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プロローグ
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「ハァ、ハァ、、」
腕には多数の切り傷や裂傷、肩は銃で撃たれもう動かない。血を流しすぎたのか、視界がふらつき足に力が入らない。
「だめだ!立て!」
自らに叫び意識を鮮明にしようとする。が、全身から力が抜け糸が切れたように倒れ込む。
「仲間も、信じていたものも!愛していた人も!なにもかも!全てを失った!」
この戦争で多くの仲間を失った。そして自分が信じ戦っていたことが意味のないものだと分かった。そして、愛した人を失った。
「全て、あの王のせいだ、!」
脳裏によぎる卑劣でひきょうな笑み。心の中で黒くドロっとした物が広がったような気がした。
「……しゅうだ」
決意が固まると憎しみや憎悪が止めどなく溢れてくる。
「復讐だ」
俺から全てを奪ったあの奥に復讐をする。そう言葉にして決意したがそんな心とは裏腹に意識は薄れていく。
「あぁ、、また僕は何もできずに終わるのか」
そうして少年の意識は途絶えた。
彼女はいつも小麦畑にいた。その畑は大きく育った小麦でいっぱいで夕日の光を受けて黄金色に輝いている。その中に明るい金髪、それこそ小麦のような色をした髪をしている少女を見つけた。
「レーヌ!」
僕が名前を呼ぶとレーヌはゆっくりふりむいてニコッと笑った。
「今日も来たのね、そんなにこの小麦畑が好きなの?」
そう言って不思議そうな顔をして首をかじしげるのはレーヌ・アスター。この畑の所有者の娘でありこの町に住む下級貴族の一人娘だ。
レーヌの家族は貴族だからと偉ぶらず皆に平等に接しているため町の皆からも人気だ。
「うん、この畑も好きだよ。」
「畑も?他にも何かあるの?」
「まぁね、またいつか言うよ」
「気になる、、絶対だよ!」
そう言ってむー!と今にも爆発しそうなふくれっ面をしながら小指を差し出してきた。
「約束しよ、?」
こういう姿を見るとやはり思う。僕はレーヌが好きだ。小さい頃からずっと一緒にいてこの気持ちに気付いたのは最近のことだ。
子どものような無邪気な笑顔、誰にでも手を差し伸べられる優しさ、かわいらしい顔立ち、全部が好きだ。
だから実は小麦畑を見に来ているわけではなくレーヌと会うために来ているのだ。
それから僕とレーヌは他愛もない会話をした。家で育てている花がきれいに咲いたとか、川で釣りをしたら大きな魚がつれたとか、こんな話でもレーヌとするととても楽しい。
話し込んでいると辺りが暗くなっており、帰る時間になっていた。
「もうそろそろ、帰る時間だね。」
「そうだね、家まで送るよ。」
「あら、私よりも年下なのにかっこいいこと言うのね」
「うるさい、行くぞ」
「拗ねないでよ~!待って~!」
情けない声を上げながら後を追ってくるレーヌを見て果たしてほんとに年上なのか、と疑問に思う。
レーヌは僕より2つ年上だ。だが年上の余裕?というものをレーヌから感じたことがなく僕にとっては放っておけない姉のような感じだ。
薄暗い田舎道を歩いてレーヌの家についたがレーヌは立ち止まったままで反応がない。
「どうしたんだ?」
そう聞いても反応がないので体を揺すってみるとやっと返事が帰ってきた。
「あぁごめんね!ぼーっとしてたよ~!」
レーヌは何かを取り繕うように慌てて返事をする。
少し疑問を抱きつつもこの人のことだからほんとにぼーっとしていたのだろうと結論づけてしまった。
それが全ての間違いだった。
「じゃあバイバイ!またねファンテ!」
「うん、また明日」
この時にレーヌの異変に気づいていれば。あんなことにはならなかったのだろうか。
腕には多数の切り傷や裂傷、肩は銃で撃たれもう動かない。血を流しすぎたのか、視界がふらつき足に力が入らない。
「だめだ!立て!」
自らに叫び意識を鮮明にしようとする。が、全身から力が抜け糸が切れたように倒れ込む。
「仲間も、信じていたものも!愛していた人も!なにもかも!全てを失った!」
この戦争で多くの仲間を失った。そして自分が信じ戦っていたことが意味のないものだと分かった。そして、愛した人を失った。
「全て、あの王のせいだ、!」
脳裏によぎる卑劣でひきょうな笑み。心の中で黒くドロっとした物が広がったような気がした。
「……しゅうだ」
決意が固まると憎しみや憎悪が止めどなく溢れてくる。
「復讐だ」
俺から全てを奪ったあの奥に復讐をする。そう言葉にして決意したがそんな心とは裏腹に意識は薄れていく。
「あぁ、、また僕は何もできずに終わるのか」
そうして少年の意識は途絶えた。
彼女はいつも小麦畑にいた。その畑は大きく育った小麦でいっぱいで夕日の光を受けて黄金色に輝いている。その中に明るい金髪、それこそ小麦のような色をした髪をしている少女を見つけた。
「レーヌ!」
僕が名前を呼ぶとレーヌはゆっくりふりむいてニコッと笑った。
「今日も来たのね、そんなにこの小麦畑が好きなの?」
そう言って不思議そうな顔をして首をかじしげるのはレーヌ・アスター。この畑の所有者の娘でありこの町に住む下級貴族の一人娘だ。
レーヌの家族は貴族だからと偉ぶらず皆に平等に接しているため町の皆からも人気だ。
「うん、この畑も好きだよ。」
「畑も?他にも何かあるの?」
「まぁね、またいつか言うよ」
「気になる、、絶対だよ!」
そう言ってむー!と今にも爆発しそうなふくれっ面をしながら小指を差し出してきた。
「約束しよ、?」
こういう姿を見るとやはり思う。僕はレーヌが好きだ。小さい頃からずっと一緒にいてこの気持ちに気付いたのは最近のことだ。
子どものような無邪気な笑顔、誰にでも手を差し伸べられる優しさ、かわいらしい顔立ち、全部が好きだ。
だから実は小麦畑を見に来ているわけではなくレーヌと会うために来ているのだ。
それから僕とレーヌは他愛もない会話をした。家で育てている花がきれいに咲いたとか、川で釣りをしたら大きな魚がつれたとか、こんな話でもレーヌとするととても楽しい。
話し込んでいると辺りが暗くなっており、帰る時間になっていた。
「もうそろそろ、帰る時間だね。」
「そうだね、家まで送るよ。」
「あら、私よりも年下なのにかっこいいこと言うのね」
「うるさい、行くぞ」
「拗ねないでよ~!待って~!」
情けない声を上げながら後を追ってくるレーヌを見て果たしてほんとに年上なのか、と疑問に思う。
レーヌは僕より2つ年上だ。だが年上の余裕?というものをレーヌから感じたことがなく僕にとっては放っておけない姉のような感じだ。
薄暗い田舎道を歩いてレーヌの家についたがレーヌは立ち止まったままで反応がない。
「どうしたんだ?」
そう聞いても反応がないので体を揺すってみるとやっと返事が帰ってきた。
「あぁごめんね!ぼーっとしてたよ~!」
レーヌは何かを取り繕うように慌てて返事をする。
少し疑問を抱きつつもこの人のことだからほんとにぼーっとしていたのだろうと結論づけてしまった。
それが全ての間違いだった。
「じゃあバイバイ!またねファンテ!」
「うん、また明日」
この時にレーヌの異変に気づいていれば。あんなことにはならなかったのだろうか。
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