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第29話 スパウダの捜索隊
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「マルトさんから貰った紹介状、大切に持っておかないといけないね」
『そうですね、リュームの街を訪れる際には必ず向かいましょう』
『うむ、これほどの防具を作り出せる男でさえ天才と呼ばれている事を肯定する優れた武器職人とあれば技術もかなり高いだろう。期待出来る筈だ』
「わ、私は盾と同様に武器も護さんとお揃いが良いです」
山小屋を出て数時間、マルトさんの作ってくれた防具は長時間装備していても重さを全く感じない。オッサンの着ている重鎧も暑苦しさを感じないと言っているので、鱗や殻の持つ効果なのだろう。
4人には何かしらの防具は作ってくれたが只1人作ってもらえなかったレミアは、少し拗ねている。
『なんで私には防具を作ってくれなかったのかしら?リュームの街では武器で無くて構わないから私の願いを叶えてくれる杖を作れるか聞いてみたいわね』
「へ~どんな杖が欲しいんだい?」
『調理器具や食材を自在に動かせる様になる杖よ、今の身体だと物を掴むまでに時間が掛かってしまって料理も上達出来ないの。最っ高の料理を作る為にも絶対に必要ね』
究極のイギリス料理を自分でも作れる様になりたいというレミアの野望は、俺達の中ではスパウダよりも遥かに恐い物となっている。前の身体の時のヤミでさえ失神させた料理を自由に作り出せる様になったら・・・スパウダと戦う前に全滅しかねない。
「な、なあレミア。それならさ、リュームに着いたら食べ物の神の助けも借りてイギリス料理を自由に出せる杖を作ってもらうのはどうだ?立派な武器になると思うぞ?」
『ちょっと!何でそんな杖が武器になるのよ!?』
「いや、ヤミさえ気を失う料理は立派な食料兵器だぞ」
『ヤミはね、あまりの美味しさに気を失ったのよ。あの時はわざと酷い事を言っていたけど、また目の前に出されれば涎を垂らしながら食べ始めるわよきっと』
涎を垂らす事は絶対に無いと断言出来る、何故なら俺とレミアの会話をこっそり聞いていたヤミが涎ではなく額から脂汗を流しているからだ。
「護、お願いだからレミアが私にイギリス料理を出そうとしてきたら絶対に止めてね!神族と戦う前に死ぬのだけはイヤ!!」
「安心しろ、俺だって死にたくない。考える事はレミアを除いて皆一緒だ」
ヤミが周りを見ると、天照・トリー・オッサンの3人もアイコンタクトで仲間だと知らせている。
「良かった!食べ物の神の出してくれる護の世界の料理はイギリスを除いてどれも美味しいのに、何故アレだけあそこまで味が違うの?」
「俺に聞かないでくれ・・・あの国の歩んできた食文化が主な原因だから」
「?」
ヤミの会話の中で出てきたスパウダに対して、俺達は甘い考えを抱いていた。俺達がスパウダに入るまで何もしてこないと思っていたのだが、護とヤミが会話しているのととほぼ同時刻にスパウダにおいても1つの動きが有った。
スパウダ神聖帝国の神都アビス、レミアが当初目的地にしていたロレッツに程近いこの都には下位から上位までの様々な神族が暮らしている・・・正確には上位神族の絶対的な支配下にある。中でも上級の神は都の中心部にそびえ立つ【神の塔】から出る事すら無い。中級の神よりも下位の者達に命令を与えるだけだ、逆らおうとする者はその場で処断する。そして命令を受けた者も己よりも下位の者に命令をして憂さを晴らす。延々とその行為を繰り返し最終的に他種族を迫害する事で下位の神族のプライドをかろうじて保っているのが、こちらの世界の神族の姿である。
【神の塔最上階天空の間】この部屋に住む者こそ神族の頂点最高神の位にある、神グルコであった。
コンコンコンコン・・・。部屋の扉をノックする音が聞こえる。
(入りなさい)
「失礼致します」
部屋の中に入ってきたのは、アビス正門の警備からの報告を受けてきたバッファという中級神だ。
「この部屋に中級神の分際で入ろうとは、くだらない用であれば命は無いと思え」
「は、先程正門の警備から報告が入りまして下位の天使が1人全身負傷して帰ってきたとの事」
「その者を直ちに処刑しなさい」
「は!?」
「下位とはいえ、神族の名を汚した者に生きている必要はありません。ただし殺す前にどの種族が手を出してきたのか洗いざらい吐かせる様に」
「はい、実は初めは報告する必要の無い話かと思い私の方でも同様の指示を与えようとしていたのですがその天使が早急にグルコ様の耳に入れるべき事態を告げてきましたものでこうして報告に参上致しました」
「ほう、下位の天使の報告程度がそれほど重大とは思えませんが・・・」
「その天使を負傷させたのが、異世界より来た神族だと申すのです」
「なんだと?」
「名は名乗らなかったそうですが、戦神の肩書きを自称した模様です」
「戦神、それは大変興味が有りますね。しかし、最も優れた種族である我々と同じ種族だと言われるのには虫酸が走ります。その天使の処刑は一時取りやめなさい。ただし処刑を延期させる代わりとして、その者に異世界より来たという戦神までの道案内をさせるのです」
「道案内ですか?」
「バッファ、その戦神とやらに我々との力の差を見せ付けてくるのです。お前が隊長として部隊を編成しなさい、非神5人・上級天使15人・捨て駒の天使達を50人程連れて行くと良い。もちろん道案内役の天使も戦神まで辿り着けば用済みですから一緒に殺しても構いません」
「では早速編成し出発致します」
「ああ、そうだ。もしも負ける様な事が有った場合はあなたの身体を中心に半径5km圏内が瞬時に蒸発する術を掛けてあるのを言い忘れてました。失敗しない様に頼みましたよ」
中級神であろうと、捨て駒の1つとしての利用価値しか見出さない。それがこの世界の神族を象徴する神グルコなのだった。
翌日、早々に準備を整えたバッファ率いる捜索隊はスパウダを飛び立つ。最初の目的地はワイト、およそ1週間後に到着すると最初の殺戮を行う。
下位とはいえ神族が負けたという記憶は消しさらないといけない、戦神が居ない事を確認すると残っていたワイトの住人を1人残らず始末した。子供や赤子も関係無く。そして天使に祈りを捧げた際の気を辿る事でワイトを既に離れた住人まで執拗に追跡し全て消し去った。
「ワイトの民は、全てこの世から居なくなりましたね。これで心置きなく戦神とやらの捜索に専念出来ます」
バッファ率いる捜索隊は偶然にも獣人の里やリッツさんの葡萄畑の方面を最後に回ろうとしていたので、彼らに被害が無かったのがせめてもの救いでは有った。
『そうですね、リュームの街を訪れる際には必ず向かいましょう』
『うむ、これほどの防具を作り出せる男でさえ天才と呼ばれている事を肯定する優れた武器職人とあれば技術もかなり高いだろう。期待出来る筈だ』
「わ、私は盾と同様に武器も護さんとお揃いが良いです」
山小屋を出て数時間、マルトさんの作ってくれた防具は長時間装備していても重さを全く感じない。オッサンの着ている重鎧も暑苦しさを感じないと言っているので、鱗や殻の持つ効果なのだろう。
4人には何かしらの防具は作ってくれたが只1人作ってもらえなかったレミアは、少し拗ねている。
『なんで私には防具を作ってくれなかったのかしら?リュームの街では武器で無くて構わないから私の願いを叶えてくれる杖を作れるか聞いてみたいわね』
「へ~どんな杖が欲しいんだい?」
『調理器具や食材を自在に動かせる様になる杖よ、今の身体だと物を掴むまでに時間が掛かってしまって料理も上達出来ないの。最っ高の料理を作る為にも絶対に必要ね』
究極のイギリス料理を自分でも作れる様になりたいというレミアの野望は、俺達の中ではスパウダよりも遥かに恐い物となっている。前の身体の時のヤミでさえ失神させた料理を自由に作り出せる様になったら・・・スパウダと戦う前に全滅しかねない。
「な、なあレミア。それならさ、リュームに着いたら食べ物の神の助けも借りてイギリス料理を自由に出せる杖を作ってもらうのはどうだ?立派な武器になると思うぞ?」
『ちょっと!何でそんな杖が武器になるのよ!?』
「いや、ヤミさえ気を失う料理は立派な食料兵器だぞ」
『ヤミはね、あまりの美味しさに気を失ったのよ。あの時はわざと酷い事を言っていたけど、また目の前に出されれば涎を垂らしながら食べ始めるわよきっと』
涎を垂らす事は絶対に無いと断言出来る、何故なら俺とレミアの会話をこっそり聞いていたヤミが涎ではなく額から脂汗を流しているからだ。
「護、お願いだからレミアが私にイギリス料理を出そうとしてきたら絶対に止めてね!神族と戦う前に死ぬのだけはイヤ!!」
「安心しろ、俺だって死にたくない。考える事はレミアを除いて皆一緒だ」
ヤミが周りを見ると、天照・トリー・オッサンの3人もアイコンタクトで仲間だと知らせている。
「良かった!食べ物の神の出してくれる護の世界の料理はイギリスを除いてどれも美味しいのに、何故アレだけあそこまで味が違うの?」
「俺に聞かないでくれ・・・あの国の歩んできた食文化が主な原因だから」
「?」
ヤミの会話の中で出てきたスパウダに対して、俺達は甘い考えを抱いていた。俺達がスパウダに入るまで何もしてこないと思っていたのだが、護とヤミが会話しているのととほぼ同時刻にスパウダにおいても1つの動きが有った。
スパウダ神聖帝国の神都アビス、レミアが当初目的地にしていたロレッツに程近いこの都には下位から上位までの様々な神族が暮らしている・・・正確には上位神族の絶対的な支配下にある。中でも上級の神は都の中心部にそびえ立つ【神の塔】から出る事すら無い。中級の神よりも下位の者達に命令を与えるだけだ、逆らおうとする者はその場で処断する。そして命令を受けた者も己よりも下位の者に命令をして憂さを晴らす。延々とその行為を繰り返し最終的に他種族を迫害する事で下位の神族のプライドをかろうじて保っているのが、こちらの世界の神族の姿である。
【神の塔最上階天空の間】この部屋に住む者こそ神族の頂点最高神の位にある、神グルコであった。
コンコンコンコン・・・。部屋の扉をノックする音が聞こえる。
(入りなさい)
「失礼致します」
部屋の中に入ってきたのは、アビス正門の警備からの報告を受けてきたバッファという中級神だ。
「この部屋に中級神の分際で入ろうとは、くだらない用であれば命は無いと思え」
「は、先程正門の警備から報告が入りまして下位の天使が1人全身負傷して帰ってきたとの事」
「その者を直ちに処刑しなさい」
「は!?」
「下位とはいえ、神族の名を汚した者に生きている必要はありません。ただし殺す前にどの種族が手を出してきたのか洗いざらい吐かせる様に」
「はい、実は初めは報告する必要の無い話かと思い私の方でも同様の指示を与えようとしていたのですがその天使が早急にグルコ様の耳に入れるべき事態を告げてきましたものでこうして報告に参上致しました」
「ほう、下位の天使の報告程度がそれほど重大とは思えませんが・・・」
「その天使を負傷させたのが、異世界より来た神族だと申すのです」
「なんだと?」
「名は名乗らなかったそうですが、戦神の肩書きを自称した模様です」
「戦神、それは大変興味が有りますね。しかし、最も優れた種族である我々と同じ種族だと言われるのには虫酸が走ります。その天使の処刑は一時取りやめなさい。ただし処刑を延期させる代わりとして、その者に異世界より来たという戦神までの道案内をさせるのです」
「道案内ですか?」
「バッファ、その戦神とやらに我々との力の差を見せ付けてくるのです。お前が隊長として部隊を編成しなさい、非神5人・上級天使15人・捨て駒の天使達を50人程連れて行くと良い。もちろん道案内役の天使も戦神まで辿り着けば用済みですから一緒に殺しても構いません」
「では早速編成し出発致します」
「ああ、そうだ。もしも負ける様な事が有った場合はあなたの身体を中心に半径5km圏内が瞬時に蒸発する術を掛けてあるのを言い忘れてました。失敗しない様に頼みましたよ」
中級神であろうと、捨て駒の1つとしての利用価値しか見出さない。それがこの世界の神族を象徴する神グルコなのだった。
翌日、早々に準備を整えたバッファ率いる捜索隊はスパウダを飛び立つ。最初の目的地はワイト、およそ1週間後に到着すると最初の殺戮を行う。
下位とはいえ神族が負けたという記憶は消しさらないといけない、戦神が居ない事を確認すると残っていたワイトの住人を1人残らず始末した。子供や赤子も関係無く。そして天使に祈りを捧げた際の気を辿る事でワイトを既に離れた住人まで執拗に追跡し全て消し去った。
「ワイトの民は、全てこの世から居なくなりましたね。これで心置きなく戦神とやらの捜索に専念出来ます」
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