召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした

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一年生

召喚獣に初の命令です!

鐘の合図とともに本日の授業が始まる。
教壇に立つルナ先生は相変わらず綺麗だ。

「では、授業を開始します」

カツカツと音を立て、黒板にチョークを走らせていく。

「召喚獣の指揮には二通りあります」

「まずは命令型。これはその名のとおり命令して行動させることです。
単純ですが攻撃を命令するとそれ以外の行動はとりません」 

「それに対して自律型。これは召喚獣に行動を任せるタイプですね。
しかしある程度の信頼度が無いと意志疎通ができないまま連携もとれず、バラバラの行動になってしまいます。故に上級者向けと言えます」

なるほど。
ノートに書き進める。

「自分の召喚獣の特性を生かし闘う事が重要になります。
今は一体ですが、数が増えると非常に難しくなっていきます。それを覚えておいてください」

「今日の座学はここまでです。昼食の後に召喚獣を動かしてみましょう」

「「ありがとうございます!」」

全員で礼を行い、授業が終わりを迎えた。
食堂での昼食。

「楽しみだね!」

ルースが隣で話かけてくる。

「そうだな、模擬戦もやってみたいよな!」

と、話しているとこそこそ話が聞こえた。

「あいつDランクだぜ……」

「ああ、知ってる知ってる」

「あはは、バカだよなぁ……」

同じ一年の男子が笑っていた。

「なんだよ、あいつら……」

「ほっとけほっとけ。俺はじいちゃんに小さい頃から闘技場に連れて行かれて見てきたんだ。
そして思ったんだ。ランクは飾りで、信頼、作戦、指揮、色々な要素があって勝負は決まるんだって」

「あぁ!それは僕のお祖父さんも言ってたよ!」

「だろ?だから言いたい奴等には言わしとけ。ああいうのはほっとくに限る」

「カイがそう言うならいいけど……」

少し納得がいかないようだが、そのまま昼食は終わった。
さあ午後は実技だからな、頑張るぜ!
グラウンドに集合し、ルナ先生から説明を受ける。

「では、召喚してください」

広いグラウンドの中で間隔をとり、それぞれが召喚する。

「では命令をしてみましょう。ただし攻撃やスキルの発動は厳禁です。容赦なく強制解除させます」

一年生は先生が強制的に召喚を解除出来るようになっている。
暴走や勝手な生徒から守るためだ。
そして各々が行動を開始する。

「ファーナ。俺の周りをぐるぐると回ってくれ」

女騎士の鎧は静かに肯いた。
すると俺の周りをガチャン、ガチャンと歩き出す。

その間に俺は持ってきた鉛筆とノートを持って同級生の召喚獣を観察する。
そして全員の召喚獣の様子を書きこんでいく。
やはり三人の女子生徒達が別格だった。

「ふんっ!」

フレアはフェニックスを剣に纏わせ素振りをしている。

「きゃぁ!とっても高いです!」

リーナはキリンの背中に乗り楽しそうに空を飛び、

「すごく速い……それにモフモフ……」

サリアはセツナの背中に乗り、毛皮を堪能しつつ素早く走り回っていた。

「強敵だよなぁ……」

ぐるぐる回っているファーナに、

「あの夢はファーナの記憶だったのかな?意味合いは違うかもしれないけど俺を守ってくれないか?」

そう言うと突然俺の前で立ち止まった。

ぎぃーん!

ファーナの鎧に何かがぶつかる音がした。

「カイ君!大丈夫ですか!?」

どうやら、ロックゴーレムを召喚した生徒が小石を誤って投げてしまったらしい。

「大丈夫ですよ。ファーナが守ってくれたんで」

「ファーナ?」

「リビングメイルの名前です」

「そうでしたか。怪我がなくて何よりです」

ロックゴーレムを召喚した男子学生も謝ってくれた。
いいよいいよと答えると、ありがとう!と言って去っていく。

「ところでカイ君は何かを書いていたみたいですが、何を書いていたのですか?」

「えっと、クラス全員の召喚獣を書いていたんです。誰がどの召喚獣でとかですね」

「……それはどうして書いたのですか?」

「もちろん勝つためです。相手の召喚獣を把握し、召喚獣の特性を調べて闘うんです!」

ルナ先生は笑った。

「貴方は闘いを良く理解していますね」

ポーーっと見つめていると、

「どこでそういう事を教えてもらったのですか?」

「じいちゃんです!子供のときから一緒に闘技場へ行って色々教えてもらいました。
まずは召喚師同士のスタイル、召喚獣の特性を把握して投票券を買わなくちゃならん。じゃないと当たらんからのう!って、言って笑ってました。そして良く当てて、帰りに美味しいお菓子を買ってくれたりしたんですよね」

「そうですか。良いお祖父さんですね」

「はいっ!」

そう言うとルナ先生は去っていった。
ふと隣を見ると、ファーナは相変わらず俺を守るように立ったままだ。

「ありがとうな。ファーナのおかげで怪我せずにすんだよ」

マモル マスター マモル。

確かに聞こえた。
俺は、俺より少しだけ背の低いファーナを兜越しに撫でる。

「ありがとう。ファーナは確かに俺を守ってくれたよ」

ヨカッタ。

そうして実技の授業も終わり、今日の日程は終了を迎えた。

実技授業が終わった日の夜。
眠りについた俺はまた夢を見た。
どうやら続きらしい。

逃げて逃げて遠く離れた村にたどり着いたファーナ。
兜を脱いだが、顔は見えない。
真っ暗に塗りつぶされているかのように隠されている。
俺は周囲を見回してみるが、お世辞にも栄えているとは言えない村だ。
そこで近くの住人に何かを教わり、歩いて行く。
何をしに行くのだろう?
到着したのは他の家より大きい、恐らく村長の家だと思う。
身なりを見た村長は丁重に中へと案内してくれる。
そこで軽い話を交える二人。
年老いた男性の話を聞くと村では盗賊に襲われたり、野獣の被害に遭うなど治安が悪いようだ。
話を聞いたファーナは提案する。

「私がこの村を守る。代わりにここに住まわせてもらえないだろうか?」

「よろしいので!?」

「私は国を失った騎士だ……だが、私の剣は守る為にある。だから、この村を守らせてくれないか?」

その言葉に救われたように喜び、感謝する村長。

「ありがとうございます……よろしくお願いします」


私は守る。二度と大切な者を失わないという決意を胸に。
そして、他の者にこの様な想いをさせないためにも。
ファーナの想いが流れ込んでくる。

ファーナは村の空き家に案内され、一晩を過ごした。
次の日から村を見廻り、異常が無いかを確認する。
最初は警戒していた村民も少しずつ打ち解けていくようになった。
久しぶりに人の笑顔に触れ、心地良い気分なのだろう。
俺も暖かい気持ちに包まれていく。
だが、そんなある日、村は盗賊に襲撃されてしまう。
相手は30人ほどだった。
周囲を柵で覆っているので、唯一の出入り口である村の門の前にファーナは立っている。

「なんだか騎士がいますぜ?」

「バカ野郎!相手は一人じゃねぇか?」

「そーだぜ?あんなのにびびちっまったら、飯がくえねーや」

わはははは!
低俗な笑い声が響く。

「じゃあ!いくぜ!」

全員が突撃してくる。
だがファーナは微動だにせず剣を抜き、何かを唱えていく。
すると剣は光り輝き、そのまま横一文字に剣を奮った。
凄まじい速さの光の衝撃波が盗賊団を襲い、剣の直線上にいた盗賊は体を真っ二つにされ、次々と倒れていった。
しかし盗賊団の団長は生きていた様で、

「散れ!バラバラになって斬りかかれ!」

号令を飛ばす。
するとファーナは剣を地に突き刺し、再び唱え始めた。

ファーナの周りに光の剣が現れる。
しかし一本ではない。
十数本の光の剣はまるで意思を持つ様に盗賊の身体を貫いていく。
みるみる内に数人まで数を減らしていた盗賊団だが、諦めずに突撃を行う。
接近戦となり、ファーナは剣を再び抜くと一人また一人と斬り倒す。
まるで踊っているかのように。

「ふぅ……まあこんなものかしらね」

後ろで恐る恐る見ていた村民は大歓声でファーナを迎えた。

「ありがとうございます!」

次々にお礼を言われるファーナ。
私は守ることが出来たようだ、父上……
その想いを胸に空を見上げていた。

盗賊を打ち倒す騎士がいる村があるらしい。
その噂を聞きつけ、近くから人が集まり人口は増えていった。
ファーナは自警団をつくり、魔法、剣術、戦略を教えて戦力を整える。
そして、一番大事な心構えを伝えているようだ。

「君たちが得た力は奪うためのものではない。守る為にある!君たちにも大切な人がいるだろう。その人たちを守ること、それが騎士というものだ」

「「「「はいっ!」」」」

ファーナは嬉しそうに笑っているようだった。
だが数年が過ぎ、更に発展していた時にファーナは病に倒れる。

「ごほっ!ごほっ!」

激しく咳き込むファーナに若い女性が慌てた様子で声をかける。

「大丈夫ですか!?×××さま!」

「ふぅ……もう駄目なようだ」

「そんな!今すぐ医師を連れてきます!」

部屋を出るメイド。

「父上、血筋は遺せませんでした……ですが我が国の誇り、魂は遺せました。不甲斐ない娘を許してくれますか……?」

そうつぶやくとファーナは息を引き取ってしまった……
村は都市というに値するほど大きくなっている中でほぼ全ての住民が泣き、死を悼んだ。
葬儀が行われ、たくさんの住民が集まる。
棺は丘の上に埋められ、立派な墓石が建てられた。

美しい彫刻の墓石には碑文が彫られている。
人々を守り、教え、導いてくれた戦乙女、ここに眠る。
私達はいつまでも語り継いでいきます。
この丘で見守りください。

×××・×××・×××

おそらく名前だろうか?
そこはよく分からなかった。
そうして目が覚めると涙は流れ、汗はびっしょりと俺の身体を濡らしている。
胸に手を当て、ファーナに俺の想いを言葉にした。

「ファーナ、君は立派に守っていたよ?素敵な生き方だった」

顔を拭い、言葉を続ける。

「だから少しずつでいい。君を、君自身を思い出して欲しい。ファーナの本当の名を知りたいから」

マスター……
アリガトウ……

聞こえる。
かすかに聞こえるほどだったファーナの声が完全に頭に響いた。

「きっとお父さんも喜んでいると思う。だからお父さんや国民を守れなかったことを無念に思っちゃ駄目だ。ファーナのお陰で救われた人もたくさんいるんだから」

泣いているように震えた声でファーナはアリガトウと呟いた。
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