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もちの誕生日
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今年の正月はどうしても餅を食べたかった。
何故かと言うと、わしは今年の誕生日を迎えるとちょうど百歳になる。
そんな節目の年にどうしても餅が食べたかったのだ。
テレビから軽快な音楽とともに新年の挨拶が流れる。
「あけましておめでとうございます。とうとう年が明けましたね。」
アナウンサーが挨拶とともに三日間の天気を言っていた。
わしはそれを聴きながら誰にも内緒で、密かに買っていた一つの餅を棚の奥から出す。
「さて……どう料理して食べようか?みそ汁に入れて雑煮にするか、焼いて砂糖醤油につけて食べるか……」
わしが悩んでいる時だった、家の呼び鈴がなる。
「ピンポーン」
(おかしいなぁ今日は娘夫婦はあっちの実家に行っているはずだ……こんな正月早々一体誰が来たんじゃ。)
わしは仕方なく玄関を開けに行くと、そこにはいつもお世話になっている人が立っていた。
「おめでとうございます、幸兎さん今日の昼ご飯作りに来ましたよ。」
そう言うとその人はすぐに家に入り、台所へと向かっていった。
(あっ……さっきの餅!出しっぱなしじゃ!!何とか見つかる前に……)
そう思うも既に遅かった、その人は餅を片手にもち、こちらへと向かってきたのだ。
「幸兎さんこれ食べるつもりでしたか?いくら元気でも餅はダメですよ。」
そう言うとその人はカバンへ餅を入れてしまった。
わしは餅がただ食べたいだけなのに。
そう思い一か八かその人に頼んで見た。
「どうしてもその餅を食べて百歳を祝いたいのじゃ、頼む見逃してくれんか?」
わしの訴えは虚しく餅を食べる事は却下されてしまった。
その日の昼はその人が作ってくれたみそ汁とおせちを食べた。
「幸兎さんまた夜に来ますね。」
そう言いその人は帰って行った。
わしはどうしても餅が諦められずに、その人が帰って行ったのを確認し出かける事にした。
家の近くの神社では初詣に行く人で賑わっていた。
その中で聞き覚えのある声を聞いたのだ。
「はい、よいしょーよいしょー!」
「これは餅をつく時の掛け声ではないか!!」
そう思い急いで声がする方へと向かった。
そこには杵と臼を使い餅をついている姿があった。
「お餅ただいま配ってますよーこちらが最後尾です。」
(あそこに並べば餅が貰えるんじゃな。)
そう思いすぐに列に並ぶ。
「おじいちゃん一人?お餅おじいちゃんが食べるの?」
わしは何やら嫌な予感がし、ついつい嘘をついた。
「わしじゃなくてな、孫がつきたて食べたいと言うてな。」
「そうですか、なら良かった気をつけて食べて貰ってね。」
そんな会話をし、わしは自分の番が来るのを待っていた。
するとわしの前で急に餅を配るのをやめてしまったのだ。
よく見ると、台の上にはもう餅が残っていなかった。
「ごめんなさいおじいちゃん、ちょうど無くなったみたい。まだ三日までやってるから今度はお孫さんと来てね。」
そう言われとうとう今日は餅を食べる事が出来なかった。
わしは家に帰ると急に疲れが出たのか、すぐに寝てしまった。
夕方にいつもの人に起こされるまでぐっすり寝ていたようだ。
わしの頭はだいぶボートしていたのか、その人が話している事が頭に入っていなかった。
翌朝目が覚めて気づいた事は、昨日は夕食を食べずにそのまま寝てしまった事と、二日は娘夫婦が遊びに来る事だった。
わしは急いで昨日の夕食を食べ、服を着替え、身なりを整える。
昼前になると、呼び鈴がなる。
「ピンポーン」
音と共に元気よく孫二人が入ってきた。
「おじいちゃんあけましておめでとう。」
二日の日は一日中娘夫婦と過ごし、それはそれで楽しかったのじゃが……
それでもわしは餅が食べたかった。
その日の夜、娘夫婦が帰った後布団の中でふと思い出す。
「そう言えばあの神社の餅つきは三日までやってるって言ってたなぁ……明日行ってみるか!」
そう思いわしはゆっくり寝た。
次の日、わしは少し若めの服装をし、帽子を被り、マスクとマフラーをつけ、あの神社へと向かった。
「お餅ただいま配ってますよーこちらが最後尾です。」
(おっ、今日もちゃんとやっとるな。)
わしはそう思うと飛び跳ねるようにその列に並んだ。
若めの服装をしていたせいか、今日は何も話しかけられなかった。
とうとう自分の番が来て、餅を受け取る。
「しっかり噛んで食べてくださいね。」
笑顔で餅を渡されるとわしはすぐにその場を去っていた。
家に帰りゆっくりと餅を食べようと思った時だった。
「ピンポーン」
呼び鈴がなる。
わしはもう誰にも邪魔されずに餅が食べたいと思い、出ない事にした。
何回か呼び鈴がなったあと、
ドンドンドン!
「幸兎さんいますか?訪問サービスの田中です、いたら返事してください!!」
「いつもお世話してくれる人が今日は来る日だったか……」
しまったと思いつつも、わしは餅を食べてからドアを開ければいいかと思った。
その瞬間だった。
「ガチャ」
鍵が開く音と共にドタドタドタと数人の足音が聞こえた。
結局わしはその食べようとした餅が見つかり、また怒られる事になった。
とうとう三日の日も餅が食べられずに終わっていくと思ったその日の夜、やっぱりどうしても餅が食べたくなり、夜こっそりとコンビニに行く事にした。
夜の寒い中歩きやっとコンビニに着くと、すぐにわしは餅を探した。
売っていたのはひと袋にたくさん餅が入っているタイプか、インスタントの餅が入ったおしるこの二択だった。
「もし餅をひと袋買って後で見つかったらまた怒られるなぁ……」
わしはそう思い、インスタントの餅が入ったおしるこにした。
店内でお湯を入れ食べようと思った……が店内のイートインコーナーは既に閉まっていた。
わしは仕方なく近くの公園のベンチに座り食べることにした。
公園のベンチに座る頃には少し雪が降って来ていた。
「少し寒いが、家だとどうも邪魔がいつも入るしなぁ……」
そう思いながらインスタントの蓋を開けた。
わしは一気に入っている餅を口に入れ頬張ると、とても幸せな気持ちになり、一気に飲み込んでしまった。
それがわしの最後の誕生日の日になった。
何故かと言うと、わしは今年の誕生日を迎えるとちょうど百歳になる。
そんな節目の年にどうしても餅が食べたかったのだ。
テレビから軽快な音楽とともに新年の挨拶が流れる。
「あけましておめでとうございます。とうとう年が明けましたね。」
アナウンサーが挨拶とともに三日間の天気を言っていた。
わしはそれを聴きながら誰にも内緒で、密かに買っていた一つの餅を棚の奥から出す。
「さて……どう料理して食べようか?みそ汁に入れて雑煮にするか、焼いて砂糖醤油につけて食べるか……」
わしが悩んでいる時だった、家の呼び鈴がなる。
「ピンポーン」
(おかしいなぁ今日は娘夫婦はあっちの実家に行っているはずだ……こんな正月早々一体誰が来たんじゃ。)
わしは仕方なく玄関を開けに行くと、そこにはいつもお世話になっている人が立っていた。
「おめでとうございます、幸兎さん今日の昼ご飯作りに来ましたよ。」
そう言うとその人はすぐに家に入り、台所へと向かっていった。
(あっ……さっきの餅!出しっぱなしじゃ!!何とか見つかる前に……)
そう思うも既に遅かった、その人は餅を片手にもち、こちらへと向かってきたのだ。
「幸兎さんこれ食べるつもりでしたか?いくら元気でも餅はダメですよ。」
そう言うとその人はカバンへ餅を入れてしまった。
わしは餅がただ食べたいだけなのに。
そう思い一か八かその人に頼んで見た。
「どうしてもその餅を食べて百歳を祝いたいのじゃ、頼む見逃してくれんか?」
わしの訴えは虚しく餅を食べる事は却下されてしまった。
その日の昼はその人が作ってくれたみそ汁とおせちを食べた。
「幸兎さんまた夜に来ますね。」
そう言いその人は帰って行った。
わしはどうしても餅が諦められずに、その人が帰って行ったのを確認し出かける事にした。
家の近くの神社では初詣に行く人で賑わっていた。
その中で聞き覚えのある声を聞いたのだ。
「はい、よいしょーよいしょー!」
「これは餅をつく時の掛け声ではないか!!」
そう思い急いで声がする方へと向かった。
そこには杵と臼を使い餅をついている姿があった。
「お餅ただいま配ってますよーこちらが最後尾です。」
(あそこに並べば餅が貰えるんじゃな。)
そう思いすぐに列に並ぶ。
「おじいちゃん一人?お餅おじいちゃんが食べるの?」
わしは何やら嫌な予感がし、ついつい嘘をついた。
「わしじゃなくてな、孫がつきたて食べたいと言うてな。」
「そうですか、なら良かった気をつけて食べて貰ってね。」
そんな会話をし、わしは自分の番が来るのを待っていた。
するとわしの前で急に餅を配るのをやめてしまったのだ。
よく見ると、台の上にはもう餅が残っていなかった。
「ごめんなさいおじいちゃん、ちょうど無くなったみたい。まだ三日までやってるから今度はお孫さんと来てね。」
そう言われとうとう今日は餅を食べる事が出来なかった。
わしは家に帰ると急に疲れが出たのか、すぐに寝てしまった。
夕方にいつもの人に起こされるまでぐっすり寝ていたようだ。
わしの頭はだいぶボートしていたのか、その人が話している事が頭に入っていなかった。
翌朝目が覚めて気づいた事は、昨日は夕食を食べずにそのまま寝てしまった事と、二日は娘夫婦が遊びに来る事だった。
わしは急いで昨日の夕食を食べ、服を着替え、身なりを整える。
昼前になると、呼び鈴がなる。
「ピンポーン」
音と共に元気よく孫二人が入ってきた。
「おじいちゃんあけましておめでとう。」
二日の日は一日中娘夫婦と過ごし、それはそれで楽しかったのじゃが……
それでもわしは餅が食べたかった。
その日の夜、娘夫婦が帰った後布団の中でふと思い出す。
「そう言えばあの神社の餅つきは三日までやってるって言ってたなぁ……明日行ってみるか!」
そう思いわしはゆっくり寝た。
次の日、わしは少し若めの服装をし、帽子を被り、マスクとマフラーをつけ、あの神社へと向かった。
「お餅ただいま配ってますよーこちらが最後尾です。」
(おっ、今日もちゃんとやっとるな。)
わしはそう思うと飛び跳ねるようにその列に並んだ。
若めの服装をしていたせいか、今日は何も話しかけられなかった。
とうとう自分の番が来て、餅を受け取る。
「しっかり噛んで食べてくださいね。」
笑顔で餅を渡されるとわしはすぐにその場を去っていた。
家に帰りゆっくりと餅を食べようと思った時だった。
「ピンポーン」
呼び鈴がなる。
わしはもう誰にも邪魔されずに餅が食べたいと思い、出ない事にした。
何回か呼び鈴がなったあと、
ドンドンドン!
「幸兎さんいますか?訪問サービスの田中です、いたら返事してください!!」
「いつもお世話してくれる人が今日は来る日だったか……」
しまったと思いつつも、わしは餅を食べてからドアを開ければいいかと思った。
その瞬間だった。
「ガチャ」
鍵が開く音と共にドタドタドタと数人の足音が聞こえた。
結局わしはその食べようとした餅が見つかり、また怒られる事になった。
とうとう三日の日も餅が食べられずに終わっていくと思ったその日の夜、やっぱりどうしても餅が食べたくなり、夜こっそりとコンビニに行く事にした。
夜の寒い中歩きやっとコンビニに着くと、すぐにわしは餅を探した。
売っていたのはひと袋にたくさん餅が入っているタイプか、インスタントの餅が入ったおしるこの二択だった。
「もし餅をひと袋買って後で見つかったらまた怒られるなぁ……」
わしはそう思い、インスタントの餅が入ったおしるこにした。
店内でお湯を入れ食べようと思った……が店内のイートインコーナーは既に閉まっていた。
わしは仕方なく近くの公園のベンチに座り食べることにした。
公園のベンチに座る頃には少し雪が降って来ていた。
「少し寒いが、家だとどうも邪魔がいつも入るしなぁ……」
そう思いながらインスタントの蓋を開けた。
わしは一気に入っている餅を口に入れ頬張ると、とても幸せな気持ちになり、一気に飲み込んでしまった。
それがわしの最後の誕生日の日になった。
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