73 / 84
第73話 贖罪と救済
しおりを挟む
(ここは?)
「俺の意識の中だ、ミシェル。 今、お前は俺に吸収され混ざり合っている状態に近いな」
(俺は負けたのか?)
「そうだな、お前は負けた。 だから起きた事を全て教えてくれ、お前達をこんな目に遭わせたシスティナにお仕置きしなくちゃいけないからな」
ミシェルは少しずつ語ってくれた、飛躍的に進歩していくハジメに比べいまだにスライムに苦労する自身の情けなさと嫉妬。 そして妹や仲間達まで奪われるかもしれない焦りをシスティナに利用され、多くの人を殺め最終的には大切にしていた女性たちまで喰ってしまったことを…。
(俺はどうなっても良い、アンナ達だけでも救ってくれないか?)
「安心しろ、その為に俺はお前を喰わずに融合したんだ。 少しの間、俺の身体の中で眠っていろ」
ミシェルはハジメの言葉に安堵し、意識を手放した。
1週間後、町の広場には多くの住人が集まっていた。 肉親だけでなく仲間の家族の命を奪った重罪人が捕縛され、その罪を償う為の処刑が行われるからだ。
後ろ手で紐で縛られ目隠しをされた囚人服のミシェルが引きずりだされると、住人達は口々に罵りながら石や卵を投げつけた。 アグナードが罪状を読み上げ、謝罪の言葉を聞くがミシェルは無言を貫く。 それが住人達の怒りを余計に買うことになった。
「早く殺せ!」
「こんな人、生かしておく価値なんて無いわ」
「とっとと地獄に送って、殺された人たちを安らかに眠らせてやれ!」
罵声を浴びせる住人達の前で1人の男がステージに登る、それを見た住人が一斉に歓声をあげた。 今回の捕縛にも協力し、数多くの功績を立てた異世界からの来訪者ハジメである。
「時間だ、覚悟は出来たかミシェル?」
それまで誰からの問いかけにも答えなかった男が、ハジメの声を聞いた瞬間に暴れだした。 死への恐怖からなのかハジメに対する恨みからなのかは分からない。 しかし、その暴れ方は逆に滑稽に映り住人たちの気持ちも幾分晴れた。
「見苦しいぞ、大人しく罪を償え!」
剣が振り下ろされ、暴れていた男の首が飛ぶ。 町を震撼させた殺人鬼の最期に住人たちは割れんばかりの歓声と賞賛をハジメに贈るのだった…。
ミシェルの死体は町の共同墓地に埋葬されることすら許されなかった、だがそのまま放置してゾンビなどになられても困るのでハジメの手で焼却されることとなる。 そして死体を入れた袋を背負い町を出たハジメをヒッポグリフが待っていた。
「それじゃあ、予定通り魔界に行ってくれ」
ビッグゲートを抜けて魔界に到着したハジメをアーシュラさんとカルーラさんが出迎える。
「ねえ、婿殿。 いつまでその袋の中身を抱えているつもりなのかしら?」
アーシュラさんに茶化されたハジメは頭をかきながら照れくさそうに答える。
「まだ誰かに見られているかもしれないと思ってさ、最後の最後にバレたらマズイしね。 融合!」
すると袋の中にあったミシェルの死体がドロリと溶け出して、ハジメの身体に吸収された。
「サリーネの案が上手くいって本当に良かったよ、あとの事はお願いしていいですか? カルーラさん」
「任せろ、魔王の名に懸けて彼らを守ろうじゃないか」
「それを聞いて安心しました、分裂!」
数回分裂を繰り返し、ハジメは計5体に分かれた。 しかし、その内4体の姿が徐々に別の者に変化していく。
「どうだ、人に戻れた感想はミシェル?」
「償いようのない罪を背負ってしまった俺まで、どうして助けようとするんだハジメ?」
「その罪を背負わせたのはシスティナだ、お前の責任じゃない。 この魔界ならあの女も手出し出来ないから、これ以上利用されなくて済む。 それとお前の意思を汲んで人として死なせてやろうと思っていた俺を止めたのは、そこに居る3人だ」
ミシェルが振り向くと、アンナ・ソニア・キャシーの3人が慈愛に満ちた顔でミシェルを赦す。
「折角助かっても、お兄ちゃんが居なくなったらわたしは本当に1人ぼっちになっちゃう。 そんなのは絶対に嫌」
「私はパーティーのリーダーなのよ、そのリーダーが仲間を置いていく真似なんて出来る筈無いじゃない!」
「ソニアもね私と一緒、あなたが好きなの。 両親をあなたに殺されたのに、嫌いになれないのよ。 本当に救いようがないわ、私たち…」
困惑を隠しきれないミシェルにハジメが事情を説明した。
「お前を融合で吸収した際に、3人の魂とも個別に話をしたんだ。 そうしたらミシェル1人を死なせるのなら、3人も一緒に地獄に堕ちると言い出してな。 そうなると3人を助けるには、お前を生かすしか方法が無い訳だ」
そして1番大事な事を4人に話す。
「それとこれは既に実験済みなんだが、一定以上離れると分裂した分体と融合することが出来なくなるんだ。 だからどこか辺境の地で今後一切俺と会わない様にしている限り、俺に再融合される心配は無い」
湿っぽい会話は好きじゃないので、ハジメは重い冗談を混ぜた。
「悪いことばかりじゃないぞ! 4人の素体は俺だから、たとえ兄妹で結ばれても問題無しだ。 いや、子が出来ないから問題大アリか?」
「そこまで心配する必要は無え!? 俺はずっとアンナの兄ちゃんだ!」
軽口を叩きながら、ハジメとミシェルを握手をかわした。 うっかり再融合しない様に気をつけながら…。
「元気でな、ミシェル」
「お前もな、そして本当に済まなかった」
いつまでも長居して誰かに怪しまれてはいけないとハジメがルピナスに戻っていくのを見ながら、ミシェルは1つの頼みごとをした。
「アーシュラさん。 すみませんが俺達4人を徹底的に鍛えてくれませんか?」
「それは婿殿から頼まれていることと違うのだけど?」
「あいつはいずれ女神システィナを討とうとするでしょう、その時に手札は多い方が良い。 利用された仕返しに、システィナの意表を突くぐらいの事はしてやりたいんですよ」
それなら良いでしょうと、アーシュラは了承する。 しかしその直後、ミシェルはアーシュラではなくカルーラに頼めば良かったと死ぬほど後悔した。
「それじゃあ早速だけど、1週間で魔界を1周してきて頂戴。 遅れたら、もう1周追加よ」
魔族の兵士達も裸足で逃げ出す、アーシュラ特別訓練メニューが始まったのだった…。
「俺の意識の中だ、ミシェル。 今、お前は俺に吸収され混ざり合っている状態に近いな」
(俺は負けたのか?)
「そうだな、お前は負けた。 だから起きた事を全て教えてくれ、お前達をこんな目に遭わせたシスティナにお仕置きしなくちゃいけないからな」
ミシェルは少しずつ語ってくれた、飛躍的に進歩していくハジメに比べいまだにスライムに苦労する自身の情けなさと嫉妬。 そして妹や仲間達まで奪われるかもしれない焦りをシスティナに利用され、多くの人を殺め最終的には大切にしていた女性たちまで喰ってしまったことを…。
(俺はどうなっても良い、アンナ達だけでも救ってくれないか?)
「安心しろ、その為に俺はお前を喰わずに融合したんだ。 少しの間、俺の身体の中で眠っていろ」
ミシェルはハジメの言葉に安堵し、意識を手放した。
1週間後、町の広場には多くの住人が集まっていた。 肉親だけでなく仲間の家族の命を奪った重罪人が捕縛され、その罪を償う為の処刑が行われるからだ。
後ろ手で紐で縛られ目隠しをされた囚人服のミシェルが引きずりだされると、住人達は口々に罵りながら石や卵を投げつけた。 アグナードが罪状を読み上げ、謝罪の言葉を聞くがミシェルは無言を貫く。 それが住人達の怒りを余計に買うことになった。
「早く殺せ!」
「こんな人、生かしておく価値なんて無いわ」
「とっとと地獄に送って、殺された人たちを安らかに眠らせてやれ!」
罵声を浴びせる住人達の前で1人の男がステージに登る、それを見た住人が一斉に歓声をあげた。 今回の捕縛にも協力し、数多くの功績を立てた異世界からの来訪者ハジメである。
「時間だ、覚悟は出来たかミシェル?」
それまで誰からの問いかけにも答えなかった男が、ハジメの声を聞いた瞬間に暴れだした。 死への恐怖からなのかハジメに対する恨みからなのかは分からない。 しかし、その暴れ方は逆に滑稽に映り住人たちの気持ちも幾分晴れた。
「見苦しいぞ、大人しく罪を償え!」
剣が振り下ろされ、暴れていた男の首が飛ぶ。 町を震撼させた殺人鬼の最期に住人たちは割れんばかりの歓声と賞賛をハジメに贈るのだった…。
ミシェルの死体は町の共同墓地に埋葬されることすら許されなかった、だがそのまま放置してゾンビなどになられても困るのでハジメの手で焼却されることとなる。 そして死体を入れた袋を背負い町を出たハジメをヒッポグリフが待っていた。
「それじゃあ、予定通り魔界に行ってくれ」
ビッグゲートを抜けて魔界に到着したハジメをアーシュラさんとカルーラさんが出迎える。
「ねえ、婿殿。 いつまでその袋の中身を抱えているつもりなのかしら?」
アーシュラさんに茶化されたハジメは頭をかきながら照れくさそうに答える。
「まだ誰かに見られているかもしれないと思ってさ、最後の最後にバレたらマズイしね。 融合!」
すると袋の中にあったミシェルの死体がドロリと溶け出して、ハジメの身体に吸収された。
「サリーネの案が上手くいって本当に良かったよ、あとの事はお願いしていいですか? カルーラさん」
「任せろ、魔王の名に懸けて彼らを守ろうじゃないか」
「それを聞いて安心しました、分裂!」
数回分裂を繰り返し、ハジメは計5体に分かれた。 しかし、その内4体の姿が徐々に別の者に変化していく。
「どうだ、人に戻れた感想はミシェル?」
「償いようのない罪を背負ってしまった俺まで、どうして助けようとするんだハジメ?」
「その罪を背負わせたのはシスティナだ、お前の責任じゃない。 この魔界ならあの女も手出し出来ないから、これ以上利用されなくて済む。 それとお前の意思を汲んで人として死なせてやろうと思っていた俺を止めたのは、そこに居る3人だ」
ミシェルが振り向くと、アンナ・ソニア・キャシーの3人が慈愛に満ちた顔でミシェルを赦す。
「折角助かっても、お兄ちゃんが居なくなったらわたしは本当に1人ぼっちになっちゃう。 そんなのは絶対に嫌」
「私はパーティーのリーダーなのよ、そのリーダーが仲間を置いていく真似なんて出来る筈無いじゃない!」
「ソニアもね私と一緒、あなたが好きなの。 両親をあなたに殺されたのに、嫌いになれないのよ。 本当に救いようがないわ、私たち…」
困惑を隠しきれないミシェルにハジメが事情を説明した。
「お前を融合で吸収した際に、3人の魂とも個別に話をしたんだ。 そうしたらミシェル1人を死なせるのなら、3人も一緒に地獄に堕ちると言い出してな。 そうなると3人を助けるには、お前を生かすしか方法が無い訳だ」
そして1番大事な事を4人に話す。
「それとこれは既に実験済みなんだが、一定以上離れると分裂した分体と融合することが出来なくなるんだ。 だからどこか辺境の地で今後一切俺と会わない様にしている限り、俺に再融合される心配は無い」
湿っぽい会話は好きじゃないので、ハジメは重い冗談を混ぜた。
「悪いことばかりじゃないぞ! 4人の素体は俺だから、たとえ兄妹で結ばれても問題無しだ。 いや、子が出来ないから問題大アリか?」
「そこまで心配する必要は無え!? 俺はずっとアンナの兄ちゃんだ!」
軽口を叩きながら、ハジメとミシェルを握手をかわした。 うっかり再融合しない様に気をつけながら…。
「元気でな、ミシェル」
「お前もな、そして本当に済まなかった」
いつまでも長居して誰かに怪しまれてはいけないとハジメがルピナスに戻っていくのを見ながら、ミシェルは1つの頼みごとをした。
「アーシュラさん。 すみませんが俺達4人を徹底的に鍛えてくれませんか?」
「それは婿殿から頼まれていることと違うのだけど?」
「あいつはいずれ女神システィナを討とうとするでしょう、その時に手札は多い方が良い。 利用された仕返しに、システィナの意表を突くぐらいの事はしてやりたいんですよ」
それなら良いでしょうと、アーシュラは了承する。 しかしその直後、ミシェルはアーシュラではなくカルーラに頼めば良かったと死ぬほど後悔した。
「それじゃあ早速だけど、1週間で魔界を1周してきて頂戴。 遅れたら、もう1周追加よ」
魔族の兵士達も裸足で逃げ出す、アーシュラ特別訓練メニューが始まったのだった…。
1
あなたにおすすめの小説
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜
鮒捌ケコラ
ファンタジー
入学式から3週間目にして『退学」を言い渡された。
(早くない?RTAじゃないんだからさ。)
自分で言うのもアレだけど、入学してからは結構真面目に通ってた。
けど、どうやら教員の不況を買ってしまったらしい。
幸か不幸か、退学まで1週間の執行猶予が与えられた。
けど、今更どう足掻いても挽回する事は不可能だろうし、
そもそも挽回する気も起こらない。
ここまでの学園生活を振り返っても
『この学園に執着出来る程の魅力』
というものが思い当たらないからだ。
寧ろ散々な事ばかりだったな、今日まで。
それに、これ以上無理に通い続けて
貴族とのしがらみシミッシミの薬師になるより
故郷に帰って自由気ままな森番に復職した方が
ずっと実りある人生になるだろう。
私を送り出した公爵様も領主様も、
アイツだってきっとわかってくれる筈だ。
よし。決まりだな。
それじゃあ、退学するまでは休まず毎日通い続けるとして……
大人しくする理由も無くなったし、
これからは自由気ままに、我儘に、好き勝手に過ごす事にしよう。
せっかくだし、教員達からのヘイトをカンストさせるのも面白そうだ。
てな訳で………
薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。
…そう息巻いて迎えた執行猶予満了日、
掲示板に張り出された正式な退学勧告文を
確認しに行ったんだけど……
どういう事なの?これ。
婚約破棄して廃嫡された馬鹿王子、冒険者になって自由に生きようとするも、何故か元婚約者に追いかけて来られて修羅場です。
平井敦史
ファンタジー
公爵令嬢ヘンリエッタとの婚約破棄を宣言した王太子マルグリスは、父王から廃嫡されてしまう。
マルグリスは王族の身分も捨て去り、相棒のレニーと共に冒険者として生きていこうと決意するが、そんな彼をヘンリエッタが追いかけて来て……!?
素直になれない三人の、ドタバタ冒険ファンタジー。
※「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~
山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。
与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。
そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。
「──誰か、養ってくれない?」
この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる