髪の伸びる人形

ha-tsu

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髪の伸びる人形

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私の小学校にはいくつかの不思議な話がある。
今日はその一つを紹介しようと思う。


あれは私が小学校五年生だった頃の話。
当時怖い話をするのが流行っていた。
「ねぇはるかこの話知ってる?この学校の宿直室に髪の伸びる日本人形があるらしいよ。」
「そうなんだ、やっぱりどこの学校でも髪の伸びる日本人形ってあるのかなぁ?」
「分かんないけど、よくそんな怖い話聞くよね?」
当時の私の通っていた学校は、周りの小学校に比べとても古い建物で、戦時中も既に建っていたらしい。
「ねぇ遥今度放課後に宿直室のおじさんに言ってその人形見せて貰おうよ。」
もう一人の友人も寄ってきて話に参加する。
「でもこの学校の髪の伸びる日本人形は見た人を祟るって噂も聞いた事あるんだけど……」
「それマジ?祟られるのはマジ勘弁して欲しい……」
私は怖い話が流行っていたし、何気なく聞いている程度だったが、この私の友達の優子ゆうこ雪絵ゆきえは怖い話が好きでどちらかと言うと雪絵は体験をしたい派でもあった。


数日後
「今日の放課後見に行くよー。」
友達の雪絵が朝からそう言ってきた。
「え?今日行くの?マジで行くの?」
私は行く事自体冗談だと思っていた。
「行くに決まってるじゃん、今日の放課後教室に残っててね。」
笑顔で優子もそう言った。
その日の放課後私と雪絵、優子の三人で宿直室に向かった。
宿直室に住むおじさんは少し悩みながらも、私たちに日本人形を見せてくれた。
「本当に見ても後悔しないかい?」
おじさんのその質問に私は見たくないと答えたかったが、私が言う前に、
「是非とも見たいです!」
と雪絵が前のめりになりながら言った。
するとおじさんは奥からひとつの木箱を持ってきた。
「ひとつ約束して欲しいのだが、この人形を見たあと絶対に二十四時間は他の人形と遊んだり、話しかけたりしたらダメだよ。」
おじさんはそれだけ言うと私達の承諾を待つ。
「わかった、絶対に遊ばないから早く見せて。」
雪絵がそう言うと私と優子の顔を見同意を求める。
「私も遊ばないわ」と優子。
「……私もそうする。」と言わざるおえなかった。
三人の同意を得るとおじさんはゆっくりと木箱の蓋を開ける。
木箱の中には、少し古びた日本人形が一体入っていた。
その人形の髪の毛は、バラバラに伸びており、少しボサボサになっていた。
雪絵はその人形を食い入るように見ていた。
私はあまりその人形を見ないように、チラッとだけ見ると急に頭の中に何かが浮かんでくると、気分が悪くなりすぐにトイレへと走った。
私の異変に気づき優子が後を追ってきた。
「遥大丈夫?急にどうしたの?」
心配そうに私の背中をさする。
「うん……ちょっとなんか気持ち悪くなって……もうあの人形見るのやめよ?」
「……そうやなぁ私もなんか違和感あったし、やめた方がいいと思うわ。」
実は優子は少し感がいい方らしく、その優子がやめた方がいいと言うのだから間違いは無い。
「……そう言えば雪絵は?もしかしてまだあそこで見てるんかな?」
私がそう言うと、優子は何かを察知したのか、急いで走っていった。
私もすぐその後を追った。
「雪絵?何ともないん?」
優子が雪絵の背中を叩きながら言う。
雪絵は振り返りながら一言、
「大丈夫だよ……帰ろっか。」
と言いそれ以上何も言わずに帰路に着いた。
私は家に帰るとすぐに部屋に行き、荷物を置くと、母に今日の事を話した。
「そっか……遥あの人形見ちゃったんだね、宿直室のおじさんが言ったことはちゃんと守ってね、もし今日怖かったら一緒に寝るから言ってね。」
その時の母はいつもより優しく、少し違和感があったものの、私はその日母と一緒に寝ることにした。


翌日学校へ行くと、そこには雪絵の姿が無かった。
「優子おはよー雪絵今日休み?」
私は何気なしに優子に確認すると、
「遥おはよー……雪絵って誰?なんの話?」
初めは冗談で言っているのだと思ったが、それ以上優子は雪絵について一言も触れてこなかった。
後で母から聞いた話だが、母も同じ学校に通っていて、その頃から髪の伸びる日本人形があったらしい。
当時母もその日本人形を興味本位で、友達と見に行ったらしいが、その日の夜その友達から電話がかかってきて
「どうしよう、気が付いたら他の人形と遊んでしまった
しかも遊んでいるところを、あの日本人形に見られてた。」
そんな内容だったらしい。
母も冗談だと思い気には止めずに、次の日学校に行くと他のみんながその子の事を忘れていたと言う。
家に帰ると母が思い出したように話しかけてくる。
「そう言えば昨日遥がお風呂に入ってる時に雪絵ちゃんから電話があったわよ、なんだか少し怯えている様子だったけど……」
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