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偽りの断罪
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第一章 偽りの断罪
「イザベラ・フォン・ヴァイスハイト! 貴様との婚約を、今この場を以て破棄する!」
王宮の絢爛たる夜会、その喧騒を一瞬で凍りつかせたのは、第一王子エドワードの声だった。彼の隣には、庇われるようにして男爵令嬢リリアが涙を浮かべて佇んでいる。彼女の儚げな美しさは、今宵も多くの同情を集めているようだった。
イザベラは、燃えるような赤い瞳をゆっくりとエドワードに向けた。豪奢なドレスに身を包み、背筋を伸ばしたその姿は、いかなる時も誇り高いヴァイスハイト侯爵家の令嬢そのものだった。
「理由をお聞かせ願えますか、殿下」
「ふん、白々しい! 貴様がリリアにした数々の嫌がらせ、もう我慢ならんのだ! リリアは毎夜、貴様の陰湿な仕打ちに涙しておるのだぞ!」
エドワードの言葉に、周囲から「やはり悪役令嬢だ」「可哀想なリリア様」といった囁きが聞こえてくる。イザベラは、その派手な美貌と、何事にも妥協しない完璧主義な性格から、社交界では「悪役令嬢」と陰で呼ばれていた。身に覚えのない罪状だったが、弁明する気は起きなかった。この茶番に付き合うのは、もううんざりだったのだ。
「……承知いたしました。殿下のご決断、謹んでお受けいたします」
イザベラは深く淑女の礼をすると、静かに踵を返した。その背中には、エドワードの勝ち誇ったような顔と、リリアの怯えたような、それでいてどこか満足げな微笑みが突き刺さるようだった。
(これで、ようやく解放される)
胸に去来したのは、意外にも安堵の思いだった。王太子妃としての重圧、周囲からのあらぬ噂、そして何より、自分を理解しようともしない婚約者。それら全てから解き放たれるのだ。
イザベラは、一筋の涙も見せず、夜会の会場を後にした。
第二章 予期せぬ来訪者
婚約破棄から数日後、イザベラは実家のヴァイスハイト侯爵領に戻っていた。領地の経営や学問に没頭することで、心の傷を癒そうとしていた。
そんなある日、父であるヴァイスハイト侯爵が、珍しく緊張した面持ちでイザベラの部屋を訪れた。
「イザベラ、近々、隣国シルヴァランド公国のアレクシス公爵が、我が領を視察に訪れることになった」
「アレクシス公爵……あの『氷の公爵』と名高い?」
アレクシス・フォン・シルヴァランド。若くして公国を治め、その冷徹なまでの手腕で国を豊かにしたと評判の人物だ。しかし、その無表情と寡黙さから「氷の公爵」と呼ばれ、恐れられてもいた。
「そうだ。公爵は、我が領の特産品や治水事業に興味をお持ちだとか。お前も、もてなしの準備を手伝ってほしい」
「はい、お父様」
イザベラは、少しだけ胸が騒ぐのを感じた。アレクシス公爵とは、数年前の国際会議で一度だけ遠目に見かけたことがある。その怜悧な美貌と、他者を寄せ付けない厳粛な雰囲気は、今でも鮮明に記憶に残っていた。
数日後、アレクシス公爵の一行がヴァイスハイト領に到着した。黒髪に深い青の瞳を持つ公爵は、噂に違わぬ冷たい美貌の持ち主だった。しかし、イザベラが領内の施設を案内すると、彼は意外にも熱心に耳を傾け、時折鋭い質問を投げかけてきた。
「この水路の設計は、実に見事だ。細部まで計算され尽くされている」
公爵が感嘆の声を漏らしたのは、イザベラが数年かけて改良を重ねてきた灌漑用水路を見た時だった。
「……恐れ入ります。私が図面を引きました」
イザベラが答えると、アレクシスは初めて彼女の顔をじっと見つめた。その青い瞳は、まるで全てを見透かすように深く、イザベラは思わず息を呑んだ。
「そうか。君が……。素晴らしい才能だ」
彼の口調は淡々としていたが、その言葉には偽りのない賞賛が込められているように感じられた。
今まで、イザベラの努力や才能を正面から評価してくれる者など、ほとんどいなかった。特にエドワードは、彼女の能力の高さにむしろ引け目を感じているようだった。
第三章 芽生える想い
アレクシス公爵の滞在中、イザベラは彼と多くの言葉を交わした。領地の未来について、民の暮らしについて。彼はイザベラの意見を真摯に聞き、時には的確な助言を与えてくれた。
夜会の席で、彼はイザベラの紅玉のような瞳を見つめ、静かに言った。
「イザベラ嬢、貴女のような聡明で心優しい女性が、なぜ『悪役令嬢』などと呼ばれているのか、私には理解できない」
その言葉に、イザベラはハッとした。誰もが噂を鵜呑みにする中で、アレクシスだけが自分の本質を見抜いてくれている。
「……私の見た目や、思ったことを率直に口にしてしまう性格が、誤解を招きやすいのかもしれません」
「それは、貴女の強さの裏返しでもあるのだろう。だが、その強さを正しく評価しない者がいるのは嘆かわしいことだ」
アレクシスの温かい言葉に、イザベラの心の中で凍り付いていた何かが、ゆっくりと溶け始めるのを感じた。
彼がシルヴァランド公国へ帰国する日、アレクシスはイザベラの手を取り、言った。
「イザベラ嬢、もしよろしければ、我が国へお越しいただけないだろうか。貴女の知識と経験は、我が国にとっても大いに参考になるはずだ」
それは、社交辞令ではない、真剣な眼差しだった。
一方、王都ではエドワードがリリアの本性に気づき始めていた。リリアは贅沢三昧を好み、イザベラの代わりに王太子妃教育を受け始めたものの、その厳しさに音を上げ、エドワードに甘えてばかりいた。イザベラの完璧さ、国を思う真摯な姿勢を思い出し、エドワードは後悔の念に苛まれるようになっていた。
第四章 公爵の溺愛
数週間後、イザベラはアレクシスの招きに応じ、シルヴァランド公国を訪れた。公爵は自ら城門で彼女を迎え、まるで宝物のように大切にエスコートした。
「よく来てくれた、イザベラ。心から歓迎する」
その微笑みは、以前の「氷の公爵」の面影はなく、ただただ優しかった。
シルヴァランド公国での日々は、驚きの連続だった。アレクシスは公務の合間を縫ってイザベラを美しい庭園や歴史的な建造物に案内し、彼女の好きな書物や菓子をさりげなく用意した。彼の側近たちも、公爵がこれほどまでに一人の女性に心を砕く姿を見たことがなく、戸惑いながらも温かく二人を見守った。
ある夜、月明かりが差し込むバルコニーで、アレクシスはイザベラの肩をそっと抱き寄せた。
「イザベラ、私は初めて君に会った時から、その紅玉の瞳の奥に秘められた強い意志と優しさに惹かれていた。君の不幸な噂など、私にとっては些細なことだ。君のありのままを、私は愛している」
彼の熱のこもった告白に、イザベラの頬が赤く染まる。
「アレクシス様……私も、貴方様といると、本当の自分でいられる気がします」
その言葉を聞いたアレクシスは、イザベラを優しく抱きしめた。
「ならば、私の傍にいてほしい。私の妃として、この国で、私と共に生きてはくれないだろうか」
イザベラの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。それは、悲しみの涙ではなく、深い安堵と喜びの涙だった。
「……はい、喜んで」
第五章 真実の愛を胸に
イザベラとアレクシスの婚約は、瞬く間に両国に伝えられた。ヴァイスハイト侯爵夫妻は涙を流して喜び、シルヴァランド公国の民も、若き公爵が見初めた賢妃の誕生を心から祝福した。
その報せを聞いたエドワードは、王宮の自室で一人、打ちひしがれていた。リリアとの関係はとうの昔に破綻し、彼女のわがままに振り回された結果、国政にも支障をきたし始めていた。イザベラという至宝を手放した愚かさを、彼は骨身に染みて感じていた。だが、もう遅い。イザベラは、自分を真に愛し、理解してくれる男性の元で、輝くような笑顔を見せているのだ。
数ヵ月後、シルヴァランド公国で、イザベラとアレクシスの盛大な結婚式が執り行われた。純白のドレスに身を包んだイザベラは、かつての「悪役令嬢」の影など微塵もなく、慈愛に満ちた美しい花嫁だった。隣に立つアレクシスの表情は、これ以上ないほどの幸福感に溢れていた。
「イザベラ、私の愛しい妃。この紅玉の瞳に誓おう。生涯、君だけを愛し、守り抜くことを」
「アレクシス様……私も、この命ある限り、貴方様をお慕い申し上げます」
かつて婚約破棄という屈辱を味わった令嬢は、今、隣国の公爵からの惜しみない愛を受け、真の幸福を手に入れた。彼女の紅玉の瞳は、未来への希望と、愛する人への信頼にきらめいていた。
悪役令嬢の汚名は過去のものとなり、イザベラは賢妃として、そして何よりも愛される妻として、アレクシスと共に輝かしい未来を歩み始めるのだった。
「イザベラ・フォン・ヴァイスハイト! 貴様との婚約を、今この場を以て破棄する!」
王宮の絢爛たる夜会、その喧騒を一瞬で凍りつかせたのは、第一王子エドワードの声だった。彼の隣には、庇われるようにして男爵令嬢リリアが涙を浮かべて佇んでいる。彼女の儚げな美しさは、今宵も多くの同情を集めているようだった。
イザベラは、燃えるような赤い瞳をゆっくりとエドワードに向けた。豪奢なドレスに身を包み、背筋を伸ばしたその姿は、いかなる時も誇り高いヴァイスハイト侯爵家の令嬢そのものだった。
「理由をお聞かせ願えますか、殿下」
「ふん、白々しい! 貴様がリリアにした数々の嫌がらせ、もう我慢ならんのだ! リリアは毎夜、貴様の陰湿な仕打ちに涙しておるのだぞ!」
エドワードの言葉に、周囲から「やはり悪役令嬢だ」「可哀想なリリア様」といった囁きが聞こえてくる。イザベラは、その派手な美貌と、何事にも妥協しない完璧主義な性格から、社交界では「悪役令嬢」と陰で呼ばれていた。身に覚えのない罪状だったが、弁明する気は起きなかった。この茶番に付き合うのは、もううんざりだったのだ。
「……承知いたしました。殿下のご決断、謹んでお受けいたします」
イザベラは深く淑女の礼をすると、静かに踵を返した。その背中には、エドワードの勝ち誇ったような顔と、リリアの怯えたような、それでいてどこか満足げな微笑みが突き刺さるようだった。
(これで、ようやく解放される)
胸に去来したのは、意外にも安堵の思いだった。王太子妃としての重圧、周囲からのあらぬ噂、そして何より、自分を理解しようともしない婚約者。それら全てから解き放たれるのだ。
イザベラは、一筋の涙も見せず、夜会の会場を後にした。
第二章 予期せぬ来訪者
婚約破棄から数日後、イザベラは実家のヴァイスハイト侯爵領に戻っていた。領地の経営や学問に没頭することで、心の傷を癒そうとしていた。
そんなある日、父であるヴァイスハイト侯爵が、珍しく緊張した面持ちでイザベラの部屋を訪れた。
「イザベラ、近々、隣国シルヴァランド公国のアレクシス公爵が、我が領を視察に訪れることになった」
「アレクシス公爵……あの『氷の公爵』と名高い?」
アレクシス・フォン・シルヴァランド。若くして公国を治め、その冷徹なまでの手腕で国を豊かにしたと評判の人物だ。しかし、その無表情と寡黙さから「氷の公爵」と呼ばれ、恐れられてもいた。
「そうだ。公爵は、我が領の特産品や治水事業に興味をお持ちだとか。お前も、もてなしの準備を手伝ってほしい」
「はい、お父様」
イザベラは、少しだけ胸が騒ぐのを感じた。アレクシス公爵とは、数年前の国際会議で一度だけ遠目に見かけたことがある。その怜悧な美貌と、他者を寄せ付けない厳粛な雰囲気は、今でも鮮明に記憶に残っていた。
数日後、アレクシス公爵の一行がヴァイスハイト領に到着した。黒髪に深い青の瞳を持つ公爵は、噂に違わぬ冷たい美貌の持ち主だった。しかし、イザベラが領内の施設を案内すると、彼は意外にも熱心に耳を傾け、時折鋭い質問を投げかけてきた。
「この水路の設計は、実に見事だ。細部まで計算され尽くされている」
公爵が感嘆の声を漏らしたのは、イザベラが数年かけて改良を重ねてきた灌漑用水路を見た時だった。
「……恐れ入ります。私が図面を引きました」
イザベラが答えると、アレクシスは初めて彼女の顔をじっと見つめた。その青い瞳は、まるで全てを見透かすように深く、イザベラは思わず息を呑んだ。
「そうか。君が……。素晴らしい才能だ」
彼の口調は淡々としていたが、その言葉には偽りのない賞賛が込められているように感じられた。
今まで、イザベラの努力や才能を正面から評価してくれる者など、ほとんどいなかった。特にエドワードは、彼女の能力の高さにむしろ引け目を感じているようだった。
第三章 芽生える想い
アレクシス公爵の滞在中、イザベラは彼と多くの言葉を交わした。領地の未来について、民の暮らしについて。彼はイザベラの意見を真摯に聞き、時には的確な助言を与えてくれた。
夜会の席で、彼はイザベラの紅玉のような瞳を見つめ、静かに言った。
「イザベラ嬢、貴女のような聡明で心優しい女性が、なぜ『悪役令嬢』などと呼ばれているのか、私には理解できない」
その言葉に、イザベラはハッとした。誰もが噂を鵜呑みにする中で、アレクシスだけが自分の本質を見抜いてくれている。
「……私の見た目や、思ったことを率直に口にしてしまう性格が、誤解を招きやすいのかもしれません」
「それは、貴女の強さの裏返しでもあるのだろう。だが、その強さを正しく評価しない者がいるのは嘆かわしいことだ」
アレクシスの温かい言葉に、イザベラの心の中で凍り付いていた何かが、ゆっくりと溶け始めるのを感じた。
彼がシルヴァランド公国へ帰国する日、アレクシスはイザベラの手を取り、言った。
「イザベラ嬢、もしよろしければ、我が国へお越しいただけないだろうか。貴女の知識と経験は、我が国にとっても大いに参考になるはずだ」
それは、社交辞令ではない、真剣な眼差しだった。
一方、王都ではエドワードがリリアの本性に気づき始めていた。リリアは贅沢三昧を好み、イザベラの代わりに王太子妃教育を受け始めたものの、その厳しさに音を上げ、エドワードに甘えてばかりいた。イザベラの完璧さ、国を思う真摯な姿勢を思い出し、エドワードは後悔の念に苛まれるようになっていた。
第四章 公爵の溺愛
数週間後、イザベラはアレクシスの招きに応じ、シルヴァランド公国を訪れた。公爵は自ら城門で彼女を迎え、まるで宝物のように大切にエスコートした。
「よく来てくれた、イザベラ。心から歓迎する」
その微笑みは、以前の「氷の公爵」の面影はなく、ただただ優しかった。
シルヴァランド公国での日々は、驚きの連続だった。アレクシスは公務の合間を縫ってイザベラを美しい庭園や歴史的な建造物に案内し、彼女の好きな書物や菓子をさりげなく用意した。彼の側近たちも、公爵がこれほどまでに一人の女性に心を砕く姿を見たことがなく、戸惑いながらも温かく二人を見守った。
ある夜、月明かりが差し込むバルコニーで、アレクシスはイザベラの肩をそっと抱き寄せた。
「イザベラ、私は初めて君に会った時から、その紅玉の瞳の奥に秘められた強い意志と優しさに惹かれていた。君の不幸な噂など、私にとっては些細なことだ。君のありのままを、私は愛している」
彼の熱のこもった告白に、イザベラの頬が赤く染まる。
「アレクシス様……私も、貴方様といると、本当の自分でいられる気がします」
その言葉を聞いたアレクシスは、イザベラを優しく抱きしめた。
「ならば、私の傍にいてほしい。私の妃として、この国で、私と共に生きてはくれないだろうか」
イザベラの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。それは、悲しみの涙ではなく、深い安堵と喜びの涙だった。
「……はい、喜んで」
第五章 真実の愛を胸に
イザベラとアレクシスの婚約は、瞬く間に両国に伝えられた。ヴァイスハイト侯爵夫妻は涙を流して喜び、シルヴァランド公国の民も、若き公爵が見初めた賢妃の誕生を心から祝福した。
その報せを聞いたエドワードは、王宮の自室で一人、打ちひしがれていた。リリアとの関係はとうの昔に破綻し、彼女のわがままに振り回された結果、国政にも支障をきたし始めていた。イザベラという至宝を手放した愚かさを、彼は骨身に染みて感じていた。だが、もう遅い。イザベラは、自分を真に愛し、理解してくれる男性の元で、輝くような笑顔を見せているのだ。
数ヵ月後、シルヴァランド公国で、イザベラとアレクシスの盛大な結婚式が執り行われた。純白のドレスに身を包んだイザベラは、かつての「悪役令嬢」の影など微塵もなく、慈愛に満ちた美しい花嫁だった。隣に立つアレクシスの表情は、これ以上ないほどの幸福感に溢れていた。
「イザベラ、私の愛しい妃。この紅玉の瞳に誓おう。生涯、君だけを愛し、守り抜くことを」
「アレクシス様……私も、この命ある限り、貴方様をお慕い申し上げます」
かつて婚約破棄という屈辱を味わった令嬢は、今、隣国の公爵からの惜しみない愛を受け、真の幸福を手に入れた。彼女の紅玉の瞳は、未来への希望と、愛する人への信頼にきらめいていた。
悪役令嬢の汚名は過去のものとなり、イザベラは賢妃として、そして何よりも愛される妻として、アレクシスと共に輝かしい未来を歩み始めるのだった。
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