召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした

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一年生

フレアさんの受難な日

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寮の門限間際、短時間の依頼を完了させたリーナが帰路についていた。

はぁ……なかなかシスターにお手紙が書けません……

リーナが旅行のお誘いを受けてから一週間という時間が流れていたが、いまだに文面をまとめることができずにいた。
そんな憂鬱な気持ちで寮へと帰ってきたリーナは、

「お帰り、リーナちゃん。お手紙届いているよ」

寮母のベアに話しかけられる。

「あっ、ありがとうございます」

受け取って差出人を見ると、シスターからだった。
部屋に戻ったリーナが、少し後ろめたい気持ちを抱きつつも手紙の封を開け、読み進めていく。

リーナ。
元気にやっているかしら?
あなたが送ってくれるお金で食料品や衣服や本などを購入できて、子どもたちもとても喜んでいます。
本当にありがとう。

それから、あなたのお友だちからお手紙が届きました。
あなたのことだから手紙を出せずにいると思ったそうですが、よくわかっていらっしゃいますね。
そこには丁寧な文字で、少しだけリーナと一緒に遊んでもいいでしょうか?と書かれていました。

もちろんお誘いを受けていいです。
あなたにも学生生活を楽しんでもらいたいですから。
こちらのことは私や年長の子たちに任せてください。
みんなあなたに似て良い子たちばかりですよ?

一枚目が終わり、二枚目を読んでいくと、

姉ちゃん!ゆっくりと遊んできなよ!
おみやげはよろしく!
リーナお姉ちゃんいつもありがとう!

そこには、弟や妹たちからの絵や文字が書かれていた。

「シスター……みんな……」

感極まったリーナの瞳から、とめどなく涙がこぼれてしまう。
リーナは震える手で最後の手紙へと目を通した。

泣き虫なあなたのことだから、泣いちゃってるかもしれません。
泣いてなかったらごめんなさいね?

「えへへ……泣いちゃってます」

私も子どもたちもあなたの笑顔が大好きなんです。
だから、あなたの楽しいお話を聞かせてくれることを待っています。
最後になりますが、身体を大事にして日々を過ごしてください。

「ありがとう、ございます……」

リーナは読み終わった手紙を折りたたむと、ぎゅっと抱きしめた。

コンコン。

「は、はい!」

「リーナ、風呂に行かんか?」

「訓練してて、あせびしょびしょなの」

「分かりました!すぐに準備するのでお待ちください!」

手紙をテーブルの引き出しにしまい、お風呂セットを手にしたリーナは自室のドアを開く。

「それじゃあ行くとしようか」

「あれ?なんだか元気ない?」

「フレアさん、サリアちゃん……ありがとうございます」

リーナは二人の顔を見た瞬間、色々な想いがこみ上げたようで、お礼を言いつつフレアの身体を抱きしめていた。

「なっ!?どうしたのだ!?急に抱きついてくるなんて!それに私はけっこう汗をかいていてだな!?」

「フレア、慌てすぎ」

「慌てもするだろう!?柔らかいし……いい香りだし……!」

「言ってることがカイと同じだ」

それからリーナが離れるまでの間、フレアは真っ赤な顔で固まってしまった。

「すいませんでした……シスターからのお手紙で、みなさんが私のお休みをお願いしてくれていたのを知ったばかりでして……」

「そ、そうか……」

「よいしょ」

硬直が解けたフレアがリーナたちと脱衣場に向かう。
中に入り、三人が並んで服を脱いでいるのだが、

「あ、あの……フレアさん?すごく視線を感じるのですが……」

「い、いや!気のせいだ!」

先ほど抱き着かれてからというもの、フレアはリーナに意識を奪われている。

(私の胸に感じたあの柔らかさは……なぜ私はドキドキしている!?)

「なんだか恥ずかしいので、先に行ってますね……?」

フレアの視線に気づいたリーナは顔を赤くして、浴場の方へと行ってしまった。

「……私はどうしてしまったのだ」

「ほら元気だしなよ」

そう言ってぷるんと胸を張るサリアだが、

「なんか違う」

「……ムカつく」

フレアの無表情さに怒って、足を蹴る。

「いたっ!何をする!」

「うるさい。フレアのすけべ」

「なっ!?」

浴場へと向かっていくサリアの強烈な一言は、足の痛みよりもひどく胸に突き刺さった。

「きゃぁぁぁ!?」

だが、その直後にリーナの悲鳴が脱衣場まで聞こえてくる。

「どうしたんだ!?」

フレアが慌てて浴場の中へ入ると、

「サリアちゃんのケモ耳と尻尾が可愛いんですぅぅぅ!しっかり洗いましょうね!」

「リーナはホントに好きだよね」

「だって可愛いんですもん!」

「ふぅ……相変わらずだな」

フレアの中から先ほどのときめきは消え去っていった。

「それでは私もサリアの身体を洗わせてもらおうかなぁ!」

「やっ。さっき励ましてあげたのに冷たい顔したから」

「すまなかったぁぁぁ!」

結局フレアはサリアの機嫌を直すことができず、

「ほ、ほら、私のフライをあげるぞ!?」

「いらない」

「いい加減に機嫌を直してくれぇぇぇ!?」

食堂でもサリアはツンツンしたままだった。


「……何があったんだ?」

「サリアがあんなに怒ってるのって、初めてじゃない?」

「えっとぉ……」

リーナは二人にどう説明したらいいのか分からずに困ってしまい、

「あっ!カイさんとルースさんもお手紙書いてくださったんですよね!」

話題を変えることにした。

「えっ、ああ、シスターさんの手紙が届いたのか?」

「カイの発案なんだけど、どうだった?」

「シスターが楽しんできなさいって言ってくれました。ですので、私も行きます!」

「そうか、それは良かったよ」

「これでみんなで行けそうだね」

そんなほのぼのとした会話の横で、フレアとサリアはいまだに険悪なままだ。

「デザートのチョコケーキはどうだ!?」

ぴくっ。
その言葉にサリアの身体が少しだけ反応する。

「…………いらない」

「が、我慢しなくていいぞ!?」

「……」

差し出されたチョコケーキに我慢できなかったサリアは、むしゃむしゃっと一気に食べる。

「ゆ、許してくれるか?」

「……そんなに簡単な女じゃないから」

頬にチョコケーキの欠片をつけたまま言っても威力は半減だが、フレアには十分な威力だったようだ。

「……」

もはや言葉にできないほとに落ち込んでいた。

「サリアちゃん?何を言われたのかは知りませんが、許してあげたらどうですか?あのフレアさんがチョコケーキをくれたんですよ?」

「……一理ある」

サリアの敗北のきっかけとなったハンバーグ事件から考えてみると、最大の譲歩だったのだろう。

「フレアはわたしのおっぱい好き?」

「あっ……!ああ!好きだ!愛している!」

フレアは希望の糸を逃がすまいと思いっきり引っ張る。

「……そこまでは求めてない」

「……あれ?」

その結果あえなく糸は切れてしまった。

「うわぁ……」

「ど、どういうこと?」

「先ほどの私への視線は、そういう意味だったんですか……?」

カイたちの視線が集まり、フレアは立ち上がる。

「違う!誤解なんだぁぁぁ!」

賑やかな食堂に、フレアの絶叫が響き渡っていった。
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