に治癒魔法を発動できる?』
『姫様、申し訳ありません。もうお役に立てそうにありません。ゴホゴホ。長い間、楽しい日々を送れたこと、感謝します。お別れの時がきたようです』
 セージがそんなことを言ってきて、その後、何も応答しなくなった。

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