氷の薔薇は愛に目覚める~婚約破棄された令嬢と救国の王子~

イアペコス

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氷解の兆し 11

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その瞬間、エリザベスの心の中で、最後の、そして最も分厚く、最も冷たく、そして最も頑固で、決して溶けることなどないと思われていた氷の壁が、まるで春の、最も力強く、そして最も温かい陽光を、真正面から浴びたかのように、大きな、そして心地よい音を立てて、完全に、そして永遠に溶け落ちた。
彼女は、言葉に詰まりながら、溢れ出る熱い涙を、もはや抑えることも、抑えようとすることもできず、その場に、まるで糸の切れた人形のように膝から崩れ落ちるようにして、深々と、そして何度も何度も、まるで大地に感謝の祈りを捧げるかのように頭を下げた。
「ありがとう…本当に、本当に、ありがとう…ございます…!こんな…こんなに、温かくて、こんなに、心のこもった、そして何よりも尊い贈り物は…わたくし、生まれて…生まれてこの方、ただの一度も…いただいたことがございません…!このご恩を、何と、どのようにお礼を申し上げたら、よろしいのでしょうか…!」
熱い、そしてしょっぱい涙が、またしても彼女の頬を、まるで川の流れのように、とめどなく伝った。しかし、それはもはや、かつてのような、孤独や絶望、あるいは屈辱や悲しみの涙では、断じてなかった。それは、彼女が、心の奥底の、最も深い場所で、ずっと、そして誰よりも強く求めていた、人と人との、身分や境遇や過去の違いを超えた、温かく、そして偽りのない繋がりと、見返りを求めない無償の愛に、ようやく、そして初めて触れることができたことによって流れる、何よりも温かく、そして何よりも幸せで、そして何よりも尊い、魂の浄化の涙だった。

その夜、エリザベスは、枕元に、まるで神棚に供物を捧げるかのように大切に置かれた、村人たちからの、金額にすればおそらく取るに足りない、しかし彼女にとっては、かつて所有していたどんな高価な宝石や、どんな美しいドレスよりも、何千倍も、何万倍も価値のある、ささやかな贈り物――まだ温かく、そして土の香りがする香ばしい焼き芋と、少し不格好だが、編み手の温もりが伝わってくるような、優しい色合いの毛糸の手袋――を、何度も何度も、飽きることなく見つめながら、深い、そして静かで、そして何よりも満ち足りた感動に、その身も心も包まれていた。

彼女は、ようやく、このエルム村の人々と、身分や、過去のいきさつや、そしてお互いの心の傷といった、全ての障壁を乗り越えて、本当の意味で、魂のレベルで深く心を通わせるための、最初の、しかし何よりも重要で、そして何よりも美しい一歩を、確かに踏み出すことができたのだと、魂の奥底から、熱い喜びと共に感じていた。
そして、この、エリザベスと、名もなき、しかし純粋で温かい心を持つ村人たちとの間に、静かに、しかし確実に、そして何よりも力強く芽生え始めた、この温かく、そして何よりも強い、誰にも壊すことのできない絆は、遠く離れた王都で、エリザベスをさらに貶め、その存在を、この世から完全に抹殺しようと、邪悪で、そして冷酷な陰謀を、日夜巡らせるリリアや、その背後で、まるで毒蜘蛛のように糸を引く、王国の根幹さえも揺るがしかねない、恐るべき黒幕たちの、冷酷で、そして緻密に計算された企みとは、全く無関係に、しかし確実に、そして何よりも皮肉なことに、彼らの、避けられない破滅へと、確実に繋がる、重要な、そして決定的な伏線ともなっていた。なぜなら、エリザベスの、愛と、献身と、そして何よりも人間への信頼に満ちた行動がもたらした、このエルム村の、まだ小さく、しかし何よりも力強い希望の光こそが、やがて大きな、そして誰にも止めることのできない、正義のうねりとなり、全ての嘘と、偽りと、そして悪意を焼き尽くし、隠されていた真実を、白日の下に、容赦なく照らし出す、何よりも力強い原動力となるからだった。
氷解の兆しは、確かに、エルム村の、長い、長い間、全ての生命を拒絶するかのように凍てついていた大地と、エリザベスの、一度は死んだかのように、全ての感情を失ったかのように思われた心、そして、村人たちの、希望という言葉さえも忘れかけていた、乾ききった心の中に、力強く、そしてどこまでも温かく、そして何よりも、息をのむほどに美しく、そして感動的に現れ始めていた。それは、まだ、雪解け水が、岩間から染み出すようにして作り出す、ほんの小さな、そしてか細い、いつ消えてしまうかもしれない流れだったかもしれない。しかし、その流れは、やがて必ずや、いくつもの、同じように小さな、しかし同じように希望に満ちた支流と合わさり、大きな、そして豊かな、決して枯れることのない大河となり、そして最後には、広大で、全ての生命を優しく包み込み、そして育む、母なる海へと、力強く、そして誇らしげに注ぎ込むことを、高らかに、そして確信をもって予感させる、希望に満ちた、壮大で、そして何よりも美しい物語の、静かな、しかし何よりも感動的な、そして永遠に記憶されるべき始まりだった。
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