星見と私

運命 9

「悪いね。こんなに怯えさせているキミにサナをさわらせる訳にはいかない」

私は驚き振り替えるとジレンの手を叩いたのは、いつの間にか私の背後に立っていたレイ様だった。
しかし、私の知っているレイ様とは違ってその表情は険しい。

「彼女が俺と運命の人だと教えてくれたのは貴方ではないですか。これからもっと親密になろうとしているのです。邪魔しないで下さい」
「確かに言ったさ。わたしが見えた星を伝えたが、それはサナを傷つけていいというものではない」

ジレンとレイ様が睨みあっている間で私は小さくなる。
考えろ…私はどうしたらいいのか。
どうしたいのか…
私は決心して立ち上がり、ジレンに深く頭を下げた。

「ごめんなさい！私は貴方の運命の人ではないです！」
「サナ？」

頭を上げて今度はレイ様にも頭を下げた。

「レイ様もごめんなさい。私、やっぱり人に決められた運命を信じることが出来ないの。運命って、自分で切り開くものだと思うから。」

レイ様は少し驚いた様子だったがすぐに微笑むと私の頭を撫でた。

「やっぱり、サナは規格外だな。わたしの言葉(予知した運命)に全く従わない」
「？」
「おかげで『星見』の能力がなくなったのかと心配になったけどね。ジレン、安心しろ、わたしとサナに肉体関係など一切ない。わたしが誘惑しても言葉でそうなるように告げてもサナは全くの無関心だ」
「どういうこと？」
「『一緒のベットで寝よう』『ご飯を食べに行こう』あの何気ない誘いにも星見の力が宿っている。普通なら無意識に従うモノを普通に拒否していたよね」

あれに？力が？

「わたしが見た星見は、ジレンに恋焦がれ命を捧げるサナ・ロシャール令嬢だ。まさかここで断る展開なんて予知できなかった。つまり、サナは『星見』をぶち破る存在だという事だ」
「『星見』が通用しない存在がいるのですか？」

ジレンは信じかたいといった顔をした。

「極稀にだが、運命を変える能力というべきかな。貴重な上に危険な存在でもあるが、わたしは嬉しく思う。だってそうだろ？わからない方が面白い」

レイ様はニヤリと笑うと不意に私を抱き寄せ、私はレイ様の胸の中にすっぽり閉じ込められた。

「わたしはサナに興味を持っている。この先の運命は何もわからない」
「え、え？」
「ジレン、これでお前の運命もわからなくなったぞ」
「っ…卑怯ですよレイ様」

私はレイ様の腕の中から抜け出そうともがいていると、あることに気がついた。
レイ様の太く硬い腕に、胸板も鍛えているのか硬い。

「…間違いなく男」
「最初にそう言っただろ？」

これ以上、ジレンの前で異性に抱きつかれている光景を見せたくないと思った私はレイ様が離してくれそうな手段を考えた。
力づくでダメなら…

「は、離してくれないと、もう手料理食べさせてあげませんよ」

私の言葉を聞いてレイ様はパッと私を解放した。
ジレンは何か言いたそうにしていたが、黙り込んでいる。
こうして、私の片思いは終わりを告げた。
ジレンに告白され、社交界にまで招待されてお付き合い断るとか…本当に勿体ないことをしたと思う。
でも、それでも私は後悔していなかった。