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第61話:変装
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今日はマリエルがミカエル城に登城して、現ミカエル国王に謁見する日。
護衛のためにボクたちも超魔具を使い潜入することにした。
ミカエル城の正門が見える場所に到着する。
「ハ、ハルク君、本当に大丈夫なんですか、この格好で?」
「おい、小僧、バレたら打ち首どころで済まないぞ⁉」
厳重な警備の正門を目の前にして、サラとドルトンさんは心配していた。
何しろ他国の城への潜入は重罪。マリエルを警護するために来ました、なんて言い訳は通じないのだ。
「二人のその変装も完璧なんで、大丈夫です。あとはボクに任せてください!」
不安そうな二人を引き連れて、ボクは正門の警備所に向かう。城の中に入るためには、ここ検問を通過しないといけないのだ。
「ん?」
正門の警備兵がボクたちに気がつき、手に持つ槍がピクリと動く。彼らは歴戦の兵士で、怪しい賊は見逃さないのだ。
「あっ、これはハルベール卿! おはようございます」
「今日もお仕事ご苦労様です、ハルベール卿。どうぞ、お通りください!」
だがボクたちは“顔パス”で通ることに成功。そのまま城の中に入っていく。
「ハルク君、本当に顔パスで通れましたね⁉」
「おい、小僧。オヌシの変装している『ハルベール卿』とは、いったい何者なのじゃ⁉」
ひと気がないところで二人は訊ねてきた。
何しろボクたち通行証すらチェックされずに、顔パスだけで通過できたのだ。しかも従者の格好をしているサラたちも。
ボクの変装しているハルベール卿が、普通の騎士ではないと思い知ったのだ。
「実はボクの変装しているハルベール卿は、ミカエル王国の“外部監査騎士”なんです」
大国であるミカエル王国には“外部監査騎士”という役職がある。
仕事は組織内の汚職や問題を発見すること。内部組織による監査ではなく、関係のない第三者による監査の制度だ。
このハルベール卿は本来、聖教会の所属の騎士。聖教会は大陸各地に支部がある、大国並の権力を有している。
その聖教会とミカエル王国のパワーバランスを保つために、聖教会側から派遣された人物なのだ。
聖教会の発言力は高いため、ハルベール卿と従者は王城のほとんど場所に、自由に出入り可能なのだ。
「なるほど。そんな制度があったんですね。よく知っていましたね、ハルク君」
「ミカエル城の内部のことは、こっそり壁の中を散歩しながら見ていたからね。このハルベールさんの情報も知っていたんだ!」
ミカエル王国時代、基本的には地下鉱脈に籠っていたけど、たまに気分転換で秘密通路を散歩することもあった。
その時、城に出入りする人物のことを記憶していたのだ。ボクは一度見て聞いた情報は、基本的には忘れないのだ。
「なるほどな。“外部監査”ということは、アポなしで城や王宮の中を、自由に歩き回れるという訳か。従者であるワシらも」
「はい、そうです。今の二人は従者なので、城の中の人たちと、何も話さなくても怪しまれません!」
サラとドルトンさんは男性従者の格好をしている。二人とも実在する自分物で、ハルベール卿の部下の顔と格好だ。
「それにしてもハルク君の《怪盗百面相》は、凄すぎますね。こんな完璧な変装の術や魔道具の存在は、お婆様の魔道辞典にも書かれていませんでした」
《怪盗百面相》は顔と声だけはなく、身長や体型も実在するように変装できる。昨夜のうちに追加機能を調整しておいたのだ。
万が一、誰かに触られても違和感は与えない機能もある。
「ふむ。姿と声だけはなく、質感と存在感まで再現するとは、ハルクの“超魔具”は大賢者級の魔法並じゃのう」
「あっはっはっは……おそれいります」
サラとドルトンさんが褒めてくれるが、《怪盗百面相》にも欠点はある。
あまり激しい動きをすると、バレてしまう。あと匂いと気配までは、“まだ”再現できていない。だから外見的には完璧でも、無理な行動は要注意なのだ。
「ところで小僧。ハルベール卿本人の動きは、今日は大丈夫なのか?」
「はい、それは問題ありません。本人は休日です。王城に来る可能性はありません」
ハルベール卿のスケジュールは昨夜のうちに、聖教会の王都支部に潜入して確認済み。本人の姿を撮影録音する時にも、こっそり情報を調べていたのだ。
「なんと。聖教会の支部にも潜入していたのか⁉ まぁ、オヌシほどの男なら、忍び込めない場所など、この大陸にはなさそうじゃな」
ドルトンさんが呆れているとおり、ボクはけっこう潜入するのが得意な方。
目立たないように歩いたり、こっそり隠れるもの幼い時から慣れていた。
あと、なんか困った時は、地下通路とかサクッと掘れば、基本的にはどこでも潜入できるのだ。
「さすがですね、ハルク君。今はマリエル様のところに向かっているんですか?」
「そうだね。スケジュールによると、マリエルは今この城の控え室にいるはず。もうすぐ謁見の間で、現ミカエル国王に謁見するはずだ」
現ミカエル国王がどんな人か、ボクたちは知らない。
でも先日の外交官の態度を見た感じだと、あまりハメルーン国に友好的は人ではないのかもしれない。
だから謁見の間でマリエルに何か悪いことが起きてしまう……そんな予感がしていた。
「よし、もうすぐ謁見の間。行きましょう!」
こうして外部監査騎士の権限を最大限に利用して、ボクたちも謁見の間に同席するのであった。
護衛のためにボクたちも超魔具を使い潜入することにした。
ミカエル城の正門が見える場所に到着する。
「ハ、ハルク君、本当に大丈夫なんですか、この格好で?」
「おい、小僧、バレたら打ち首どころで済まないぞ⁉」
厳重な警備の正門を目の前にして、サラとドルトンさんは心配していた。
何しろ他国の城への潜入は重罪。マリエルを警護するために来ました、なんて言い訳は通じないのだ。
「二人のその変装も完璧なんで、大丈夫です。あとはボクに任せてください!」
不安そうな二人を引き連れて、ボクは正門の警備所に向かう。城の中に入るためには、ここ検問を通過しないといけないのだ。
「ん?」
正門の警備兵がボクたちに気がつき、手に持つ槍がピクリと動く。彼らは歴戦の兵士で、怪しい賊は見逃さないのだ。
「あっ、これはハルベール卿! おはようございます」
「今日もお仕事ご苦労様です、ハルベール卿。どうぞ、お通りください!」
だがボクたちは“顔パス”で通ることに成功。そのまま城の中に入っていく。
「ハルク君、本当に顔パスで通れましたね⁉」
「おい、小僧。オヌシの変装している『ハルベール卿』とは、いったい何者なのじゃ⁉」
ひと気がないところで二人は訊ねてきた。
何しろボクたち通行証すらチェックされずに、顔パスだけで通過できたのだ。しかも従者の格好をしているサラたちも。
ボクの変装しているハルベール卿が、普通の騎士ではないと思い知ったのだ。
「実はボクの変装しているハルベール卿は、ミカエル王国の“外部監査騎士”なんです」
大国であるミカエル王国には“外部監査騎士”という役職がある。
仕事は組織内の汚職や問題を発見すること。内部組織による監査ではなく、関係のない第三者による監査の制度だ。
このハルベール卿は本来、聖教会の所属の騎士。聖教会は大陸各地に支部がある、大国並の権力を有している。
その聖教会とミカエル王国のパワーバランスを保つために、聖教会側から派遣された人物なのだ。
聖教会の発言力は高いため、ハルベール卿と従者は王城のほとんど場所に、自由に出入り可能なのだ。
「なるほど。そんな制度があったんですね。よく知っていましたね、ハルク君」
「ミカエル城の内部のことは、こっそり壁の中を散歩しながら見ていたからね。このハルベールさんの情報も知っていたんだ!」
ミカエル王国時代、基本的には地下鉱脈に籠っていたけど、たまに気分転換で秘密通路を散歩することもあった。
その時、城に出入りする人物のことを記憶していたのだ。ボクは一度見て聞いた情報は、基本的には忘れないのだ。
「なるほどな。“外部監査”ということは、アポなしで城や王宮の中を、自由に歩き回れるという訳か。従者であるワシらも」
「はい、そうです。今の二人は従者なので、城の中の人たちと、何も話さなくても怪しまれません!」
サラとドルトンさんは男性従者の格好をしている。二人とも実在する自分物で、ハルベール卿の部下の顔と格好だ。
「それにしてもハルク君の《怪盗百面相》は、凄すぎますね。こんな完璧な変装の術や魔道具の存在は、お婆様の魔道辞典にも書かれていませんでした」
《怪盗百面相》は顔と声だけはなく、身長や体型も実在するように変装できる。昨夜のうちに追加機能を調整しておいたのだ。
万が一、誰かに触られても違和感は与えない機能もある。
「ふむ。姿と声だけはなく、質感と存在感まで再現するとは、ハルクの“超魔具”は大賢者級の魔法並じゃのう」
「あっはっはっは……おそれいります」
サラとドルトンさんが褒めてくれるが、《怪盗百面相》にも欠点はある。
あまり激しい動きをすると、バレてしまう。あと匂いと気配までは、“まだ”再現できていない。だから外見的には完璧でも、無理な行動は要注意なのだ。
「ところで小僧。ハルベール卿本人の動きは、今日は大丈夫なのか?」
「はい、それは問題ありません。本人は休日です。王城に来る可能性はありません」
ハルベール卿のスケジュールは昨夜のうちに、聖教会の王都支部に潜入して確認済み。本人の姿を撮影録音する時にも、こっそり情報を調べていたのだ。
「なんと。聖教会の支部にも潜入していたのか⁉ まぁ、オヌシほどの男なら、忍び込めない場所など、この大陸にはなさそうじゃな」
ドルトンさんが呆れているとおり、ボクはけっこう潜入するのが得意な方。
目立たないように歩いたり、こっそり隠れるもの幼い時から慣れていた。
あと、なんか困った時は、地下通路とかサクッと掘れば、基本的にはどこでも潜入できるのだ。
「さすがですね、ハルク君。今はマリエル様のところに向かっているんですか?」
「そうだね。スケジュールによると、マリエルは今この城の控え室にいるはず。もうすぐ謁見の間で、現ミカエル国王に謁見するはずだ」
現ミカエル国王がどんな人か、ボクたちは知らない。
でも先日の外交官の態度を見た感じだと、あまりハメルーン国に友好的は人ではないのかもしれない。
だから謁見の間でマリエルに何か悪いことが起きてしまう……そんな予感がしていた。
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