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16.出迎え
しおりを挟むシェリー様とキール様の元に向かうと、今度はシエル様がキール様に平謝りしていた。
「ごめんってば、そんなに怒らないでよ。謝ってるじゃないか」
謝ってるわりには、そんな気がしない話し方だ。
「こいつに支えてもらっているからって、突き飛ばす事ないだろうがッ、仮にもお前のために庇ってやって、できた怪我みたいなもんなんだからな。感謝するなら、さっさとお得意のを治療しろ」
キール様は地面に座り込み、シエル様を怒っている。
「わかったよー。そんな怒鳴らないでよ。ミルが見てるでしょー。ぼくは怒鳴られキャラじゃないよ」
シエル様は渋々といった感じで、しゃがんで治癒魔法をキール様に施す。
「俺だって、怒鳴りキャラじゃないが・・・何処に怪我した片われの兄を突き飛ばす奴がいるんだよ・・・。手を出す前に口があるんなら・・・」
キールが悪態をつきながら、視線をあげるとシルフィとバッチリ目が合った。
「シルフィ嬢・・・」
キール様は気不味そうな顔をされる。怪我をして帰って格好悪いとでも思っていそうだ。
シルフィは、キール様の側に寄り同じ目線になるようにしゃがんだ。
「キール様、おかえりなさいませ。シェリー様と出迎えようと、お邪魔させていただいてました。怪我は仲間を庇ったからだと聞いていますが、痛みますか・・・?」
「・・・いや・・・大丈夫だ。大したことない」
キール様は俯きながら答えられる。
「あっ、そうなんだ、よかった。なら気にしなくて・・・・・・あっ、ごめん睨まないで」
シエル様がキール様の言葉に反応するが、キール様はシエル様の言葉を遮るように、睨みつけた。
そのやりとりを見て、ついシルフィは笑ってしまう。
シルフィが笑った事で、キールはシルフィの顔を凝視して段々頬が赤くなっていった。
「あっごめんなさい。いつものキール様と違うから、つい」
いつものキール様より、シエル様と接するキール様の方が戯れているからだろうか、歳相応の青年に見えた・・・。
「なになに、それって普段はキールはかっこつけてるから、こんなに幼いとは思わなかったって?」
シエル様が悪い言い方で、シルフィのいいたいことを湾曲して伝える。
「その言い方は・・・ちょっと、兄弟間での素のキール様も新鮮だなと思っただけで」
シルフィは上手く伝えられなかった。可愛いらしいとも思ったし、そんなキール様のギャップも好きだなんて言えないから困った。
「もういいから・・・シエル、早く治療」
「はいはい、チョチョイと治すよ。大した怪我じゃないしね」
シエル様はそういうと、本当に数分で怪我を治してしまった。そして最後はドヤ顔をしている。後ろにいた女性に心配ないから気にしないように言い、一緒に居なくなってしまった。
座り込んでいたキール様が立たれて、服を整えらる。その様子をじっと見ながら、シルフィは先程のシリウス様の厳しめの発言を思いだしていた。怪我なんて治せるからの発言だったのかなと・・・。
そうだとしても・・・シルフィには、受け入れない感情が先程と同様広がってしまい、俯く感じになった。
キール様が何も言わないシルフィにどうかしたかと問いかけてくる。
「すまないな・・・カッコ悪い所ばかりみせた」
「そんな事はありません」
「だが・・・こんなところを見て、幻滅したのではないのか・・・?先程も黙っていたようだし」
「いえ、そうではなくて・・・キール様のお父様が先ほど帰ってこられた時に、仲間を庇っての怪我でも、怪我を負わず仲間を助けられなかったのは奴の技量の無さだと厳しめに言われていたのを思い出して・・・。それに治癒できるから心配もされないのかなと、それでも私は怪我をした人に対して冷淡すぎて、もやもやしてしまって・・・うまく言えませんが、キール様を心配もしない様子に納得できないといいますか・・・」
「それは・・・」
キール様は片手で口元を隠し恥ずかしそうに口籠もる。
その様子を見ていたシェリー様が近寄ってこられて、キール様は嬉しい時は、口元が緩まないように隠す癖があると教えてくれた。
そして、シェリー様はお兄様のために怒ってくれてありがとうとシルフィに告げた。
シルフィはシェリー様にそう言われて、自分の胸のもやもやの原因がなんだったのかしっくりきて、収まった。
「お兄様、せっかくシルフィ嬢が来てくれたのだから、着替えて来て下さい。ちょっとお話があるんです。大切な相談が・・・」
シェリー様はキール様に着替えを勧め、場所を指定し早く来るように促すのだった。
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