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3.私の侍女は有能
屋敷を抜け出し、一箇所旦自分の屋敷に戻った。だが追手が来る事も考え、誰にも見つからないように自分の部屋に外から入る。
警備の問題をいう気はないが、簡単すぎではないかと思ってしまう。辺境伯の屋敷に忍び込む勇気があるものは、いないと考えてもよいのだがこのままではまずいだろう。
「ディミドラ様、おかえりですか」
音を立てずにいたのだが、自分付きの侍女がドア越しに声をかけてきた。
「・・・」
周りに誰かいたら困るので返事をしようか迷う。
「周りには誰もおりません」
彼女はディミドラの心配を察してきた。
「入って」
ディミドラはドアを開けて侍女を招き入れた。
「どうしてわかったの?」
「私は獣人ですから・・・ディミドラの匂いでわかります。けれど今回は別の匂いも混じっているようですが・・・襲われでもしましたか?」
彼女はズバリといいあててしまう。
「・・・匂いでわかっちゃうのね。・・・詳しいことはまた。今は逃げないと・・・奴が王都に帰るで、数日姿を消すつもりだから、あとは任せたわ」
ディミドラは服を着替えて武具を所持し、髪をまとめて外套を被って隠した。
「もしかして、奴とは騎士団の団長のことですか?先刻まで旦那様とお会いになっていましたが」
数少ない情報で察するとは、私の侍女はかなり有能だ。
「匂いでそこまでわかるの?」
自分ではわからないが、獣人は鼻がいいからわかるのだろう。
「はい。しっかりマーキングされておりますので」
マーキング・・・嫌な響きだ。
「どうしたら匂いがわからなくなるかしら?」
獣人の対処は獣人に聞くべきだと考え、助言を求める。
「匂いには別の匂いですね。獣人が嫌いな香りの木々やハーブがある場所か、香辛料をより使う料理街あたりが隠れるにはよろしいかと」
彼女の答えにディミドラは満足して笑みを浮かべた。
「さすが私のルルね・・・。参考にするわ」
「私の主人はお嬢様ですから、他言は致しません」
彼女が私の侍女なのは、私が拾ってきたからだ。数少ない獣人の彼女は、貴族でないために、獣人を増やすための道具にされそうになり、王都から獣人がいないこの辺境地へ逃げて来たのだ。
彼女を拾ったのは3年前。
あの日、母が亡くなってから、私は辺境伯の娘として自分の身を守れるようになるため、毎日鍛錬を開始していた。
鍛錬を開始したのは助けられた事が影響してなのもあるが、母を失った事を紛らわせるためでもあった。
山道でのロードワークが日課になり、いつもの道を走っているとだいぶ衰弱した様子で彼女は倒れていた。
彼女をそのままにはしてはおけないので、身体強化して抱えて屋敷に連れ帰り、誰にも見つからないように自分の部屋で彼女を匿った。
出会った頃のルルは私よりも幼く見えて、見つかればすぐに孤児院に連れて行かれると思ったのだ。
だが段々と回復していった彼女は、私よりも5つも年上だと言った。
元気になると、世話をした私に恩を返すというので、父に屋敷に置いて私の侍女にして欲しいとお願いした。
当時、黙って匿っていたので父からはかなり怒られた。父は私の侍女にするならばと、ルルに条件をつけ、うちの騎士達と戦って10連勝しろといった。
やっと元気になった彼女に、それも騎士達とだなんて横暴だと思った。
だが、ルルは父の条件をのんで、10連勝を成し遂げたのだ。
父には最初からルルが獣人とわかっていたからこその条件だったようで、無理難題ではないと知った。私は後から獣人であることを知らされ、倒れていた経緯を聞いたのだ。
それからルルは私を主人として、有能な侍女ぶりをはっきしているのだった。
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