独裁王国を追放された鍛冶師、実は《鍛冶女神》の加護持ちで、いきなり《超伝説級》武具フル装備で冒険者デビューする。あと魔素が濃い超重力な鉱脈で

ハーーナ殿下

文字の大きさ
19 / 46

第50話:友マリエルのために

しおりを挟む
王女マリエルを影ながら護衛するために、ボクたちはミカエル城内に潜入。
ミカエル外交官は友好的なふりをして、無理難題をマリエルに押しつけ。今宵、王宮に参加するためのドレスがなく、マリエルは窮地に陥る。

「ドレス屋さんに行きましょう!」

彼女を助けるため、ボクたちは王都のドレス屋さんに向かう。

王宮から秘密の通路を使って、一気に城外へと脱出。そのまま王都の大通りにやってきた。

「ふむ。おそらく、ここが王都一のドレス屋じゃろうな」

ドワーフ老鍛冶師ドルトンさんの案内で、通り沿いのドレス屋前にやってきた。店前のショーウインドーには色んなドレスが飾られている。

「あっ……マリエルだ」

店内にマリエルたちハメルーン使節団がいた。必死に店の人と話をしている。
おそらく『王女クラスのドレスを、今日中に用意できないか?』と、交渉をしているのだろう。読唇術で雰囲気がなんとなく分かる。

店主は首を横に振って答えている。正式なドレスとなると採寸から、仕立てまで最低でも一週間はかかる。

しかも王女クラスの格があるドレスは、普通の服のように市販はされていない。全てが当人の体格に合わせて作るオーダーメイド品。
だから王都一のドレス屋でも急に用意は出来ないのだ。

「ハルク君、マリエル様、頑張っているね……」

「そうだね。ハメルーン国の代表者として、諦めていないね」

マリエルは必死に交渉をしていた。他の店の情報も聞いて、ドレスが余っている貴族令嬢の話も聞きだしている。
意地悪なミカエル外交官に負けないように、ハメルーン魂で最後まで足掻こうとしているのだ。

「どうするのじゃ、小僧? 姫さんがいるから、この店には入れないぞ」

「いえ、店に入る必要はありません。もう目的は果たしたので、一旦、ボクの屋敷に戻ります!」

「なんじゃと⁉ それは、どういう意味じゃ?」

「後で説明します!」

今は時間がない。二人への説明は後回し。屋敷街のボク名義の屋敷に戻っていく。



屋敷に帰宅する。
そのまま庭のドルトン工房へ入っていく。

「それじゃ作業を始めます。できればドルトンさんとサラにも、手伝って欲しいです」

「手伝うだと? それは構わんが、いったい何を? もしかオヌシ……」

「はい、そうです。これから“マリエルのドレス”をここで作ります!」

思いついた作戦は『ボクがマリエルのドレスを作ること』だ。
これならば時間的にギリギリ間に合う。上手くいけば、マリエルに恥をかかせないで済むのだ。

「ドレスを作る、じゃと⁉ もしかしてオヌシ、裁縫の技術もあるのか⁉」

「いえ、裁縫は苦手です。だから今回はコレを使います……【収納】!」

収納から“大きな布”を取り出す。
普通の布にみえるけど、これ金属製の布“ミスリル布”だ。

これはボクが今も着ている《鎧服アーマー・クロス》の用の生地。
ミスリル板を極限まで薄くして、糸のように加工して、それを編んでいって、洋服の生地のように滑らかに加工ものだ。

耐久性があり、見た目と質感が絹シルクのよう。虹色に輝く見栄えのする生地で、これならドレスの生地にピッタリなのだ。

「ボクは裁縫できませんが、鍛冶師なのでこの“ミスリル布”は加工できます。今回は、この布でマリエル用のドレスを作ります!」

「な、なんじゃと……たしかに、オヌシの規格外の鍛冶の腕があれば、間に合うかもしれんな。だが、デザインはどうする⁉ 王女クラスのドレスのデザインとなれば、専門家でも難しいぞ⁉」

「それも問題ないです。先ほど王都のドレス屋さんで、“ドレスの基本形”は記憶してきました。あとはハメルーン王宮でマリエルが着ていたドレスのデザインを、そのまま融合させて形にしていきます!」

先ほどドレス屋さんに行ったのは、店頭に展示のドレスの形を記憶するため。
あの瞬間で、生地パターンの形と細部の飾りを、全て記憶しておいた。あとはマリエルのドレスと融合させて、ミスリル生地を加工していくだけだ。

「な、なんじゃと……あの一瞬で、ドレスの生地のパターンを記憶しておったのか、オヌシは⁉ 相変わらずとんでもない才能だな」

「実は記憶力だけは、昔から無駄にいいんです。それじゃ、急いで作りましょう! でボクが基本形を作っていくので、ドルトンさんはサポートをお願いします!」

「ああ、分かった。そのぐらいならワシに任せておけ」

「ハルク君、私にも何か手伝わせて!」

「それならサラはモデルをお願い。マリエルに体型が似ているから」

「はい、分かりました!」

ボクたち三人は作業に取り掛かる。
まずは極薄のミスリル布を、ドレスのパターンの布としてカット。

パーツを組み合わせてドレスの形を作っていく。何度もサラに試着してもらい、修正を加えていく。

それと並行して王女クラスのドレスとして、相応しい装飾品も付け加えていく。


(マリエルのイメージを最大限に引き出すために……)

色白で美しい銀髪の可憐な王女マリエル。
でも意外と気が強くて、負けず嫌いで、頑張り屋さんなところもある彼女の良い点。

マリエルのことを頭の中に思い浮かべながら、ドンドン作業をしていく。



「よし、できた!」

二人の協力もあってドレスが完成。

――――その名も《マリエル専用可憐服パーティードレス》だ。

自分で言うものなんだが、見事な出来栄えのドレスだ。

「ハルク君、時間が⁉」
「あっ、本当だ!」

ドレス作りは慣れない鍛冶師仕事。
気がつくと、けっこうな時間になっていた。

王宮での歓迎の宴の時間が迫っていた。
完成したドレスを、急いでマリエルに届ける必要がある。

「小僧、先に持っていけ! 鈍足なワシらは後で、王宮に向かう!」

「ハルク君、マリエル様を助けてあげて!」

「うん、それじゃ先に行ってくるね!」

ボクはドレスを【収納】して、工房を飛びしていく。

「マリエル、待っていてね。すぐに届けるから……」

こうして“少しだけ”急いで、ミカエル王宮へ向かうのであった。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...