氷の薔薇は愛に目覚める~婚約破棄された令嬢と救国の王子~

イアペコス

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真実の囁きと心の選択 2

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一方、遠く離れた王都では、エリザベスがエルム村で静かに、しかし着実に力を蓄え、人々の信頼を勝ち得ていることなど露知らず、リリアと、その背後で糸を引く黒幕である、野心的な大貴族オルダス公爵は、エリザベスを完全に社会から抹殺し、そしてルシアン王子との繋がりを断ち切るための、新たな、そしてより邪悪な陰謀を巡らせていた。
彼らは、エリザベスがエルム村で「反乱を企てている」「妖術を使って村人を惑わしている」といった、根も葉もない悪質な噂を王都中に流し、王太子エドワードや、国王の不安を煽り、エリザベスに対する正式な討伐軍を派遣させようと画策していた。さらに、彼らは、ルシアン王子がエリザベスに送っている書簡を秘密裏に入手し、その内容を改竄して、あたかもルシアンがエリザベスを利用してアルカディア王国を内側から切り崩そうとしているかのような偽の証拠を捏造し、両国の間に決定的な亀裂を生じさせようとさえしていた。
これらの陰謀の進行状況は、ルシアンが王都に張り巡らせた密偵たちのネットワークによって、逐一、そして極秘裏にエリザベスの元へも届けられていた。その報告を読むたびに、エリザベスの心は、怒りと、そして深い憂慮で満たされた。自分一人の問題ならばまだしも、このエルム村の人々や、そして何よりも、自分を信じ、支えてくれているルシアンにまで危害が及ぶことは、彼女にとって耐え難いことだった。

そんなある日、ルシアンから、いつもの定期的な書簡とは別に、特別な封蝋で厳重に封印された、一通の緊急の書簡が、彼の最も信頼する側近によって、エリザベスの元へ届けられた。その手紙には、王都での陰謀が最終段階に入りつつあり、エリザベスとエルム村に、差し迫った危機が訪れようとしていることが、詳細に、そして冷静に記されていた。そして、手紙の最後には、ルシアンの、彼女の身を深く案ずる、切実な言葉と共に、一つの、しかしエリザベスの心を激しく揺さぶる、重大な問いかけが記されていた。

『エリザベス、愛しい君へ。
王都の状況は、我々が予想していた以上に悪化している。オルダス公爵の陰謀は、もはや王国の根幹を揺るがしかねないほどに深く、そして巧妙だ。彼らは、君を、そして私をも貶めるために、あらゆる卑劣な手段を講じてくるだろう。そして、おそらく近いうちに、君のいるエルム村にも、彼らの魔の手が伸びてくるはずだ。
私は、全力を尽くして君とエルム村を守る。しかし、万が一の事態も想定しなければならない。
そこで、君に、一つ、極めて重要な、そしておそらくは辛い選択を迫らなければならないことを、どうか許してほしい。

エリザベス、君は、これまで、周囲の期待や、社会の規範、そして時には自らの良心にさえも縛られ、「クライフォルト公爵令嬢」として、「王太子妃候補」として、そして「悪役令嬢」として、様々な「役割」を演じ、あるいは演じさせられてきた。
しかし、今、このエルム村で、君は、初めて本当の自分自身として、誰にも媚びることなく、誰にも縛られることなく、自らの意志で立ち、人々を導き、そして愛されている。
そこで、君に問いたい。

エリザベス・フォン・クライフォルト、君は、本当は何者なのだ?
君は、かつて自分がそうあろうとした、あるいはそうあるべきだと信じていた、あの冷徹で計算高い「悪役令嬢」の仮面を、今、この危機的状況を乗り越えるために、再び戦略的に被る覚悟があるのか? それとも、君は、このエルム村で、ようやく見つけ、そして愛することができるようになった、ありのままの、優しく、強く、そして慈愛に満ちた「エリザベス」として、たとえそれがどんなに困難な道であろうとも、最後まで自分自身に正直に生きることを選ぶのか?

この問いに、正しい答えはない。どちらを選ぼうとも、それは君自身の、尊い選択だ。
しかし、君がどちらの道を選ぶかによって、私が取るべき戦略も、そして君とエルム村の未来も、大きく変わってくるだろう。
どうか、君の心の奥底の声に、正直に耳を傾けてほしい。そして、君が下した決断を、私に教えてほしい。私は、君のどんな選択も受け入れ、そして全力で支えることを、ここに改めて誓う。
君の永遠の騎士、ルシアンより』
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