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番外編1 アニマルセラピー?
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クロが加わって以降の家の中での護達の日常風景です、本編に深く関わらないかと思います。
アニマルセラピーとは、動物と触れ合わせる事でその人に内在するストレスを軽減させたり、精神的な健康を回復させる事が出来ると考えられている・・・。
【その1 護の場合】
ぺろぺろ・・・く~んく~ん。
「う~ん、おはようクロ。もう朝かい」
ワン!今日もクロはとても良い仔だ。飼い始めた当初は天照に犬用のペットケージを用意して貰う為に[ペットショップの神]を呼んでもらったのだが、クロは夜中寂しがってどこで手に入れたのか壁を通り抜ける力を得ると俺の布団の中で一緒に寝ようと寝室まで来る様になった。まだ子犬の内は注意するのは止めておいてもう少し大きくなったら1匹で寝る様に躾けるつもりだったが、一緒に寝てみると翌日には寝覚めも良くなり幸せな気持ちで朝を迎えられる様になっていた。
初めて俺の寝室に来た晩、俺は寝ていると急に顔を何やら小さく柔らかい物がペシペシ叩いてきたのを感じて目が覚めた。すると、枕元にクロがちょこんと座っていて顔に頬ずりするともぞもぞと布団の中に入ってきた。
「しょうがない奴だな、今晩だけだぞ」
く~ん、一鳴きすると俺の左肩に頭を乗せてあっという間に寝息を立て始めるクロ。その愛くるしさに俺はクロの頭に顔を寄せながら眠ると凄く癒される気持ちがした。そして翌朝は目覚めもばっちりで尻尾を振りながら顔を舐めてくるクロを見てこれ以上無い幸せをかみ締めていた。
「ケージを用意してもらった天照には悪いけど、クロ大きくなるまで夜は一緒に寝よう」
く~んく~ん!クロも一緒に毎晩寝られると分かった様で大喜びだ。クロ、俺の方こそありがとうな。
【その2 天照の場合】
こんなのは私らしくありません、しかしどういう訳か無性に撫で回したい衝動に駆られてしまいます。あのてくてくと護さんの後を付いて回る愛らしさ、私の顔を見ながら首を傾げる仕草等どれを見ても可愛すぎます!はあ、抱きしめながら床をゴロゴロしたくなりますが我慢我慢。
く~ん? は!?いつの間にかクロが私の足元来ております、駄目ですこれ以上私を惑わさないで下さい。私の心は護さんに捧げた筈なのに、どうしてクロに私の心は奪われそうになるのですか!?
私の心の内の葛藤に気付いていないのかクロは、私の自制心の最後の殻を破らせる恐ろしい行動に出てきました!なんとウットリと目を閉じながら私の足に頭を擦り付けてきたのです。
プチッ!
『ああ、もう可愛すぎます!可愛すぎて死んでしまいそうです!もう我慢できません、一緒にゴロゴロさせてくださ~い!』
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ・・・・・
私は我を忘れてクロを抱きしめたまま居間の床の上をゴロゴロと何度も何度も転がりながら悦に浸る。
『はあ・・・幸せ、こんな幸せを感じる事が出来るなんて思ってもみませんでした』
「一体何をしているんだ、天照?」
声がした方を振り返ると、そこには護さんが生温かい目で私を見ています。
『あ、あのこれは・・その!?』
返答に困る私を見かねたのか、クロは護さんの足元に近寄ると前脚と中脚を乗せながら鳴き声をあげました。
「クロ、もしかして天照に可愛がってもらっていたのか?」
ワン! クロが元気良く鳴くので一応喜んでいたらしい。
「そうか、良かったなクロ。天照もクロを可愛がってくれて有難うな」
(あ~護さんが私に微笑みながらお礼を言ってくれるなんて、今日はなんと幸せな出来事が続くのでしょう!クロ、本当に有難うございます♪)
【その3 オッサン(スサノヲ)の場合】
(まったく護の奴は、竜の次は新たな怪を仲間にしてしまうとは。偶然にしては出来すぎな気もするが、あいつらしいと言えばらしいかもしれぬな)
先日の出来事を思い出しながら我輩は今日も風呂上りの日課の牛乳を腰に手を当てながら飲んでいる、やはり風呂上りに飲む牛乳は最高である!コーヒー牛乳・フルーツ牛乳を飲んで喜んでいる姉上達女性陣は牛乳本来の味をまだ理解出来ていないのではないだろうか!?
そんな事を考えていると、我輩の前にクロが近寄ってきた。どうやら牛乳が欲しい様である。
『おおクロではないか、今日も牛乳を飲みたいのか?』
ワン! やはりクロは我輩と同様に牛乳をこよなく愛している様だな。良い物がきちんと分かる素晴らしい犬(怪)には、褒美として望み通り牛乳をあげないといけない。小さい皿に牛乳を注いでやるとクロは途端に美味しそうに飲み始めた。
『牛乳の良さが分かるお前は見込みがあるぞ、我輩と毎日牛乳を飲んで逞しい肉体を作ろうではないか!?』
我輩の言葉を無視する様にクロは牛乳を飲み続ける。一生懸命に舌で皿を舐めているクロを見ながら我輩は何とも言えない幸福感に包まれるのだった。
【その4 ヤミの場合】
「いい?ちゃんと私に言われた通りにやってくるのよ!」
ワン! クロが元気良く返事をしてくれた、これで明日にはささやかな野望を1つ実らせる事が出来るわ♪
「ねえ、護。私とキスしてみない?」
私が何気なく言った言葉で、護・天照・スサノヲ・トリーの4人が飲んでいたお茶を吹いていた。何か間違った事を言っただろうか?
「ええと・・・ヤミにはまだ早いんじゃないかな~?」
『え、ええ、そうですよ!ヤミさんにはまだ早過ぎますよ!?』
『ヤミよ、もう少しよく考えてから話すのが良かろう』
「ヤミさんがして貰えるのでしたら、わたくしも一緒にして欲しいです・・・」
トリーは私と同じで護にキスして貰いたいみたいだけど、他の3人は早すぎるとかよく考えろとか否定的だった。
「いいもんいいもん!それだったら私にだって名案が有るんだから♪」
私は早速、護の寝室に向かおうとしていたクロを捕まえる。
「ねえ、クロ。これから護と一緒に寝るんでしょ?1つお願いが有るんだけど、どさくさに紛れて護の唇にあなたの口を重ねてきてくれないかな?」
ワオン? クロが不思議そうな顔で私を見てくるが理由を説明している時間が無い、時間を掛けすぎると護がクロが来ないのを心配して探し出すからだ。焦る気持ちを抑えながら、冒頭の様にクロに命令すると急いで私も寝室に戻った。早く明日にならないかな~♪
翌朝、早速私は家の中を回りクロを探した。すると、トイレで用を足しているクロを見つけたので終えた直後を捕まえて誰にも見つからない場所まで連れてきた。
「クロ、私のお願いをきちんと守ってくれた?」
ワン!
「シーッ!他の人に気付かれちゃうでしょ!?でもお利口さんねクロは、では早速」
私はクロの口に唇を重ね合わせる、これで護との間接キスが成立した。
「護~護~!」
何度もキスをする私を嫌がったのか、クロはその場を逃げ出す。そしてしばらくの間クロは私を避ける様になってしまった。
「ちょっとやり過ぎちゃったかな?けど、護との間接キスも出来たし有難うねクロ♪」
【その5 トリーの場合】
(私は護さんを守る為とはいえ、クロのお母さんをこの手で殺してしまいました。クロがきちんと成長するまで見守ってあげないと!)
クロの世話を始めてから今日で何日目でしょう?トイレの場所を教えたり、いたずらをしない様に注意したりと大忙しです。本来ならこれはお母さんの仕事なのでしょうが、クロのお母さんはもう居ません。クロが家の中を元気に走り回る姿を見る度に心が痛みます。疲れを感じ始めていたわたくしは居間のソファーの上で横になるとクロのお母さんを殺してしまった瞬間を思い出してしまいました。
「クロ、お母さんを殺しちゃって本当にごめんなさい」
出てきた涙が頬を伝います、するとわたくしの流す涙を舐めてふき取ってくれる存在が居ました、クロです。クロは小さく鳴きながらわたくしの傷ついた心を癒してくれました。本来はお母さんの敵である筈のわたくしを・・・。
「クロ、本当にありがとう。あなたに心の痛みを癒して貰えるなんて思わなかったわ。もう大丈夫よ、顔を洗ってきたらまた遊びましょうね」
ワン! クロに心配を掛けさせない様にもっとしっかりしないと。クロのお母さんの代わりになると決めたわたくしの贖罪の日々はクロに癒されながら続くのだった。
【その6 レミアの場合】
(クロったら、欲しいなら欲しいときちんと態度に示してくれればいいのにヤミと同じできっと照れているのね)
私は今度どのタイミングで護達の目を盗んでクロに食べさせてあげようか迷っている。それはクロを迎え入れてから数日経ったある日の事、私は食事で今日も美味しいイギリス料理を食べているとクロが他の人達と違う料理を食べている私に興味を持ったのか近づいてきた。
『クロ、もしかしてこの料理を食べてみたいの?』
ワン! クロが鳴くので私は空いている皿に移し変えて食べさせてあげようとした。すると
「レミア、それだけは絶対にしないでくれ。クロを死なせるつもりか!?」
『そうですレミアさん、ヤミさんも以前の元の体で食べた瞬間に気を失っているのですよ。クロにはちゃんとしたご飯を用意して差し上げます』
『レミアよ、クロはな毎晩我輩と一緒に牛乳を飲んでおる。お主の料理を無理に食べさせる必要は無いから安心するがよい』
「レミアさん、クロはお母さんを無くしたばかりなのに自分の命まで失う事になったら悲惨過ぎます。絶対に食べさせないでくださいね」
なんだか、大変失礼な事を4人が次々と言ってくる。それじゃあ、それを毎日美味しく食べている私は一体何なのよ!?しかし、4人はまだまだ考え方が浅いわね。クロの為に、実はこっそり他の皿に既に用意しておいたのよ!
『クロ、今の内に内緒で食べなさい。美味しかったら、また皿に移しかえてあげるから』
こっそり皿を床に置き手招きするとクロはクンクンと匂いを嗅いで少し違和感を感じたようだが、気にも留めずにイギリス料理を口にしてくれた。するとあまりの美味しさに感動したのか、その場で六肢を痙攣させながら倒れこむ。
「おい、クロどうしたんだ?クロ、しっかりしろ!大丈夫かクロ!?」
(護ったら、クロはイギリス料理が美味しくて仕方ないのよ。そんなに慌てなくても大丈夫なのに心配性ね)
その後、クロは私が手招きをするとすぐに護の背中に隠れる様になった。
(本当は食べたい筈なのに護を傷つけない様にしているなんてクロは本当にお利口さんね、そういえばスサノヲさんと風呂上りに毎晩一緒に牛乳を飲むと言っていたわね。今度牛乳にイギリス料理のスープをバレない様に入れておけばきっと喜んでくれるわ!うん、そうしましょう)
それから、しばらく経ったある日の晩台所の冷蔵庫の前で倒れているスサノヲさんとクロが見つかり何故か私は護に1時間ほど正座させられてお説教を受けた。そしてクロは食事をしている私を見てブルブルと震える様になったのだった。
アニマルセラピーとは、動物と触れ合わせる事でその人に内在するストレスを軽減させたり、精神的な健康を回復させる事が出来ると考えられている・・・。
【その1 護の場合】
ぺろぺろ・・・く~んく~ん。
「う~ん、おはようクロ。もう朝かい」
ワン!今日もクロはとても良い仔だ。飼い始めた当初は天照に犬用のペットケージを用意して貰う為に[ペットショップの神]を呼んでもらったのだが、クロは夜中寂しがってどこで手に入れたのか壁を通り抜ける力を得ると俺の布団の中で一緒に寝ようと寝室まで来る様になった。まだ子犬の内は注意するのは止めておいてもう少し大きくなったら1匹で寝る様に躾けるつもりだったが、一緒に寝てみると翌日には寝覚めも良くなり幸せな気持ちで朝を迎えられる様になっていた。
初めて俺の寝室に来た晩、俺は寝ていると急に顔を何やら小さく柔らかい物がペシペシ叩いてきたのを感じて目が覚めた。すると、枕元にクロがちょこんと座っていて顔に頬ずりするともぞもぞと布団の中に入ってきた。
「しょうがない奴だな、今晩だけだぞ」
く~ん、一鳴きすると俺の左肩に頭を乗せてあっという間に寝息を立て始めるクロ。その愛くるしさに俺はクロの頭に顔を寄せながら眠ると凄く癒される気持ちがした。そして翌朝は目覚めもばっちりで尻尾を振りながら顔を舐めてくるクロを見てこれ以上無い幸せをかみ締めていた。
「ケージを用意してもらった天照には悪いけど、クロ大きくなるまで夜は一緒に寝よう」
く~んく~ん!クロも一緒に毎晩寝られると分かった様で大喜びだ。クロ、俺の方こそありがとうな。
【その2 天照の場合】
こんなのは私らしくありません、しかしどういう訳か無性に撫で回したい衝動に駆られてしまいます。あのてくてくと護さんの後を付いて回る愛らしさ、私の顔を見ながら首を傾げる仕草等どれを見ても可愛すぎます!はあ、抱きしめながら床をゴロゴロしたくなりますが我慢我慢。
く~ん? は!?いつの間にかクロが私の足元来ております、駄目ですこれ以上私を惑わさないで下さい。私の心は護さんに捧げた筈なのに、どうしてクロに私の心は奪われそうになるのですか!?
私の心の内の葛藤に気付いていないのかクロは、私の自制心の最後の殻を破らせる恐ろしい行動に出てきました!なんとウットリと目を閉じながら私の足に頭を擦り付けてきたのです。
プチッ!
『ああ、もう可愛すぎます!可愛すぎて死んでしまいそうです!もう我慢できません、一緒にゴロゴロさせてくださ~い!』
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ・・・・・
私は我を忘れてクロを抱きしめたまま居間の床の上をゴロゴロと何度も何度も転がりながら悦に浸る。
『はあ・・・幸せ、こんな幸せを感じる事が出来るなんて思ってもみませんでした』
「一体何をしているんだ、天照?」
声がした方を振り返ると、そこには護さんが生温かい目で私を見ています。
『あ、あのこれは・・その!?』
返答に困る私を見かねたのか、クロは護さんの足元に近寄ると前脚と中脚を乗せながら鳴き声をあげました。
「クロ、もしかして天照に可愛がってもらっていたのか?」
ワン! クロが元気良く鳴くので一応喜んでいたらしい。
「そうか、良かったなクロ。天照もクロを可愛がってくれて有難うな」
(あ~護さんが私に微笑みながらお礼を言ってくれるなんて、今日はなんと幸せな出来事が続くのでしょう!クロ、本当に有難うございます♪)
【その3 オッサン(スサノヲ)の場合】
(まったく護の奴は、竜の次は新たな怪を仲間にしてしまうとは。偶然にしては出来すぎな気もするが、あいつらしいと言えばらしいかもしれぬな)
先日の出来事を思い出しながら我輩は今日も風呂上りの日課の牛乳を腰に手を当てながら飲んでいる、やはり風呂上りに飲む牛乳は最高である!コーヒー牛乳・フルーツ牛乳を飲んで喜んでいる姉上達女性陣は牛乳本来の味をまだ理解出来ていないのではないだろうか!?
そんな事を考えていると、我輩の前にクロが近寄ってきた。どうやら牛乳が欲しい様である。
『おおクロではないか、今日も牛乳を飲みたいのか?』
ワン! やはりクロは我輩と同様に牛乳をこよなく愛している様だな。良い物がきちんと分かる素晴らしい犬(怪)には、褒美として望み通り牛乳をあげないといけない。小さい皿に牛乳を注いでやるとクロは途端に美味しそうに飲み始めた。
『牛乳の良さが分かるお前は見込みがあるぞ、我輩と毎日牛乳を飲んで逞しい肉体を作ろうではないか!?』
我輩の言葉を無視する様にクロは牛乳を飲み続ける。一生懸命に舌で皿を舐めているクロを見ながら我輩は何とも言えない幸福感に包まれるのだった。
【その4 ヤミの場合】
「いい?ちゃんと私に言われた通りにやってくるのよ!」
ワン! クロが元気良く返事をしてくれた、これで明日にはささやかな野望を1つ実らせる事が出来るわ♪
「ねえ、護。私とキスしてみない?」
私が何気なく言った言葉で、護・天照・スサノヲ・トリーの4人が飲んでいたお茶を吹いていた。何か間違った事を言っただろうか?
「ええと・・・ヤミにはまだ早いんじゃないかな~?」
『え、ええ、そうですよ!ヤミさんにはまだ早過ぎますよ!?』
『ヤミよ、もう少しよく考えてから話すのが良かろう』
「ヤミさんがして貰えるのでしたら、わたくしも一緒にして欲しいです・・・」
トリーは私と同じで護にキスして貰いたいみたいだけど、他の3人は早すぎるとかよく考えろとか否定的だった。
「いいもんいいもん!それだったら私にだって名案が有るんだから♪」
私は早速、護の寝室に向かおうとしていたクロを捕まえる。
「ねえ、クロ。これから護と一緒に寝るんでしょ?1つお願いが有るんだけど、どさくさに紛れて護の唇にあなたの口を重ねてきてくれないかな?」
ワオン? クロが不思議そうな顔で私を見てくるが理由を説明している時間が無い、時間を掛けすぎると護がクロが来ないのを心配して探し出すからだ。焦る気持ちを抑えながら、冒頭の様にクロに命令すると急いで私も寝室に戻った。早く明日にならないかな~♪
翌朝、早速私は家の中を回りクロを探した。すると、トイレで用を足しているクロを見つけたので終えた直後を捕まえて誰にも見つからない場所まで連れてきた。
「クロ、私のお願いをきちんと守ってくれた?」
ワン!
「シーッ!他の人に気付かれちゃうでしょ!?でもお利口さんねクロは、では早速」
私はクロの口に唇を重ね合わせる、これで護との間接キスが成立した。
「護~護~!」
何度もキスをする私を嫌がったのか、クロはその場を逃げ出す。そしてしばらくの間クロは私を避ける様になってしまった。
「ちょっとやり過ぎちゃったかな?けど、護との間接キスも出来たし有難うねクロ♪」
【その5 トリーの場合】
(私は護さんを守る為とはいえ、クロのお母さんをこの手で殺してしまいました。クロがきちんと成長するまで見守ってあげないと!)
クロの世話を始めてから今日で何日目でしょう?トイレの場所を教えたり、いたずらをしない様に注意したりと大忙しです。本来ならこれはお母さんの仕事なのでしょうが、クロのお母さんはもう居ません。クロが家の中を元気に走り回る姿を見る度に心が痛みます。疲れを感じ始めていたわたくしは居間のソファーの上で横になるとクロのお母さんを殺してしまった瞬間を思い出してしまいました。
「クロ、お母さんを殺しちゃって本当にごめんなさい」
出てきた涙が頬を伝います、するとわたくしの流す涙を舐めてふき取ってくれる存在が居ました、クロです。クロは小さく鳴きながらわたくしの傷ついた心を癒してくれました。本来はお母さんの敵である筈のわたくしを・・・。
「クロ、本当にありがとう。あなたに心の痛みを癒して貰えるなんて思わなかったわ。もう大丈夫よ、顔を洗ってきたらまた遊びましょうね」
ワン! クロに心配を掛けさせない様にもっとしっかりしないと。クロのお母さんの代わりになると決めたわたくしの贖罪の日々はクロに癒されながら続くのだった。
【その6 レミアの場合】
(クロったら、欲しいなら欲しいときちんと態度に示してくれればいいのにヤミと同じできっと照れているのね)
私は今度どのタイミングで護達の目を盗んでクロに食べさせてあげようか迷っている。それはクロを迎え入れてから数日経ったある日の事、私は食事で今日も美味しいイギリス料理を食べているとクロが他の人達と違う料理を食べている私に興味を持ったのか近づいてきた。
『クロ、もしかしてこの料理を食べてみたいの?』
ワン! クロが鳴くので私は空いている皿に移し変えて食べさせてあげようとした。すると
「レミア、それだけは絶対にしないでくれ。クロを死なせるつもりか!?」
『そうですレミアさん、ヤミさんも以前の元の体で食べた瞬間に気を失っているのですよ。クロにはちゃんとしたご飯を用意して差し上げます』
『レミアよ、クロはな毎晩我輩と一緒に牛乳を飲んでおる。お主の料理を無理に食べさせる必要は無いから安心するがよい』
「レミアさん、クロはお母さんを無くしたばかりなのに自分の命まで失う事になったら悲惨過ぎます。絶対に食べさせないでくださいね」
なんだか、大変失礼な事を4人が次々と言ってくる。それじゃあ、それを毎日美味しく食べている私は一体何なのよ!?しかし、4人はまだまだ考え方が浅いわね。クロの為に、実はこっそり他の皿に既に用意しておいたのよ!
『クロ、今の内に内緒で食べなさい。美味しかったら、また皿に移しかえてあげるから』
こっそり皿を床に置き手招きするとクロはクンクンと匂いを嗅いで少し違和感を感じたようだが、気にも留めずにイギリス料理を口にしてくれた。するとあまりの美味しさに感動したのか、その場で六肢を痙攣させながら倒れこむ。
「おい、クロどうしたんだ?クロ、しっかりしろ!大丈夫かクロ!?」
(護ったら、クロはイギリス料理が美味しくて仕方ないのよ。そんなに慌てなくても大丈夫なのに心配性ね)
その後、クロは私が手招きをするとすぐに護の背中に隠れる様になった。
(本当は食べたい筈なのに護を傷つけない様にしているなんてクロは本当にお利口さんね、そういえばスサノヲさんと風呂上りに毎晩一緒に牛乳を飲むと言っていたわね。今度牛乳にイギリス料理のスープをバレない様に入れておけばきっと喜んでくれるわ!うん、そうしましょう)
それから、しばらく経ったある日の晩台所の冷蔵庫の前で倒れているスサノヲさんとクロが見つかり何故か私は護に1時間ほど正座させられてお説教を受けた。そしてクロは食事をしている私を見てブルブルと震える様になったのだった。
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