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飛空艇にて(挿し絵有り)
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フェリクスは、サレと名乗る瓶底眼鏡の男に招かれるまま、アーブルやセレスティアと共に、飛空艇へと乗り込んだ。
彼らが艦内に入ると、飛空艇が、ゆっくりと垂直に上昇し始めた。
やがて、ある程度の高度まで達したのか、飛空艇は水平飛行を開始した様子だ。
サレの案内で、フェリクスたちは艦内を歩いている。
「敵の敵は味方、とは、どういう意味だ?」
フェリクスは、アーブルに尋ねた。
「この艦は、反帝国組織のものだってさ。つまり、ここの人たちは、帝国にとっては敵ってことになるだろ」
「なるほど……しかし、なぜ反帝国組織の者たちが、都合よく俺たちの前に現れたんだ?」
「怪しまれるのも、無理はないでしょうねぇ」
瓶底眼鏡の男――サレが口を挟んだ。
「詳しい話をする前に、食事でも如何です。それと、この艦には灌水浴装置もありますよ」
そう言って、サレは、近くを通りかかった痩せぎすの女性に声をかけた。
「シュクレ、彼らを灌水浴装置室まで案内してくれるかな。着替えも用意してあげて。それが済んだら食事もね。私は、頭領に連絡してくるから」
「了解です。では、こちらへ」
シュクレと呼ばれた痩せぎすの女性は、フェリクスたちを灌水浴装置室へ案内した。
「すごいや、下着まで真っ新の新品だぜ」
シャワーを浴び、着替えて身綺麗になったアーブルが、感激したように言った。
「彼らは、経済的にも、結構な余裕があるらしいな」
フェリクスは頷いた。
少し遅れて、セレスティアが更衣室から出てきた。
汚れや埃を落とし、寸法の合わない男物の服から清潔なワンピースに着替えた彼女の姿は、可憐そのものだ。
「そういう格好だと、やっぱり『姫様』って感じだよなぁ。ほら、フェリクスも何か言ってやりなよ。似合うとか可愛いとか、幾らでもあるだろ」
そう言うアーブルに、肘で脇腹をつつかれ、フェリクスは戸惑った。
「アーブル……フェリクスが、困っていますよ」
セレスティアが、半ば困ったような微笑みを浮かべて、アーブルを宥めた。
「……そうだな。セレスティアは、どんな格好でも可愛いと思う。君が、そうやって笑っていると、胸の奥が、むずむずした不思議な感じになるんだ」
フェリクスの言葉を聞いて、耳まで赤くなったセレスティアが、顔を覆った。
「お、俺は、思ったことを正直に言ったんだが……何か、不味いことでもあったのか?」
「そりゃ、赤ん坊の口に肉の塊を突っ込むようなことをされたら、姫様だって喉が詰まるさ」
狼狽するフェリクスを横目に、アーブルが肩を竦めた。
「食事の用意ができたので、こちらへどうぞ」
三人が身支度を整える頃合いを見計らっていたのか、シュクレが声をかけてきた。
「とは言っても、保存食を温めただけですけどね」
フェリクスたちは、食堂らしき部屋へ案内された。
テーブルの上には、パンや飲み物の他に、肉や野菜の入った具沢山なスープや、腸詰めに野菜を添えたものなどが並べられ、湯気を上げている。
アーブルが、しみじみと呟いた。
「……久々に人間らしいメシだ」
フェリクスたちは、テーブルに着くと、用意された食事に舌鼓を打った。
それらは、保存食などとは思えない質のもので、帝国の豊かさと高い技術を物語るようだった。
「本国に入れば、新鮮な食材を使ったものも食べられますよ」
フェリクスたちが驚く様子を見て、シュクレが言った。
「本国? この艦は、帝国に向かっているのか?」
フェリクスが尋ねると、シュクレは、しまった!といった様子で、自分の口を押さえた。
「そいつは、初耳だな」
アーブルも、首を傾げた。
セレスティアが、不安げにフェリクスとアーブルの顔を交互に見る。
「それは、私から順に説明しますよ」
いつの間に食堂に来ていたのか、サレが、瓶底眼鏡をずり上げながら言った。
彼らが艦内に入ると、飛空艇が、ゆっくりと垂直に上昇し始めた。
やがて、ある程度の高度まで達したのか、飛空艇は水平飛行を開始した様子だ。
サレの案内で、フェリクスたちは艦内を歩いている。
「敵の敵は味方、とは、どういう意味だ?」
フェリクスは、アーブルに尋ねた。
「この艦は、反帝国組織のものだってさ。つまり、ここの人たちは、帝国にとっては敵ってことになるだろ」
「なるほど……しかし、なぜ反帝国組織の者たちが、都合よく俺たちの前に現れたんだ?」
「怪しまれるのも、無理はないでしょうねぇ」
瓶底眼鏡の男――サレが口を挟んだ。
「詳しい話をする前に、食事でも如何です。それと、この艦には灌水浴装置もありますよ」
そう言って、サレは、近くを通りかかった痩せぎすの女性に声をかけた。
「シュクレ、彼らを灌水浴装置室まで案内してくれるかな。着替えも用意してあげて。それが済んだら食事もね。私は、頭領に連絡してくるから」
「了解です。では、こちらへ」
シュクレと呼ばれた痩せぎすの女性は、フェリクスたちを灌水浴装置室へ案内した。
「すごいや、下着まで真っ新の新品だぜ」
シャワーを浴び、着替えて身綺麗になったアーブルが、感激したように言った。
「彼らは、経済的にも、結構な余裕があるらしいな」
フェリクスは頷いた。
少し遅れて、セレスティアが更衣室から出てきた。
汚れや埃を落とし、寸法の合わない男物の服から清潔なワンピースに着替えた彼女の姿は、可憐そのものだ。
「そういう格好だと、やっぱり『姫様』って感じだよなぁ。ほら、フェリクスも何か言ってやりなよ。似合うとか可愛いとか、幾らでもあるだろ」
そう言うアーブルに、肘で脇腹をつつかれ、フェリクスは戸惑った。
「アーブル……フェリクスが、困っていますよ」
セレスティアが、半ば困ったような微笑みを浮かべて、アーブルを宥めた。
「……そうだな。セレスティアは、どんな格好でも可愛いと思う。君が、そうやって笑っていると、胸の奥が、むずむずした不思議な感じになるんだ」
フェリクスの言葉を聞いて、耳まで赤くなったセレスティアが、顔を覆った。
「お、俺は、思ったことを正直に言ったんだが……何か、不味いことでもあったのか?」
「そりゃ、赤ん坊の口に肉の塊を突っ込むようなことをされたら、姫様だって喉が詰まるさ」
狼狽するフェリクスを横目に、アーブルが肩を竦めた。
「食事の用意ができたので、こちらへどうぞ」
三人が身支度を整える頃合いを見計らっていたのか、シュクレが声をかけてきた。
「とは言っても、保存食を温めただけですけどね」
フェリクスたちは、食堂らしき部屋へ案内された。
テーブルの上には、パンや飲み物の他に、肉や野菜の入った具沢山なスープや、腸詰めに野菜を添えたものなどが並べられ、湯気を上げている。
アーブルが、しみじみと呟いた。
「……久々に人間らしいメシだ」
フェリクスたちは、テーブルに着くと、用意された食事に舌鼓を打った。
それらは、保存食などとは思えない質のもので、帝国の豊かさと高い技術を物語るようだった。
「本国に入れば、新鮮な食材を使ったものも食べられますよ」
フェリクスたちが驚く様子を見て、シュクレが言った。
「本国? この艦は、帝国に向かっているのか?」
フェリクスが尋ねると、シュクレは、しまった!といった様子で、自分の口を押さえた。
「そいつは、初耳だな」
アーブルも、首を傾げた。
セレスティアが、不安げにフェリクスとアーブルの顔を交互に見る。
「それは、私から順に説明しますよ」
いつの間に食堂に来ていたのか、サレが、瓶底眼鏡をずり上げながら言った。
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