32 / 117
31.初の獣人の客人
しおりを挟むリンジェーラは先に屋敷に帰り、父達が帰ってくるのを待った。予定の時刻になり、父は師団長と、ゾディアス様を連れて帰ってきた。
「おかえりなさい父様。フィラデル様、ゾディアス様お待ちしていました。中へどうぞ」
リンジェーラは父と師団長、ゾディアス様を出迎え、中へ案内する。
ゾディアス様はまだ嗅覚は戻られないようで、屋敷内でも平気そうにしている。普通なら気分が悪くなるだろうに・・・だが薬の効果が切れたらどうするつもりなのだろうか。
効果が切れる前に、話をつけておかなくてはとリンジェーラは考えながらゾディアス様に視線を向けた。
ゾディアス様はキョロキョロとあたりをみられており、リンジェーラと視線があうと、照れ臭そうにされる。
「すまないな、珍しくてつい・・・」
ゾディアス様は自分の行動に注意がくるのだろうと思っていたみたいで謝られる。
「謝る事はないですよ。ここに来た獣人はゾディアス様が初めてらしいので、普通の反応だと思います。薬が切れる前には話を終わらせましょう。でないと気分が悪くなりますからね」
リンジェーラはゾディアス様に苦笑いした。
そのまま夕食の準備がしてある部屋へ案内して、まずは食事を皆んなで食べた。ゾディアス様は慣れないが、味は美味いといい食べられている。嗅覚が戻れば、さらにおいしいと思うのだが残念だ。
嗅覚が戻れば、気分が悪くなり、食事どころではなくなるのだがそう思わずにはいられなかった。
食事が終わった後で、応接室に移動しフィラデル様が話し出す。
「それで、本題だが・・・今日の出来事で、既に噂が広まり出した。アルも聞いたんだろう?」
フィラデル様は、父に話を振る。
「ああ、聞いている。部下が噂を話してくれた。だが、魔導師団の団員達が訂正してたりするともね・・・。これはフィルの事前の説明のおかげだな。感謝するよ。うちの部下達はリンジーには既に相手がいる事に残念そうな感じだったよ。うちの部下達は若いのが多いからね」
父の部下達の中にもリンジェーラを誘ってくる人がいた。だが決してリンジェーラは誘いは受けても、2人きりになる事はしなかった。
「リンジーがいつも関わる人達からの理解は問題なさそうだが・・・問題は女性達だな。それと、関係が偽りだとしても2人はこれから夜会にはパートナーとして、必要時は参加してもらわないといけないからね。ゾディアス殿もそのつもりだろう」
これは聞いていたし、想定範囲内だ。
「それに関しては問題ないが・・・彼女は夜会にはあまり参加したくない様だ」
ゾディアス様に前に言われた時に、返事を嫌がる感じでしてしまったからだろう。ゾディアス様はリンジェーラの方を伺うように見てきた。
「なるべく必要のないものには出たくありません。ゾディアス様には毎回薬を飲んで頂かなくていけませんし、パートナーがゾディアス様なのが嫌とかではなくて・・・夜会に行くと他の男性ともダンスを踊らないといけないのが嫌なだけです」
男性と踊ると、身体に触れられるため不快になる・・・。獣人は匂いもあるから近づいてはこないが、人族は違う。リンジェーラが、不快になる視線を向けてきたり、触れてきたりと、貴族令嬢にはしないだろう事をされるので嫌いだった。
リンジェーラの血筋はきちんと貴族なのだが、市井で生活をしていたというのは知られているため、手が出せる存在、軽く扱っても問題ないと思う人が多かった。だから極力夜会には参加していなかったのだ。
父や兄がパートナーでも、誘われたら基本断れない。婚約者か獣人がパートナーであれば、婚約者や獣人が優先されるため断る事が出来るのだ。
「ならば、今回は問題ないだろう・・・独占欲という事で、誘われたら自分が間に入る。もちろん誰が誘ってきてもだ。だが、俺と踊るのは我慢してくれ」
ゾディアス様はリンジェーラに苦笑いしながら言ってくる。
「ゾディアス様の視線や行動が、不快なのでなければ・・・我慢いたします」
リンジェーラはにっこりと、ゾディアス様に笑顔をむけ、ゾディアス様は努力すると了承されるのだった。
33
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています
六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった!
『推しのバッドエンドを阻止したい』
そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。
推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?!
ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱
◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!
皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*)
(外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)
【電子書籍化・1月末削除予定】余命一カ月の魔法使いは我儘に生きる
大森 樹
恋愛
【本編完結、番外編追加しています】
多くの方にお読みいただき感謝申し上げます。
感想たくさんいただき感謝致します。全て大切に読ませていただいております。
残念ですが、この度電子書籍化に伴い規約に基づき2026年1月末削除予定です。
よろしくお願いいたします。
-----------------------------------------------------------
大魔法使いエルヴィは、最大の敵である魔女を倒した。
「お前は死の恐怖に怯えながら、この一カ月無様に生きるといい」
死に際に魔女から呪いをかけられたエルヴィは、自分の余命が一カ月しかないことを知る。
国王陛下から命を賭して魔女討伐をした褒美に『どんな我儘でも叶える』と言われたが……エルヴィのお願いはとんでもないことだった!?
「ユリウス・ラハティ様と恋人になりたいです!」
エルヴィは二十歳近く年上の騎士団長ユリウスにまさかの公開告白をしたが、彼は亡き妻を想い独身を貫いていた。しかし、王命により二人は強制的に一緒に暮らすことになって……
常識が通じない真っ直ぐな魔法使いエルヴィ×常識的で大人な騎士団長のユリウスの期間限定(?)のラブストーリーです。
※どんな形であれハッピーエンドになります。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
【恋愛】目覚めたら何故か騎士団長の腕の中でした。まさかの異世界トリップのようです?
梅花
恋愛
日下美南(くさかみなみ)はある日、ひょんなことから異世界へとトリップしてしまう。
そして降り立ったのは異世界だったが、まさかの騎士団長ベルゴッドの腕の中。
何で!?
しかも、何を思ったのか盛大な勘違いをされてしまって、ベルゴッドに囲われ花嫁に?
堅物騎士団長と恋愛経験皆無の喪女のラブロマンス?
身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される
絵麻
恋愛
桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。
父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。
理由は多額の結納金を手に入れるため。
相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。
放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。
地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる