スキルメーカー ~運命を変えた非常識なスキル~

いけお

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第22話 アーレッツ脱出

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「・・・う~ん」

窓から刺し込む日の光でウィルは目覚めた、日が昇る前に宿を出るつもりが寝すぎてしまったらしい。

「おはようウィル、よく眠れた?」

よく見ると、リーンが裸のままウィルを膝枕をしていてくれたらしい。静かな微笑と日の光がリーンの姿を神々しく見せウィルは見惚れてしまう。

「とても綺麗だリーン、まるで女神だ」

「なら私はあなたの幸せを呼んであげるわ、今欲しい物は何か有るかしら?」

「今欲しい物はリーン、君だよ」

ウィルはリーンを再び抱こうとするが、リーンはその誘いをやんわりと断る。

「ふふふ、駄目よ。夜が明ける前に宿を出るって言っていたのでしょ?長居をすると宿の主人に迷惑を掛けてしまうわ」

ウィルは残念そうな顔をするが、リーンの言う通りこのまま居ると宿の主人や客に迷惑を掛けてしまう。起き上がりながら次の機会を待つ事にする。

「リーンの言う通りだ、あまり長居するのは迷惑を掛けちゃうな。代わりにこれを貰うよ」

言いながら、ウィルはリーンと口付けを交わす。そして2人で旅の支度を整えると宿を出る為にフロントへ向かう。フロントは3階から上の階で泊まっていたらしい客で溢れかえっていた。

「おい、早くチェックアウトさせてくれ!」

「この付近に人殺しがまだ潜んでいるのでしょ!?危険だわ!」

昨日は居なかったがフロントには女性の従業員が出て対応に追われていた。

「お客様、こちらへ・・・」

宿の主人がウィルにそっと近づくと裏口を案内してくれた。

「2人の宿泊料をまだ払ってないけど大丈夫なの?」

「昨日渡して頂いた金貨で十分頂いております、ですからここからお話する事も過分に頂いた料金分のサービスです」

宿の主人はウィルに耳打ちした。

「町の衛兵達が死体を確認して、王の密偵達だと判明。夜明け前に既に早馬が首都に向けて出ております、それと衛兵達が町の入り口の門を全て閉鎖して検問を行っております。それから、これをご覧下さい」

宿の主人が見せてくれたのはウィルとリーンの手配書だった。罪状はウィルが偽の金貨を使用した詐欺容疑でリーンは偽金貨を使わせる為に潜入した詐欺一味にされていた。

「これは!?」

「どうやら、無実の罪を着せて反抗されたのでその場で処刑したって筋書きにするみたいです。あなた様のお力なら、検問を軽く突破出来ると思いますがそれを処刑の口実にするつもりでしょう」

「何故ここまで教えてくださるのですか?」

「長年、宿を営んでいると人を見る目も育つのですよ。昨晩は疑うフリをして様子を見ましたが、あなた様は嘘を言わなかった。正直に本当の事を言ってくれる客に迷惑を掛ける行いをするのは宿の主人として失格です」

「ありがとう」

「さあ、ぐずぐずしていると周辺の町や村から事の真相を知らない連中が王の言う事だけを信用して殺到してきます。早くお逃げください」

「分かった、でもその前にお礼だけさせてよ」

「お礼?」

ウィルは近くにあったロープを手に取ると宿の主人を縛り上げた。

「これは?」

「こうしておけば、裏口から逃げようとする俺達に縛り上げられた被害者になれるだろ?」

「後々のご配慮に感謝します、全て無事に解決しましたらまたこの宿をご利用ください」

「うん、そうさせてもらうよ。それじゃ」

ウィルはメドルから馬車を受け取る為に宿の裏口から東へ向かった、そして丁度入れ替わる様に正面の入り口から衛兵達が駆け込んでくる。

「おい!この手配書によく似た者がこの宿に入ったと知らせが有った。宿の主人はどこだ?」

女性従業員に案内されて裏口の方へ進むと、主人がロープで縛り上げられていた。

「おい、一体誰にやられたんだ!?」

「良かった、助けてくれ!?手配書の2人にいきなり襲われて縛り上げられたんだ。2人は西の門を強引に突破する為の相談をしていた」

「西の門だな?」

「はい、確かに西門を抜けて逃げようと言っておりました」

「ご協力感謝する、急ぎ西門に衛兵を集結させろ!絶対に突破を許すな」

衛兵達が慌しく出て行く姿を見ながら、宿の主人は2人の無事を祈った。

(私に出来るのはここまでです、どうかご無事で)

ウィルとリーンはメドルの店を訪れていた。

「お前さん、随分ど派手な事をやらかしたみたいだな。この店にも手配書が既に届いているよ」

「俺達を売るつもり?」

ウィルは剣の柄に手を伸ばした、いざという時はメドルを斬る覚悟も決める。

「まさか!?ダンジョンをクリア出来るほどの実力の持ち主が詐欺をする必要など無いだろう。嘘だとすぐに分かったよ」

メドルは悪戯っぽくウィンクまでしてみせた。その時、店の入り口が勢い良く開く音がすると中に衛兵が雪崩れ込んで来た!

「まずい、急いで馬車の中に入り身を隠して下さい!」

メドルに言われるまま馬車の中に入り身を伏せる、馬車の扉にメドルが鍵を掛けるとウィルは一瞬騙されてしまったかと疑ってしまった。

「手配されている2人の男女が未だ見つからない、今町中の捜索を行っている所だ。協力しない場合は、仲間だと判断し捕縛する」

「おやおや、随分と物騒な物言いだね。確かに偽の金貨で騙そうとするなんて悪い奴も居たもんだ。協力させてもらうから自由に探すがいいさ」

(メドルさん!?やっぱり俺達を売るつもりか!)

ウィルは息を潜めながらもし扉が開かれた時は、店の中に居る全員を殺してでもリーンだけは守ろうと誓う。衛兵達は店の中を順に捜索し、最後にウィル達が隠れている馬車の前まで来た。気配を感じたウィルは静かに剣に手を伸ばす・・・。

「済まないがその馬車の中を改めるのだけは止めてくれないか?」

メドルが突然衛兵達に語りだす。

「どういうつもりだメドル?まさか、お前この馬車の中に匿っているのか!?」

「そうじゃない、その馬車はリーデガルド前大公殿下からの特注品でな。職人とわし以外で内部の作りを知る者が出てしまうと不幸な事故が起きかねないから忠告しているだけだよ」

「リ、リーデガルド前大公殿下の注文であれば仕方無いな。我々も事故に遭いたくは無い、店の中を騒がしてしまい済まなかった」

衛兵達は店の中から出て行った、しばらく様子を見た後メドルは馬車の扉に掛けた鍵を外しウィル達を馬車から出す。

「心配掛けさせてしまったみたいで済まなかったな、もう大丈夫だぞ」

メドルを疑ってしまったウィルは深々と頭を下げて謝罪した。

「メドルさん、済まなかった。俺はメドルさんに売られてしまったかと一瞬疑ってしまった」

「それくらい慎重でいた方がこれからは安全だよ、ただこの馬車で動くと目立ってしまう事になるな」

「それなら大丈夫です」

ウィルは馬車を携帯保管庫に入れた、目の前に有った馬車が消えたので流石のメドルも驚きを隠せない。

「お前さんは、そんな力も持っていたのかい!?」

「他の人には出来るだけ教えないでね?」

「あ~教えたって誰も信じるものか。夜になるまでここに居て、闇夜に紛れて町を出て行くと良い」

「ありがとう、メドルさん。ところで、リーデガルド前大公の名前を使って大丈夫なのですか?」

「大丈夫だよ、あいつは王の妹と結婚した元騎士でわしの幼馴染だ。何度も王を諌めたのが原因で息子に大公位を譲る羽目になったが、時折昔話をしにこの店に来ているのは町の皆も知っている事だ。事情を説明すれば話を合わせてくれるから気にするな」

(リーデガルド前大公か、王の周囲にもそんな良識有る人が居るとは思わなかったな。リーンにとっては義理の叔父にあたるのか)

それから夜になるのを待ちメドルの店を後にした。西側の門に衛兵が何故か集中しているので、リーンを抱えながら素早く町の東側の砦壁に登るとリーンに話しかける。

「今から、ここを飛び降りる。大丈夫だから俺を信じて」

「あなた以上に信じられる相手などおりません」

リーンはウィルの頬に口付けしながら頷いた、それを合図にウィルは飛び降り闇の中へ消えていく。こうして、首都アルストリアを目指すウィルとリーンの逃避行が始まった。
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