詞詩集

鳥丸唯史(とりまるただし)

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梟悪の森

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あやかしだる通り 暗い暗い獣道
あの日、まだ幼い日々が懐かしいとまぶた閉じた
満月が背に隠れてまた顔出す頃には
どうか、はなからいないことにしてほしいと願う幾度も

目が冴えわたる 鉤爪かぎづめ伸びる
虚無感まとう朧夜に
姿ひそめて待つと月さえにらみ、目でものを言う

いっそ不安に潰され、死すれば楽だろか
太陽沈みきる前に安らぐ寝床を探さなくちゃ
我慢するほどためこんだ涙がこぼれた
泣き言ならべた昨日のこと可笑しくなれる明日が来るなら

行くとして可ならざるはなし
烏に反哺はんぽの考あり
地獄極楽はこの世にあり
梟悪きょうあくは去るべし
恐れるあまり忘れていたもの
ものを目で見れる喜び
癖になり続けた辻褄合わせが付けを回した

噬臍ぜいせいの夜 あれから幾年いくとせ、幾夜の時が過ぎただろか
得難えがたきは時逢ときあい難きは友だと、常々思う日々です
恐れるあまり忘れていたもの
まだ生きていれる喜び
噛み合わせの悪い歯車がまた胸を軋ませて

後には引けない さきしか見えない
もう帰れぬ旅路へと
限界状況 越える時こそ
梟悪の去る朝へと…
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