99%断罪確定の悪役令嬢に転生したので、美男騎士だらけの学園でボッチ令嬢を目指します

ハーーナ殿下

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第17話:大剣使いベルガ

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大剣使い“狂剣士バーサーク”ベルガ。

「ここにいる奴らは、皆殺しだ!」

 その男は獣気を放っていた。
 口元には獣の様な不遜な笑みが浮かび、ギラついた両眼で周囲の状況を見回していた。

「ん? というか、ここはどこだ? それにお前らは、誰だ?」

大剣使いベルガは怒声のような声で、私に訪ねてくる。
とても人に訪ねてくる態度でない。

「私の名はマリアンヌよ。ファルマの街で買い物していたら、いきなりこの場に閉じ込められていたの」

細心の注意を払いながら、私は名乗る。
相手の"地雷”を踏まないように、平民風の口調で。
 
本来ならば騎士を相手に名乗る時は『わたくしはバルマン侯爵家が乙女指揮官ヴァルキリア・コマンダーマリアンヌでございますわ!』と名乗るのが、作法である。

 だが目の前の男……“貴族嫌い”のベルガには、ソレは地雷で禁句。
 
ゲーム内でのベルガの設定だと、私は記憶していたのだ。

「ふーん。マリアンヌね。オレはベルガだ。で、ここからは、どうすれば出られる?」

 どうやら第一印象は、悪くなかったようだ。
鼻を鳴らしながら返答してきたの、その証拠だ。
ゲーム内の設定にそうあった。
 
(とにかく細心の注意を払って会話しないと……)

 この男は本当に危険。
気に食わない相手なら、例え上官や王族であっても斬りかかっていく。
それがベルガという男の性格なのだ。

(ヒドリーナさん……は、大丈夫か)

 隣にいるヒドリーナさんが、ベルガに怯えて口を閉ざしていている。
正直なところ、これは助かる。

 彼女みたいな貴族令嬢を、ゲームの中のベルガは一番嫌っていたのだ。

「おい。お前は、出る方法は知らないのか?」

「ここから出る方法は分からないわ。でも、あの妖魔ヨームの群れと関係があるはず」

この異空間が出現した原因は不明。
でも妖魔が関わっていることだけは、間違いない。

ふう……。
それにしてもベルガ相手だと言葉使いが、前世の自分に戻ったような不思議な感じだ。

「ふーん。そうか。なら、さっさと片して、昼飯の続きでも食うとするか」

ベルガは異変の原因など、まったく興味なさそう。
妖魔に向かって、大剣を構える。

「待って⁉ この数の妖魔兵と、一人で戦うのは危険よ。せめて私と“仮契約”を!」

 単騎で先走ろうとするベルガを、引き留める。

 たしかにこの世界の騎士の戦闘能力は、常識外れに高い。
 
それは学園の修練場での、ラインハルトとジーク様。二人の模擬戦を見て、私は理解していた。

 だが妖魔兵も人外の力と凶暴性をもった、恐ろしい存在。
 しかも相手は無勢。
例えベルガが強い騎士でも、この戦力差は無謀だ。

「あん? お前と“仮契約”だと?」

「そうです。“仮契約”したら、アナタの戦闘能力は、大幅に向上します!」

 騎士の力を100%発揮するために、乙女指揮官と契約の契約が必要。

 それはゲームの中の私の知識。
学園で学んだ乙女指揮官ヴァルキリア・コマンダーとしての知識だ。

「そんなものは面倒くせぇぜ! 邪魔だから、お前らはそこで見ていろ! いくぜ!」

 ベルガは提案を却下。

――――次の瞬間、自分の視界から消えていた。

えっ……?

どこに消えたの?

――――直後、妖魔の叫びが響き渡る。

『ウギャー!』

『ギャルル⁉』

視線を向けると、妖魔ヨームは切り裂かれていた。

「はん! 手応えのない連中だな!」

ベルガが妖魔ヨームを倒していたのだ。
鉄塊のような大剣を振るい、次々と妖魔ヨームを葬っていく。

『ギャァアー!』

『グエエ!』

妖魔兵も反撃に移る。
多勢に無勢の戦力差を利用して、ベルガを包囲しようとする。

「はん! 手間が省けたぜ! ぁああ!」
 
だがベルガは一蹴。
一気に妖魔ヨームの群れを打ち倒していく。


「す、凄いですわ……」

その圧倒的な光景に、ヒドリーナさんが言葉を失っている。
 
でも彼女の眼は、しっかりと見開いていた。
この凄まじい戦いを、まぶたに焼き付けようとしていたのだ。
 
「これが……騎士の実戦……なのですわね」

彼女も乙女指揮官の一人。
戦いに魅せられた戦乙女として、恐怖に負けないように必死だったのだ。



戦いは終わる。

「けっ、手応えのないヤツらだ」

戦いというよりは、一方的な殺戮だった。
それほどまでに圧倒的な展開であった。
 
 妖魔兵は一瞬で全滅したのだ。

ん?
この異空間が消えていく?

私たちを閉じ込めていた異空間が、ゆっくりと消えていた。
ファルマの街の現実の世界が、見えてきた。

あと声も聞こえてきた。
……『マリアンヌ様!』と叫ぶ、若執事ハンスの懐かしい声が。

ああ、そうか。
きっとこれで、元のファルマの街に帰れるのだ。

「ちっ。コイツ等、下級妖魔か。どうりで歯ごたえがなかった訳だ。おい、妖石を集めるから手伝え。そこの女ども!」

「ひっ……」

妖魔の返り血を浴びた、ベルガの恐ろしい姿。
ヒドリーナさんが思わず悲鳴をあげる。

「集めましょう、ヒドリーナ様。命を助けて頂いたお礼です」

「は、はい……マリアンヌ様がそうおっしゃるのなら……」

妖魔を倒した跡に残る、小さな宝石……妖石を拾い集めていく。
 
 この世界では妖魔を倒すと、必ず妖石が落ちている。
強さによって大小様々だ。
 
 石は貴重な法術の原動力として、各国で珍重され買い取られている。
つまり妖石ヨーセキは金になるのだ。

 これはゲーム内でも同じ設定だ。
 敵を倒して、お金が貯まっていくのだ。

「はい、こちらをどうぞ」

「ひい、ふう、みい……まあ、下級ならこんなもんか。飯代にしとくか」

 集めた妖石を数えながら、ベルガはニヤリと笑みを浮かべる。
子どものように無邪気で、不思議が魅力のある笑みだ。

「助けてくれてありがとう、ベルガ」

 相手が嫌がる敬語を、なるべく使わないように感謝を述べる。
最近は令嬢生活に慣れ染まっていたから、何気に難しい。

「あん? 別にてめぇらの為に、ったんじゃねえぞ、オレは。それに別料金は、貰っておく」

 私の首に下げてあったネックレス。
ベルガは乱暴に手をかけてくる。

「こいつで助けてやって料金は、チャラにしといてやる」

 ベルガが強引に、ネックレスを剥ぎ取る。

「あっ、それはマリアンヌ様の大事なネックレス⁉ 御母上さまの形見の……」

「いいのです、ヒドリーナ様……」

ヒドリーナさんを、私は手で制する。
心配ないと目で合図する。

「ほほう。女のくせに肝が座っているな? "マリアンヌ”……といったか。悪くない目だ」

「えっ……?」

思わず驚いてしまう。
何故なら他人に興味を持たないベルガは、人の名前を呼ばない設定。

それなのに私の名前を?
 
「じゃあな。また何か、あったら呼べ。遊びに来てやらぁ!」

 そう言い残し、ベルガは消えるように立ち去って行った。
 
「ベルガ……か」

 後ろ姿を見つめる私の心は、なんかチクリとしていた。 
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