99%断罪確定の悪役令嬢に転生したので、美男騎士だらけの学園でボッチ令嬢を目指します

ハーーナ殿下

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第1話:すべて思い出す

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「あっ……」

 私は“すべて”を思い出した。

 思い出したこの場所は、西洋風で豪華絢爛ごうかけんらんな大広間。

 タイミングは家族との夕食の時間だ。

「ああ……『そういうこと』だったんだ、この世界は……」

 夢のようなことに思わず「やったぁああ!」と叫びそうになる。
 だが状況的に、厳粛な今はまずい。

「いかがなさいましたか、マリアンヌ様?」

「いえ、何でもありませんわ」

 控えていた侍女に、今の“現世”の言葉を聞かれていなかった事が幸いだった。
 何故なら今の私は侯爵令嬢だから、それらしく振る舞わないと。

 でも、これからどうしよう。
 というか、本当にここは私が思っている世界なのだろうか?

 調べて確認したいけど、今は厳格な食事中。
 とにかくボロを出さないように、早く食事を終えたい。

「んっ? どうしたマリア。具合でも悪いのか?」

 大きな貴族テーブルの向こう側から、ホリの深い男性が心配そうに声をかけてくる。
 中年ではあるが、金髪碧眼の整った顔立ち。

 凄いイケオジ。
 ハリウッド映画の俳優も真っ青なくらいの、イケメン中年だ。

「いえ、何でもありませんわ……“お父様”」

「なら、よかった。ところで明日から学園生活のことだが……」

 イケメンの中年……今の私のお父様は、食事しながら確認してきた。

 明日から私が入学する学園について。
 侯爵令嬢としての学園での心得のことを。

 そして学園生活で『必ず将来の婚約者を見つける』という令嬢の責務を、私に念入りに確認してきた。

「はい、お父様。肝に命じております」

「頼んだぞ、マリア。全てはこのバルマン侯爵家の繁栄のため」

「はい、お父様」

 令嬢として上品な笑みと口調で対応。

 だが全てを思い出した今は、心の中は――――上の空だった。

「では、お父様、おやすみなさいませ」

 夕食を終えた私は、侍女と共に自室へ戻る。

 豪華な屋敷の廊下を歩きながら、コッソリ周囲を確認していく。

 ゴシック様式の豪華な建物内には、高そうな絵画や彫刻が飾られている。
 貴族令嬢としては小さい時から見慣れている、この廊下の光景。

 でも今は美術館に迷い込んだように、違和感がある。

 ふう……これも記憶の全てを、思い出した影響かな。

 でもお父様や侍女たちに、バレるのは危険。

 完璧に一人になるまでは、いつものように貴族令嬢としていこう。

 ん?

 自分の寝室の前に、誰かが待っている。
切れ長の目の、凄いイケメンの青年。

 あっ……この男の人は、私の専用の若執事ハンスだ。

「マリアンヌお嬢様、明日のスケジュールですが、予定通り午前は聖剣学園の入学式があります。その後は騎士の方との顔合わせがあります」

 私の就寝前の恒例。
 明日のスケジュールを、ハンスから告げられる。

「ええ、そうですわね」

 だが、まだ混乱している今の私、まったく耳には入ってこない。
 とにかく早く寝室に入って、自分の状況を確認したいのだ。

「お嬢様? 大丈夫ですか?」

 冷静沈着なハンスは勘が鋭い。
 鋭い視線で私の顔を見つめてくる。

「ええ、もちろん、元気ですわ」

「そうですか。では、お嬢様、おやすみなさいませ」

「ええ、おやすみなさい。ハンス」

 ふう……今のはちょっと危なかった。

 でも何とか乗り切れた。
 無事に部屋に入って、全ての就寝の準備を、侍女にやってもらう。

「では、おやすみなさいませ、マリアンヌ様」

 侍女たちも全員退出する。
 寝室に残るのは私一人だけ。

 ふう……一人になれた。
 これで知りたいことを、ようやく確認できる。

 急いで確認しないと。
 寝室の金縁の大きな鏡の前に、おそるおそる近づく。

 そして鏡に映った自分の全身を確認する。

「紫色の髪に、きつい碧眼か……」

 鏡に映った自分は美しい令嬢だった。
 ちょっと目つきは悪いけど、十分美人の部類にはいる容姿だ。

「それにバルマン侯爵家に、そしてマリアンヌの名か……」

 鏡に自分の姿を見ながら、今までの情報を確認。
 大好きだった設定の中で、自分がおかれている状況を思い出していく。

「ふう……やっぱり、そういうことか……」

 最初に思い出したときは、心の中で本当に歓喜していた。

 でも自分の状況を確信した今は逆だ。

「《聖剣乱舞》のゲームの世界だったんだね、やっぱりここは……」

 私が転生したのは、前世で一番大好きだった乙女ゲームの中だった。

 だから鏡に映る人物のことも、今の私のことは誰よりも知っている。

 今の私『マリアンヌ=バルマン』はゲームの中でも、重要な登場人物の一人。

 貴族令嬢であり“真紅の戦乙女”と呼ばれた危険な人物。

 庶民の主人公を学園内でイジめる悪キャラだ。

「これはキツいな……」

 全ての状況を確認して、泣きそうになった。

「よりによって最悪キャラに、転生しちゃったな、私……」

 こうして私は主人公の仇敵であり、ラスボスともいえる悪役令嬢に転生していたのだ。
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