スライムばかり食べてた俺は、今日から少し優雅な冒険者生活を始めます。

いけお

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第23話 進化する【女の天敵】

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酢漬けイカ(オーベロン)を食べた事によりハジメは【三枚おろし】・【魔法剣】・【気配希薄化】・【夏の夜の夢】を会得した。最初に試食したセシリアの場合は何故か【飾り包丁】を会得している。


【魔法剣】は持っている剣の刀身に覚えている魔法を付与出来る能力だったのだが、試しに使用してみるとフレイムとスパークは刀身にそのまま残ったがソニックとアイスブリッドは振り下ろした方向に飛んでいく飛び道具に近くなっており振り下ろすまでの動作の分攻撃が遅くなるのでこの2種の魔法剣としての実用性は低いと思われた。

次に【三枚おろし】は素早い連撃で3枚に下ろす剣技かと思われたが・・・魚の捌き方の方の三枚おろしだった。オーベロンは剣を使って魚でも捌いていたのだろうか?余談ではあるが、ランも酢漬けイカを食べて【三枚おろし】を会得している。モンスターを食べて簡単に魚の捌き方の基本をマスターした2人を見たら、料理人の方々はきっと怒るかもしれない。

【気配希薄化】は己の気配をネズミや虫並に希薄化させる事で接近を誤認させる能力だった、達人は気配を消して接近する者にも気付けるらしいのだがネズミ程度の接近で一々起きていたら身体が保たない。なので、頭の中のスイッチを殺気を抱く者と気配を消して近付く者に反応した際にONになる様に調整しているそうだ。

そして最後の【夏の夜の夢】は・・・大体の予想が付いているので、この場では試さない。



酢漬けイカを倒しルピナスの危機を回避したハジメ達3人は町に戻るとミリンダに詳細を報告する、まだ会議室に残っていてその話を聞いたアーシュラさんは

「私の名前を聞いただけで逃げ出すなんてとんだ意気地無し達ね、今から追いかけて再教育してあげようかしら?」

などと物騒な事を言い出すのでミリンダやお目付け役の爺に止められていた。しかし今日も一緒に会議に同席していた始の様子が急に変わっていたのが少し気になった、これまでの根拠の無い自信の塊みたいな態度から男のプライドをへし折られた様な心に傷を負った様な顔になっていたからだ。心配になって問い質してみたが

「俺は大丈夫だ、大丈夫だ、大丈夫だ・・・」

っと返事をしたのでそれ以上聞くのは止めた。微かに『俺は早くない・・・短くない・・・細くない』とブツブツと小声が聞こえた気がしたが多分気のせいだろう。

「そういえば、ミリンダさんは普段ギルドの仕事を終えると俺達と同じ様に家に帰るのかな?」

何気無い質問を装ってハジメはミリンダの寝泊りする場所を聞いてみた、これまで散々利用されてきた仕返しをする為だ。

「書類整理や何だかんだで終わるのが深夜に近いから、ギルド長室の隣に寝所を設けて普段はそこで寝泊りしているわ。でも夜勤の職員も居るから寝込みを襲おうとしても無駄だからね」

「そ、そんな真似する訳無いじゃないですか!お、俺にはセシリアが居るんですから」

「ハジメ様、私も居るのを忘れていませんか?」

隣にランが居るのを失念して誤魔化すのに必死になっているハジメの顔をアーシュラが何故かニヤニヤしながら見ていた。



その日の晩、夕食を終えて早めに寝るとセシリアが眠っているのを確認してからハジメは気付かれない様に家を出た。闇に紛れながらギルドの建物まで残り300m程まで近づいた時、ハジメは何者かに肩を叩かれた。

「こんな夜更けにどこに行くの?ミリンダさんの寝込みを襲おうと考えているなら、それ以上近づかない方が良いわよ」

「アーシュラさん!?」

アーシュラさんは口元に人差し指を当てて、ハジメに声を出さない様に促した。

「あんな分かり易い仕込みをすれば、私だけじゃなくミリンダさんだってすぐにあなたが夜訪れる事に気付くわ。迎え撃つ準備を今頃きっと整えている筈よ」

どうやら俺の考えていた事は2人にはバレバレだった様だ、だが諦めて帰ろうとするハジメの肩をアーシュラさんは離そうとしない。

「セシリアさんとランの2人を朝まで目覚めない様に強制的に熟睡させているのに何もせず帰られたら折角のお膳立てが無駄になっちゃうわ、私がアドバイスしてあげるからミリンダを手篭めにしちゃいなさい」

アーシュラさんは止める所か逆に煽ってくる、何考えているんだこの人は!?

「【気配希薄化】をどうやら会得したみたいだけど、ミリンダが気配を察知出来る範囲は凡そ300m。これ以上近づいてから人の気配が急にネズミに変われば嫌でも感付かれてしまう。だから、この位の距離から【気配希薄化】を使えば気付かれずに建物に接近出来るわよ」

ハジメが【気配希薄化】を会得した事に気付いただけでなく、ミリンダの気配を察知する範囲まで短時間で把握してしまったアーシュラさんはやはりとんでもない化け物だった。

「それからミリンダが夜勤の職員も居ると話していたでしょ?だから、これをあなたにあげるわ」

そう言うとアーシュラさんが、突然ハジメと唇を重ね合わせた。

「!?」

「しっ、少しの間動かないで」

両手で顔を押さえつけられたハジメは顔を離す事が出来ない、そうこうしている内にハジメの脳裏に変なテロップの様な物が流れた。


『アーシュラからハジメに【遮音結界】が伝授されました』


アーシュラがゆっくりと顔を離したのでハジメは与えられた能力について聞いてみる事にした。

「【遮音結界】?」

「それを使えばミリンダの居る寝所から外に音が洩れる事は無いわ、朝になってあなたが勝ち誇った顔でいるか情けない顔を見せるのか楽しみにしているわ」

満足気な顔で闇の中に消えていくミリンダの背中を見ながら、ハジメは唇に残った柔らかな感触を思い出していた。



(折角返り討ちにしてあげようと、色々と準備をしておいたのに今晩は無駄になりそうね。あんな事を聞いてくれば近い内に私の寝込みを襲いますって自分から言っている様なものなのにね)

ギルド長室隣の寝所のベッドの上でミリンダは考えている事がバレバレな異色のハズレ勇者について考えていた。これまで良い様に利用されてきた仕返しをしようとでも考えたのだろうが、自分から簡単に気付かれる様な聞き方をしてくる辺りまだ自分に仕返しするのは百年早い。そんな事を考えている内にミリンダは喉の渇きを感じた。

「今晩は来ないみたいだし、水でも飲んでくるか」

ベッドから立ち上がり扉に向かおうとした時、ミリンダの背後から突然声がした。

「蜘蛛縛り」

首から下半身までを糸でグルグル巻きにされ身動きが取れなくなったミリンダの前に立っていたのはハジメだった。

「あなた何時の間に!?」

「ミリンダが油断するのを1時間ほど天井裏で待っていたよ」

「私の気配察知には何の反応も無かったのに・・・」

「それはアーシュラさんが察知出来る範囲とかを教えてくれたからね」

「アーシュラ様が!?」

ハジメの答えを聞いてミリンダは驚いた。アーシュラが自分の能力の範囲を把握しているだけでなく、その情報をわざわざハジメに教えていたのだから。

「これから私をどうするつもり?今、私が大声を出せばあなたは終わりなのよ」

「試してみるといい、どうせ無駄だから」

ハジメの挑発が頭にきたミリンダは言われた通りに大声で夜勤職員に助けを呼んでみたが、誰も来る様子が無い。

「【遮音結界】」

「えっ?」

「今、この室内で使っている能力の名前だよ。部屋の外に音が洩れる事は無い、だからお前がこれからどんなはしたない声をあげても誰も気付かないから安心しな」

ハジメはミリンダをベッドの上に放り投げた、だがこんな状況になってもミリンダはまだ強気なままだった。

「これまで散々利用されてきたからな、これから朝までお仕置きしてやるから覚悟しろ」

「糸でグルグル巻きにした状態でどうやってお仕置きするのかしら?それとセシリアさんやランさんみたいに媚薬を使おうとしても無駄よ、私にはその手の状態異常は効かない。この糸の拘束が解けた瞬間、あなたの首を落として終わりよ」

「それも無駄な足掻きだ、これから使う奴は状態異常の類じゃなく感情操作の部類だからな。愛しい男の首を落とす真似がお前に出来るかな?」

「何を言っているの!?」

「夏の夜の夢」

ハジメが言葉を言った瞬間、何かの液体が落ちてきてミリンダの目に入った。何かの毒物かと思いミリンダは目を閉じて何度か指で擦ってみたが異常が無かったので目を開くと、目の前に居るハジメの顔がまともに見れなくなり頬も赤く染まり鼓動も徐々に早くなっていった。

(何が起きているの!?この目の前に居る男の顔をまともに見れない、今すぐ全てを曝け出してこの男の物になりたい衝動まで湧き上がってくる。私は一体何をされたの?)

自分の中で急に起きた、ハジメに対する狂おしいまでの恋情にミリンダは困惑する。自身の変化に戸惑っているミリンダの耳元でハジメはこう囁いた。

「今、目に入った液体には【最初に見たものに対して恋に落ちてしまう】効果が有る。今後、俺を利用しないって約束してくれるまでその効果は解除しないから。でもお仕置きだけは身体が忘れられなくなるまで念入りに仕込んであげるから頑張って耐えてくれよ」

ハジメが言い終わる頃にはミリンダの心の中のほとんどがハジメで占められていた、抵抗する意思さえ無くなり翌朝惚れ薬の効果を解除され正気を取り戻すまでミリンダはハジメの腕の中から離れようとはしなかった。



「分かったわ、今後一切あなたを利用する真似はしない。必ずその前に1度相談するわ」

「嘘ついたら、またお仕置きだからな」

「お仕置き・・・」

お仕置きの言葉に反応して、ミリンダの目がトローンと恍惚とした物に変わった。惚れ薬の効果は消えても昨晩の出来事は心と身体が覚えていて消える事が無い、自重せずに少しやり過ぎてしまったかもしれない。

「ではすぐに利用させて頂きますので次回のお仕置きは何時してくれますか、ハジメ様~!」

「これじゃあ、お仕置きの意味が無いじゃないか!?」

以後、ミリンダの生活スタイルの中に定期的にハジメのお仕置き(ミリンダにとってはご褒美)が加わる事となった。ミリンダがメロメロにされた気になるお仕置きの内容については皆様の想像にお任せする・・・。
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