99%断罪確定の悪役令嬢に転生したので、美男騎士だらけの学園でボッチ令嬢を目指します

ハーーナ殿下

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第41話:領地に到着

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「マリアンヌお嬢さま、バルマンの街が見えてきました」

「ようやくですわね」

 故郷であるバルマン領内に、私たちの乗った馬車が入る。
 数日前にファルマの街を出発して、強行軍にも近いスケジュールだった。

「お嬢さま、お身体の方は大丈夫ですか?」

「もちろん。こう見えても鍛えているのよ、ハンス」

 普通の貴族馬車ではあり得ない速度で、ここまで街道を進んできた。
 中世的な馬車の揺れによる疲労は大きい。
 
だが学園での厳しい訓練の成果があったのであろう。私自身には特に疲労は残ってはいなかった。

「何とか間に合いましたわ」

 強行軍のお陰で、日数的には余裕ある到着だ。
 更にはハンスの道中での手配で、トラブルも無くスムーズで帰郷できた。
心の中で彼に感謝する。

「懐かしのバルマンね」

 遠目に見える街の城壁と、その奥にあるバルマン城の尖塔のシルエット。
懐かしさがこみ上げてくる。

マリアンヌさんの十数年の記憶が、今の私と混じっているから、なんか不思議な感情だ。

 まあ、最近ではマリアンヌさんと、私は一つの身体で仲良くしている。
 自分も寂しい時は、彼女(マリアンヌ)と心の中でお話もできるから『私たちは二人で一人!』みたいな感じだしね。

 えっ、危ない人みたいだから、それは他の人には言わない方がいい……と?
 そ、そうだったわね……気をつけないとね。

「それにしてもバルマンの街……領内の雰囲気が、前と少し違いますわね?」

 街に近づくにつれて、私は何か違和感があるのだ。

 なんだろう……領民たちがバタバタ慌ただしいというか、バッと台風が過ぎ去った感じ。そんな感じだ。

「話によりますと、炎竜サラマンダー騎士団が遠征に出た後だと……」

 若執事ハンスの情報では、バルマン侯爵家の主力騎士団が、妖魔退治へ出陣したという。
その影響ではないかと。
 
 騎士団の遠征ともなれば、領内にいる騎士と乙女指揮官に召集がかかる。
領内は慌ただしくなるものだ。
 
 ふむふむ、そうことか。

「炎竜騎士団ということは、クラウドお兄様が率いていったのかしら?」

「はい、そのようであります」

 ハンスの情報によると、私の推測は当たっていた。
 それにしてもクラウドお兄様が率いて行ったのなら、妖魔退治も大成功で終わるであろう。

 えっ、『お兄ちゃん』なんていたのか? って。
 そういえば言っていなかった……ような。

 そう、私マリアンヌには血の繋がった兄が、一人いた。
 名前はクラウド・バルマン。

 兄は凄腕の美男騎士であり、バルマン家が誇る炎竜騎士団の団長でもあった。

 年齢は私よりも二歳ほど上で、本来ならまだファルマ学園の三年生である。
 
 だが既に卒業の儀を、飛び級で済ませて正規騎士となっていた。
“飛び級卒業”を果たした逸材の騎士なのだ。

 自分の兄ながらクラウドは凄い騎士である。 
 騎士としての能力は、伝統ある学園史上でも随一。指揮官としても部下からの信頼も厚い。
 
 "完璧パーフェクト騎士ナイツ”の二つ名の通りに、非の打ち所がない完璧な騎士。
 そしてもちろんイケメンである。

 私の記憶が覚醒する前のマリアンヌさんにとって、この世で尊敬できる数少ない人物の一人だ。
 
 うん、格好いい優れたお兄ちゃんって、やっぱり誇らしいよね。
私は前世に兄はいなかったから、うらやましいものだ。
今世ではそんなお兄様ができて嬉しい。

 あれ……?
 でも、そんなクラウドお兄様には、ここ最近しばらくは会っていなかった。

 最後に顔を合わせたのは確か……"私の記憶が覚醒した”次の日だったはずだ。バルマン家の屋敷の朝食会場で。
 
 でも、そういえばその時のおクラウド兄様は、なんか変だったような。
 私の顔を見てギョッとして、何かに驚いていた。

 あんなビックリ顔をしたお兄様の顔。
マリアンヌさんの記憶にも無かったほどだ。
 それからは兄とは顔を合わせていなかった。

 そして今回の帰郷中でも、兄に会えないかもしれない。
 クラウドお兄様は炎竜騎士団を率いて、妖魔退治の遠征に出ているのだから。


「お嬢さま、街の正門に着きました」

「あら……」

 ハンスの声で、意識を馬車の外に向ける。

 いつの間にか目の前には、堅牢なバルマンの街の城壁が迫っていた。
 奥にある小高い丘には、我が家でもあるバルマン城が見える。

「懐かしの我が家に帰って来たのですね……」

 久しぶりの帰郷に思わず心がホッとする。
 でも、気をつけないと。
 
 気を引き締めて気合いを入れなおす。
 ここでの用事を速やかに済ませて、私は学園に急ぎ戻るのだから。

「では、城へ参りましょう」

 街の正門を顔パスでくぐり抜け、馬車は進んでいく。
 
――――これから待ち受ける、残酷な罠にも気がつかずに。

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