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42.湖
しおりを挟むキール様は、綺麗な湖のある場所で馬を止めた。先にキール様が降りて手を差し出してくれる。
シルフィは、キール様の行動の一つ一つに照れ臭く気持ちになった。シルフィの腰をつかんで下ろしてくれようとしたのだが、シルフィは抱えられる事になれずキールの肩に手をおいてしまった。
キール様は、シルフィを抱えたが、下ろさず、そのまま横抱きにして見つめてきた。
「キール様・・・あの、下ろしてもらえますか?歩けます・・・」
シルフィは恥ずかしくて、下ろすようにお願いする。
「嫌か?」
キール様は、残念そうな顔で見てきた。
「いえ・・・嫌ではないですが・・・恥ずかしいです」
キール様と密着しているため、落ちつかない。
「ここは誰もいない・・・恥ずかしがることはない」
「ですが・・・」
「やっと婚約もできた・・・触れ合っていても誰にも咎められはしない。あちらまで運ばせてくれ」
キール様は、譲る気はないようだ。あちらと言われ大きな木に視線を向けられた。
「はい・・・」
そこ迄の羞恥と思って了承の返事をする。
キール様はしっかりとシルフィを抱えて、木で影になっている所に降ろしてくれた。
「ここは、よく母が来ていた所らしい。今の時期は湖が澄んでいて綺麗だと聞いて、連れて来たかったんだ」
「本当に綺麗ですね・・・」
「ボートでもあればよかったんだが、さすがに管理はされていない湖だからな・・・危険にはさらせないから、見ているだけにはなるんだが一緒に見たいと思ったんだ」
「連れて来てもらって嬉しいです。こういう所は腕のたつ方とでないとこれませんから」
魔物は定期的に討伐されてはいたが、いないわけではないため、街の外には護衛なしで出かける事は基本あり得ない。自分の腕が立てばいいが、シルフィにはその術はない。
「気にいってもらえたなら良かった。シルフィの嬉しい顔を見れて、俺も嬉しい・・・。その顔は誰にも見せたくないくらいだ」
キール様と思いを確かめ合ってから、今まで言えなかったからと素直に気持ちを伝えてくれるようになった。
時と場所を考えずのため困ってしまう時もあるが・・・。
今は誰の目もないため、いつもよりさらにキール様の視線は甘い気がした。普段はクールで、実直で、不器用なところもあるけれど頼りになる。
最近では、その印象はだいぶ変わったように思う。キール様はシルフィをとことん甘やかしてくるからだ・・・。
食事の時は、湯気がでていたら必ず火傷しないように注意が入るし、嫌いなものはないかと聞いてきたり、歩く時もエスコートしながら気を配ってくれ、つまずかないように注意してくれる。
人目がないと先程のように抱えたがる・・・。
シルフィの屋敷でそれらをやらかしていて・・・姉達はちょっと引いていた。大事にはしてくれているようだけれど、2人の時にして頂戴と注意を受けていて、申し訳ないけれどその通りなので、頷いておいた。
だからか・・・2人きりの時は困る・・・。甘すぎて・・・時々子ども扱いされているようにも思ってしまう。
だから、今日は少しでも子ども扱いされないようにと・・・服装は少し大人っぽくしたつもりだ。シンプルで肌触りのいい生地のストライプ柄のブラウスに、色は大人しめの濃い青色のプリーツスカートにブーツ。髪は巻いてハーフアップにしていた。
だが、それが逆効果だったのか、違う方向に作用したようだった。
「今日はいつもと違うな・・・いつもより、惹きつけられる気がする」
シルフィが動くたびにプリーツが揺れ目で追ってしまうようだ。
「このスカート、動くと綺麗で、回ると花みたいなんですよ」
シルフィはキールの前で回ってスカートをなびかせてみた。
「まるで花の妖精の様だな・・・」
キールはつぶやく。
「花と言えば、さっきから花の甘い香りがしている気がするんですが・・・お花畑でもあるんでしょうか」
「・・・そうか?俺は何も匂わないが、探してみるか?」
「はい。お花畑みてみたいです!探してみましょう」
シルフィは微かに香る甘い匂いを頼りに、キール様と手を繋いで散策し始めるのだった。
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