異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。

いけお

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第57話 キスト入国

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「護、今日は天気も良いですから外で銃を撃ちませんか?」

射撃大会から2日後の朝、天照が朝食を食べながらそんな事を言うので俺は無言で席を立つと天照の頭を後ろからチョップしてやった。

「お前はサブマシンガンの撃ち過ぎでおかしくなっているだろ!?外で銃を撃って、もし人に当たったらどうするつもりだ!?」

天照は頭を抑えながら反論してくる。

「でも護は以前高射砲や対空ミサイルを使っているじゃないですか?空から落ちてきた破片がもし人に当たっていたらどうするおつもりでしたか!?」

「ぐっ!?」

破片よりも攻撃を受けて空から落ちてきた神族達に当たった場合の方が被害が大きいのだが、天照の言おうとしている事も分かる為強くは言えなくなった。

「それに滑空砲や榴弾砲なんて普通の防具を着込んでいる程度では風穴が空きますよ?」

(風穴で済めば良いけど、まず1発で肉片に変わると思うが?)

護は今更ながら、自分の作ってもらった理想の家(要塞?)がとんでもない代物だと理解した。

「とりあえず水と食材も買い込んでおきましたし、今日はいよいよペクチを出発してキストへ入国ですね」

「そうだな、レミアが愛妻料理の練習の為に材料が必要だから食材を選ぶのに時間が掛かっていたからね」

『な、何を言い出すの護!?わ、私は愛妻料理の練習なんてして・・・いないわよ』

「まあ、そういう事にしておこう。タケミカヅチ、ラメル末永くお幸せに」

『護、茶化さないで!あと、タケミカヅチとラメルは浮ついた顔をしない!?』

レミアの表情がどんどん豊かになるので、気付けば事ある毎に茶化して楽しむ様になっていた。2人で仲良く食事しているヤミとチィはキストに対して思う所があるようだ。

「キストか・・・私が現れたらキストの民は一体どう思うのかな、ヤミ?」

「きっと喜んでくれるよ、特にクトアがね。クトアと会うのも久しぶりだから私結構楽しみなんだ♪」

「ヤミがそこまで言うのだから、今の魔王は良い人物なのね」

「怒り狂った火が唯一認めた相手だから当然だよ、火もチィが生き返ったって表現が正しいのか分からないけど元の姿に戻った事を知ったら護の仲間として一緒に付いてこようとするかもよ?」

ヤミとチィの会話を横から聞いていると、チィと火竜はとても仲が良かったのだろうか?

「なあヤミ、チィと火竜って仲が良かったのか?」

「仲が良いっていうか、火がチィにぞっこんだった」

「へっ!?」

「火がチィに構ってもらいたくて、よく喧嘩吹っかけてたけどチィの尻尾で返り討ちに遭って皆に呆れられるのが日課だったかな?」

「あの子ももう少し素直だったら2~3年位は隣に居るのを許したかもしれませんが・・・」

チィも何やら呆れ気味に答えている、火は好戦的なイメージが強いけどチィに一方的に懐いていたって表現が正しいみたいだ。

「ええと・・・それじゃあ、チィがスパウダの連中に討たれた時に火竜が怒り狂った理由はもしかして?」

「多分、護の予想通りだと思うけど好き好き大好きな地竜が討たれたもんだから火竜が守ろうとしなかった者達に怒りをぶつけているだけ」

「じゃあ、もしも討たれたのがヤミの場合だったら?」

「あそこまで怒る事は無かったんじゃないかな?倒されてしまうとは情けないとか吐き捨てるかもしれない」

「もしも、そんな事を言うようでしたら私は火と絶交してましたね。逆に私が火と同じ様に怒り狂ったかもしれません」

「チィは私が討たれたら怒ってくれるの!?」

「ええ、勿論!火よりもあなたの方が大切ですもの」

「そう言ってもらえると嬉しいかもエヘヘ♪」

竜族の考え方は何か違う、同族だろうと気に入った相手以外は眼中に無いみたいで・・・。

「でもでも!私は護がもしも討たれたら世界を焼き尽くす位に怒るだろうから安心してね♪」

(俺が殺された後の話はしなくて結構です!?)

「そういえば、トリーの姿が見えないけど体調でも悪いの?」

「あ~いや、その~なんだ。トリーは今寝室で寝ている」

「トリーお寝坊さんだ、私が内線で起こしてきてあげようか?」

ヤミが食堂の内線の子機に手を伸ばそうとするので、俺は慌てて止めた。

「ヤミ、起こさなくていいよ。トリーはさっき寝た所だから」

「トリー、何か徹夜でもしていたの?」

ヤミはまだ気付いていない様だが、天照にチィとレミアは昨晩トリーの身に何が起きたか薄々分かっているので顔を赤くしている。

「すまないがヤミ、これ以上はこの場では話せないが俺がトリーを一晩中寝かさなかっただけだ」

俺の最後の一言でタケミカヅチとラメルが盛大に味噌汁を吹き出す、下品だぞお前ら。

「ま、護殿。朝からそんな生々しい話はよしてくれ!?」

『ヤミ殿もいい加減気付いてくれ、おなごから聞くものでは無い』

「え~!?何で聞いちゃいけないの?」

ヤミがしつこく聞いてくるので居た堪れなくなったのか、チィがヤミにそっと理由を説明した。

「ヤミ・・・トリーさんは一晩中、護さんに抱かれていたって事なのよ。だから疲れて寝ているの」

ヤミはチィから聞かされてやっと気が付いたらしく、途端に顔を真っ赤にした。

「わ、私ったらなんて事を」

両手で顔を隠しながら、ヤミは食堂を飛び出して行く。そして余程恥ずかしかったのか夕食の時間まで寝室から出てこなかった。

「ヤミが寝室から出てこないけど、今日中にキストに入国しておきたいから出発しよう。クロ、今日もよろしく頼むよ」

「ワカッタ、オレ、マモルパパ、ハコベテ、スゴクタノシイ」

「お前は本当に良い奴だな」

俺が真ん中の頭を撫でてやると残りの頭が俺の顔に頬ずりしたり舐めてくる。5分もしない内に顔中涎塗れになった。天照からタオルを渡されて顔を拭きながら気を取り直して再度クロにお願いする。

「クロ、今日はキストの魔王の城に出来る限り近付きたい。国境を越えたらラメルの指示に従う様にしてくれ」

ワン! クロの鳴き声が周囲に轟くと犬車がゆっくりと動き始め徐々にスピードを上げていく。走り始めてから1時間ほど経った時に御者台に居るラメルから連絡が入った。

「護殿、今右前方から不審な騎馬集団が接近しているのをレーダーが捉えた。騎兵くずれの盗賊達かもしれない、少し注意してくれ」

この連絡を聞いた天照が天にも昇りそうな表情で喜んでいる、お前もしかしてアレを撃てると思っているのか!?

「天照、とりあえず上に昇って様子を見よう。ラメルからの報告通り盗賊だったとしてもクロの足なら十分引き離せる。サブマシンガンを撃ちたくて仕方ないみたいだけど、お願いだから自重してくれ」

途端に天照は地獄に突き落とされた様な顔に変わる、誰だ一体こいつをトリガーハッピーにしやがったのは!? ・・・俺だ。

3階から外を窺っていると、騎馬の集団が見えてきた。しきりに弓矢をこちらに向けて放っている様だがクロの足が早い為か1発も当たらない、どうやらこのまま相手をせずに済みそうだ。そう思っていたが天照は目の前でカモがぶら下がっている状態に我慢が出来なくなったらしい。キャラが変わりだした。

「クロ、足が早過ぎるからもっと緩めなさい!ラメルはパネルを操作して屋根を開放、私が彼らを何時でも攻撃出来る様にしてちょうだい!!」

ワン! 「は、はい!?」

クロとラメルが天照の普段と違う気迫に押されて言う事を聞いてしまう、屋根が開き始めると天照は床の武器庫から2丁のサブマシンガンを取り出すと替えのマガジンを巫女服の隙間に詰め込み始めた!腋の隙間にもマガジンを押し込む所為で胸が露になっているのに天照は全く気にしていない。これから撃つ事だけしか考えてないみたいだ。

「あはははは!?やっと生きた的が出て来てくれましたわ!動かない的に飽き飽きしてたから、懸命に逃げて良い練習台になってくださいな!?」

言い終わらない内に天照が両手に持った2丁のサブマシンガンを乱射し始めた、馬上に居た者は至近距離から撃たれ走る馬から落ちると後続の馬に踏まれ絶命し、馬に命中して落馬した者も同様に踏まれていた。見た事も無い武器の攻撃を受けた盗賊達は慌てて反転して逃げようとするがキャラが変わった天照がそれを許す訳も無い。

「私が逃がすとでも思っているのですか?きっとあなた達はこれまでも同様に多くの人を襲っていたに違いありません、だからこの場で私が罰を与えましょう。クロ!こちらも反転して彼らを追いかけなさい!?」

クロが返事もせずに反転しだした、飼い主は俺の筈なのに・・・。あっという間に逃げた盗賊達に追い付くと、天照の眼に更に怪しい光が輝いた。

「さあ、ここからは狩りのお時間ですよ。死にたくなければ本気で逃げなさい!中途半端な逃げ方では命を落としますよ」

(天照、今のお前の姿はスパウダの連中と重なりかけているぞ)

だが俺もこの時は正直怖くて天照に直に言う事は出来なかった。その代わり、後でお仕置きしてやろうと心の内で誓っていた。盗賊達を狩り尽くしてようやく落ち着いたのか天照は元の状態に戻った。

「あ~すっきりした!やはり、実戦練習に勝る物はありませんね護」

俺は返事もせずに天照をまず下の階に降ろすとクロに当初の進路に戻る様に頼んだ。

「ラメル、申し訳無いが迂闊に接近を伝えると天照の奴はああなってしまうから、次からは交戦不可避の状態になったら教える様にしてくれ」

「そうですね・・・その方が良いと思います。急に人が変わって正直驚きました」

「ああ、後でお仕置きしておくから今日は勘弁してやってくれ」

スルファムの国境の関に居た兵士に道中で騎馬の盗賊集団に襲われた事と返り討ちにして路上に死体が転がっている事を伝えると数人が慌てて向かっていった。俺達が逆に襲ったのかもしれないと疑われてしまったが、そこはチィが元の姿に戻る事で力ずくで納得させた。そしてスルファムの国境を過ぎて少ししてキストの国境の関が見えてきた。

「止まれ!」

関を守る兵士達の前で犬車を止める、兵士達は初めて見るクロの姿に恐怖を抱いていた。

「任務御苦労!くれぐれも無理をしない様に頼むぞ」

ラメルが御者台から兵士達に労いの言葉を掛けた。

「あ、ラメル様!お元気そうで何よりです。確かラメル様は闇竜様の所へ向かった筈では?」

「それが話が変わってきてな、これから至急母上に報告してそのままランベリーに向かいその後ここに居る者達とスパウダを滅ぼす為に戦いを挑む」

「スパウダと戦うって正気ですか!?」

「正気だ。この場には居られないが闇竜様、いやヤミ様も共に戦ってくださる。それとこちらに居る方を見れば母上もとても喜ばれるだろう。地竜様、いえチィ様が再誕されたのだ!」

ラメルが興奮した様に話すと兵士達はチィにすぐに跪くと過去の件を謝罪した。

「地竜様、前魔王に逆らう事が出来なかったとはいえ大恩あるあなた様の引き継ぎを守る事が出来ず申し訳ありませんでした!」

「その件はヤミ達から話は聞いているから、謝らなくていいよ。人の事情はそれぞれだしね」

「はっ!!」

魔族の中でチィは悔いても悔い切れない存在なのだと再確認させられた、もう少し先に進もうかと悩んだが日も暮れ始めてきたので今日はここで泊まらせて貰う事にした。関の兵士達は関の隣に突如出現した家に驚きつつも地竜達がすぐ近くに居る事に安心感を抱く者も居た。

「今日の私は大活躍でしたわよね、護!?」

夕食の時間、天照が今日の活躍(?)を自慢気に話していた。ようやく寝室から出てきたトリーとヤミも一緒に食事をしている。俺は天照にお仕置きを与えるべくゆっくりと背後に回った。

「今日は大活躍だったな、天照」

「そうですよね!?護」

「済まないが流石にお前のアレはやり過ぎだから今日はお仕置きとして寝かすつもりは無いから覚悟しろ」

そう言うと、天照を引っ張りながら俺の寝室に向かう。天照はこれから行われる事に恐怖を覚えトリーに助けを求めた。

「ト、トリー!私1人じゃとても相手出来ないの、だから一緒に来て頂戴!?」

トリーは天照の求めに応じる事は無く、返答の代わりに合掌した。

「ラメルさん達から聞きましたが、自業自得です。私は当分相手を出来ませんから護、満足するまで天照さんを可愛がってあげてください」

「この裏切り者~!?」

2人の姿が食堂から消えると、何事も無かったかの様に夕食が再開された。しかし、この中でヤミだけは2人を見ながら朝の会話を思い出していた。

(これから天照は一晩中、護に抱いてもらうんだ。前に夜の護は野獣そのものと言っていたけど護の方から求められるなんて羨ましいな)

そう思うながら、ヤミは自分の胎をさする。

(私も護に抱いてもらいたい、そして護との子を産みたい)

ヤミもまた、1人の女として護に身も心も愛されたいと強く願う様になりつつあった。



この作品中では使えない思い付きが幾つか浮かんで勿体無いので【スキルメーカー ~運命を変えた非常識なスキル~ 】と【異世界タクシー ~お客様は様々です~ 】の連載も開始しております。色んな方の感想が励みにもなったり勉強させられる部分もありますのでお気づきの点有りましたら感想よろしくお願いします。
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