獣人の番!?匂いだけで求められたくない!〜薬師(調香師)の逃亡〜【本編完結】

ドール

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番外編

後日談:モテる旦那の妻たち


 お腹の膨らみが目立ち始めてから数ヶ月、仕事を減らしてはいるが、納品のために未だリンジェーラは魔道師団の詰所に来ていた。

 いつもならゾディアス様の出勤に合わせて一緒に行き、時間になったら迎えがくるのだが、今日はゾディアス様が早く出勤のために別行動中だ。


 しかし、今日はさらにいつもと違う事に、魔道師団の詰所につくと師団長室に通されたと思ったらディミドラがいた。


「リンジー、遅かったわね。待ってたのよ」

 ディミドラも膨らみが目立ってきたお腹を撫でながらリンジェーラを出迎える。

「デラも来ていたのね。でもどうして魔道師団に?」


「レナードと来たんだけど、騎士団にいたら穢れるって言われて、こっちで待つように連れてこられたの。飢えた猛獣たちだらけだからですって」

 ディミドラは思い出すように笑った。


「自分が1番猛獣でしょうに・・・。でも団長が魔道師団にデラをまかせる方が私は驚きだわ」


「そう?お姉様の旦那さんが師団長だし、信頼はしているからだと思うんだけど・・・」
 
 そういえば、忘れていたが2人は義兄、義弟だったなとリンジェーラはあの出来事を思い出した。


「それでも前科があるしね・・・・・・まぁ団長もちょっとは成長したのかしらね」

 リンジェーラは今までの団長の番に対する執着と、ディミドラにが絡む事による嫉妬からの自分への言動を振り返る。


「リンジーは相変わらず団長には厳しいね」


 少しの変化てはいえ、団長が変わる事があるのかと疑っているといつの間にか師団長のフィラデル様が側に来ていた。


「フィラデル様もご存知の通り、団長と私は犬猿の仲なので」


「そうだね。だが彼もだいぶ丸くはなっていると思うよ。私と妻の仲を取り持ってくれたくらいにはね」


「まあ、一連の流れは見てましたが・・・優しさとは違う気がしますけどね」
 フィラデル様と奥様が仲違いしていたのを、団長は強引に解決しようとした。それにあの時団長はじれったいんだと述べていたので優しさだけでの行動では決してないだろう。


「私の妻に振り回された末に、面倒になったが大半でしょうが・・・少しは優しさが入っていたのは確かですよ」


 そうフィラデル様は言い、今の幸せが団長のおかげだと感謝を口にした。最近のフィラデル様は本当に幸せそうだ。


「フィラデル様は人が良すぎますね・・・悪い人に騙されないようにして下さい」


「私の事をそういうのは、妻とリンジーくらいですよ」
 なぜかフィラデル様はにこやかに笑った。


「リンジーもキャサリン様も純粋すぎるんだから」
 ディミドラがため息をつきながら、何故か哀れむような目をしていた。
 
 そこに丁度ノックの音と共に名前がでたフィラデル様の妻、キャサリン様が現れる。


「あなた?そろそろランチの時間だけど・・・・・・いい度胸ね」

 何やらキャサリン様は不機嫌そうな顔をした。 


「もうそんな時間か、キャシーが来てくれるから規則正しく食事がとれるね。そろそろ君達も自分の夫を迎えに行ってランチにするといいよ。喜ぶから」

 フィラデル様はキャサリン様の最後の言葉は気にせず、キャサリン様を出迎えると、こちらに退室を促した。


「そうですね。騎士団のランチ時間は少し先ですけど、キャサリン様がこられましたし、お邪魔でしょうから私達は失礼しますね」

 
 ディミドラは素早く椅子から立ち上がると、ドアを開けてくれているフィラデル様に促されるようにリンジェーラの手を引いて部屋を出る。

 部屋のドアが閉まる間際、キャサリン様の怒ったような声が聞こえた後ソファに倒れたような音がしてドアが閉まった。

 そして場にそぐわない淫靡な音が気こえたかと思えば、すぐに音が遮断されたかのような静寂になる。


 
「あぶないあぶない。キャサリン様に誤解を与えたら火の粉が飛んじゃうわ」

「火の粉?私まだキャサリン様に挨拶した事なかったから挨拶したかったんだけど・・・・・・フィラデル様もデラも急かすんだもの」 
  

「もうリンジーったら。師団長の奥さんでもあるけど、団長のお姉様よ?旦那の部屋に妊婦とはいえ女が2人いるだけで嫉妬するくらい独占欲も強い人なんだから・・・挨拶は師団長が紹介してくれた時にしなさいね」


「・・・・・・なるほど。そうね団長の血筋と思えば、さっきのは気分のいいものではないわね。私も気をつけるわ」


「ええ、それがいいわ。レナードの妻の私にも嫉妬するくらいだし。獣人女性の束縛も男性に負けず劣らずだから、お互い気をつけないとね」

 ディミドラは既に苦労しているようで、リンジェーラにも注意を促すのだった。

 そして今日は暑いわねと、他愛ない話をしながら騎士団の訓練所に近づけば、やはり鍛錬をする彼らはもっと暑いのか、上半身裸の獣人達がちらほらいた。リンジェーラは暑い中、令嬢達の見学もいる中でよく脱ぐなと思ってしまう。


 だかゾディアス様も例外ではないようで、団長と並んでタオルを首にかけて一休みしている所だった。


「ねぇ・・・リンジーはあの格好みてどう思う?私はちょっとムカつくけど、やっぱりいい身体してるなって思うのよね」

 団長もゾディアス様もさすがというほどの肉体美を晒していて、ディミドラの意見には頷いてしまう。

「同感だわ。けど、男だけならまだしも、見学者がいるのだからやめてほしいわね。私のゾディアス様が確実に減るわ」


「本当ね・・・減っちゃうわ。でも昼間に見る肉体も悪くないわね」
 ディミドラはほんのりと頬を染めながら団長を見るのだった。


 しかし団長達を見ていたのは自分達だけではないのだと思わせるように、自分達に向けられた言葉が耳に届く。



「団長達って本当に頼りになりそうな素敵な身体してるわよね」
「本当に。あの厚い胸板を体感してみたいわ」
「奥様達は妊娠中みたいだし、夜はお寂しいんじゃないかしら」
「そうよね。私なら喜んでお慰めしてあげるのに」
「誘ってみたら今なら可能性あるかも」
「私は団長さんに声かけてみようかしら」


 などと好き放題に話していた。彼女達からはリンジェーラ達が見えているはずなので、これは挑発ととらえていいだろう。

 しかしリンジェーラはいくら煽られようとこういうのは慣れっこなので、いつも無視をすることにしていた。



 だが、ディミドラは違ったようで、挑発に対して受けてたつというように笑みを深くして、団長を睨むようにして殺気を放ち、団長に自分の存在を認識させた。


 団長は視線をディミドラに向け、殺気を向けた相手がディミドラだとわかると、とても殺気を向けられているとは思えないほどの笑みを浮かべる。


 団長はたとえ殺気でも、ディミドラからの視線ならなんでも嬉しいんだなとリンジェーラは感心しながら、その横のゾディアス様に視線をやれば、ゾディアス様も此方を見ていて視線が絡まり、なんだか恥ずかしくなってしまった。


「気づいたけど、どうお仕置きしようかしらね」
 だが、ディミドラはリンジェーラとは違い団長に対して何やら納得できなかったようだった。


 いったい何に対してかと思惑する間もなく、気づけば団長がディミドラの側までやってくる。

「迎えに来てくれたんだな。すぐに解散するから、待っていてくれ」

 
「早く服を着て、身なりを整えてから来てちょうだい」
 ディミドラは冷たく団長に言い放った。


「・・・どうした。不機嫌なようだが」
 団長はディミドラの頬に触れようと手をのばす。

「裸で近づかないでちょうだい」
 だがディミドラは触れられないように一歩下がった。

「毎日見て触れているだろう」

「ここは屋敷じゃないの」

「・・・だからダメなのか?」
 団長は理解できないという表情でディミドラをみている。女心がわからない団長にはやはり助言が必要なようだ。
  

「団長の前だけで見せるデラの姿を皆んなが見ているとしたら、と今の自分の立場を置き換え考えてみて下さい」


「何を言ってる。見せるわけが・・・・・・・・・」

 団長は気づいたのか、自分の姿を見た後にまわりも見回した。


「そうか・・・嫉妬とは、俺の妻は可愛いな」
 団長は口元に手をやり、にやけるのを隠す仕草をした。

「だが、俺の全ては妻であるお前のものなのだから見せつけてやればいいだろう」 
 そういいディミドラの手を引いて自身の胸筋に触れさせた。


「だから・・・・・・私は欲張りだから見せたくないの。独り占めしたいの。いいからさっさと服を着てきなさい」
 ディミドラは強引な団長につい本音を言ってしまったようで、恥ずかしさからか、言葉とは裏腹に団長に抱きついていた。


「わかった。なら着替えを手伝ってもらおうか」
 団長はディミドラの行動に満足そうな笑みを浮かべると、そのままディミドラを抱えて行ってしまう。

 そんな2人の姿が見えなくなるころには、リンジェーラをゾディアス様が迎えに来たのだが、ゾディアス様は既にきちんと服をきていたため、見逃してあげたリンジェーラなのであった。




 















 
 
 
 


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