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チートに転生してやるぜ
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俺は死んだ。
コンビニ帰りに青信号で横断歩道を渡っていたところを、前方不注意の車に撥ねられるという、割とありがちな死に方だ。
地面に叩きつけられ、最後の瞬間に思ったのは、さっき買ったデザート、まだ食べていなかったのになぁ、という無念だった。
次の瞬間、俺は眩い光に包まれた。
気付くと、俺は神殿のような神秘的な空間に立っていた。
目の前には、ギリシャ神話の登場人物を思わせる、ドレープと言うやつか、ヒラヒラした布切れをまとった若い女がいた。
よく見ると、女は地面というか床から数十センチほど浮いている。つまり、普通の人間ではないということだ。
「ごめんなさい」
女が、鈴を転がすような声で言った。
「本当は、あなたを死なせる予定ではなかったのに、手元が狂ってしまって……」
「どういうことだよ……っていうか、あんた、誰?」
様々な疑問があったものの、俺は、とりあえず彼女が何者なのか確かめようと思った。
「私は運命の女神……あなたたちの世界の管理を担当しています。ただ、就任したばかりで慣れなくて……」
彼女──運命の女神は答えた。
普段なら、頭のおかしい人なんだなと思うところだが、この状況では信じるしかないだろう。
「で、手元が狂って俺を死なせた……そういうこと?間違いなら、元に戻せないの?」
「それは、できません。あの世界では、社則で死者の蘇生は禁じられているので」
社則って何だよ。
「冗談じゃない!買ったばかりのデザートも食えずに死んじまったんだぞ。クレーム入れてやる!」
「お待ちください、それだけは許してください!これ以上クレームを受けたら、私、左遷されてしまいます!」
「あんた、そんなにやらかしてるのかよ!」
「どうか、この件はご内密に……現世への復帰以外でしたら、できる限りのことをして埋め合わせしますから!」
女神が、必死な様子で懇願してきた。彼らにも、色々と事情があるらしい。
冷静に考えれば、現世に戻るメリットも、それほど無かった。
学歴なし、バイトは最近クビになり現在は無職、容姿は贔屓目に見ても中の下くらい、同級生は何人も結婚して子供までいるのに、自分は奥さんどころか彼女いない歴イコール年齢、親にはサッサと家を出ろと言われているが肝心の資金がない……控えめに言っても詰んでいる。
怠惰な人生のツケが回ってきたと言われればそれまでだが。
「……それなら、別の世界に生まれ変わるとかってアリ?」
俺は、ダメ元で訊いてみた。
漫画やアニメでよく見る、異世界転生と言うやつだ。
「アリです」
こともなげに、女神が言った。
「どのような世界をご希望でしょうか?」
「う~ん……ゲームの世界とかって可能なのか?」
「はい、それなら難度も低いので問題ありません」
という訳で、俺は女神の言葉に甘えて、自分のよく知るゲームの世界へと送り込んでもらった。
いわゆるMMORPGと呼ばれるジャンルだ。
外見はキャラクターメイキングで超絶イケメンにさせてもらった。本当は課金しなければ使えないパーツもあるんだが、そこは転生チートというやつである。
更に、全ての能力値はカンスト、スキルも習得済み、装備も最強クラスのものを持った状態からのスタート……もはやソロでも無双し放題だろう。
NPCからの好感度も最高レベルなので女性キャラにもモテモテだ。
冴えなかった前世になど未練はないとばかりに、俺は颯爽とフィールドを歩いていた。
……と、突然、足が何かに引っかかったような感覚と共に、俺は移動できなくなってしまった。
「何だ?何が起きたんだ?」
俺は、何とか移動を再開しようとしたが、その場で足踏みをするだけだった。
「まさかこれって……予期せぬエラーってやつでは……?」
こういう場合、最終手段として強制終了するしかないケースは普通にある。
俺は、リセットボタンを探した。
……ない。
どうやら、ゲーム内部から、そういった操作はできないらしい。
「そんな……せっかく最強イケメンに転生したのに、これじゃ意味がないじゃねーか!!」
俺は、成す術もなく、ジタバタし続けるだけだった……
おわり
コンビニ帰りに青信号で横断歩道を渡っていたところを、前方不注意の車に撥ねられるという、割とありがちな死に方だ。
地面に叩きつけられ、最後の瞬間に思ったのは、さっき買ったデザート、まだ食べていなかったのになぁ、という無念だった。
次の瞬間、俺は眩い光に包まれた。
気付くと、俺は神殿のような神秘的な空間に立っていた。
目の前には、ギリシャ神話の登場人物を思わせる、ドレープと言うやつか、ヒラヒラした布切れをまとった若い女がいた。
よく見ると、女は地面というか床から数十センチほど浮いている。つまり、普通の人間ではないということだ。
「ごめんなさい」
女が、鈴を転がすような声で言った。
「本当は、あなたを死なせる予定ではなかったのに、手元が狂ってしまって……」
「どういうことだよ……っていうか、あんた、誰?」
様々な疑問があったものの、俺は、とりあえず彼女が何者なのか確かめようと思った。
「私は運命の女神……あなたたちの世界の管理を担当しています。ただ、就任したばかりで慣れなくて……」
彼女──運命の女神は答えた。
普段なら、頭のおかしい人なんだなと思うところだが、この状況では信じるしかないだろう。
「で、手元が狂って俺を死なせた……そういうこと?間違いなら、元に戻せないの?」
「それは、できません。あの世界では、社則で死者の蘇生は禁じられているので」
社則って何だよ。
「冗談じゃない!買ったばかりのデザートも食えずに死んじまったんだぞ。クレーム入れてやる!」
「お待ちください、それだけは許してください!これ以上クレームを受けたら、私、左遷されてしまいます!」
「あんた、そんなにやらかしてるのかよ!」
「どうか、この件はご内密に……現世への復帰以外でしたら、できる限りのことをして埋め合わせしますから!」
女神が、必死な様子で懇願してきた。彼らにも、色々と事情があるらしい。
冷静に考えれば、現世に戻るメリットも、それほど無かった。
学歴なし、バイトは最近クビになり現在は無職、容姿は贔屓目に見ても中の下くらい、同級生は何人も結婚して子供までいるのに、自分は奥さんどころか彼女いない歴イコール年齢、親にはサッサと家を出ろと言われているが肝心の資金がない……控えめに言っても詰んでいる。
怠惰な人生のツケが回ってきたと言われればそれまでだが。
「……それなら、別の世界に生まれ変わるとかってアリ?」
俺は、ダメ元で訊いてみた。
漫画やアニメでよく見る、異世界転生と言うやつだ。
「アリです」
こともなげに、女神が言った。
「どのような世界をご希望でしょうか?」
「う~ん……ゲームの世界とかって可能なのか?」
「はい、それなら難度も低いので問題ありません」
という訳で、俺は女神の言葉に甘えて、自分のよく知るゲームの世界へと送り込んでもらった。
いわゆるMMORPGと呼ばれるジャンルだ。
外見はキャラクターメイキングで超絶イケメンにさせてもらった。本当は課金しなければ使えないパーツもあるんだが、そこは転生チートというやつである。
更に、全ての能力値はカンスト、スキルも習得済み、装備も最強クラスのものを持った状態からのスタート……もはやソロでも無双し放題だろう。
NPCからの好感度も最高レベルなので女性キャラにもモテモテだ。
冴えなかった前世になど未練はないとばかりに、俺は颯爽とフィールドを歩いていた。
……と、突然、足が何かに引っかかったような感覚と共に、俺は移動できなくなってしまった。
「何だ?何が起きたんだ?」
俺は、何とか移動を再開しようとしたが、その場で足踏みをするだけだった。
「まさかこれって……予期せぬエラーってやつでは……?」
こういう場合、最終手段として強制終了するしかないケースは普通にある。
俺は、リセットボタンを探した。
……ない。
どうやら、ゲーム内部から、そういった操作はできないらしい。
「そんな……せっかく最強イケメンに転生したのに、これじゃ意味がないじゃねーか!!」
俺は、成す術もなく、ジタバタし続けるだけだった……
おわり
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