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アツモリ、竜殺し(ドラゴンスレイヤー)と会う

第103話 「決闘だあ!」「上等だ!その決闘、受けてやる!」

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 敦盛たち4人は手に持った茶碗をテーブルに置くと同時に天を仰いで絶叫した!その様子を見ていた他の客だけでなく店員まで笑ってるほどだけど、敦盛たち4人は全然意に介してない!
「俺はもう1杯食べたくなった!!」
「ウチもです!」
「私もです!」
「わたしも!」
「お替り欲しいぞ!」
「お替り欲しいです!」
「お替り、絶対に欲しい!」
「お替り食べたーい!」

 4人は揃って絶叫しているから他の客の視線の事など全然気にしてない!

 満里奈は立ち上がって、カウンターのところにいた女の子のところへすっ飛んで行った!
「こ、これ、たまごかけご飯のお替り!絶対に欲しい!!」
「お客さーん、落ち着いて下さいよお」
「と、とにかくお替りが欲しい!」
「いいですよー。今、4つお持ちしますから席にお戻りください」
「す、すぐに頂戴!」
「はいはい、分かりました」

 満里奈はニコニコ顔で席に戻り、4人は揃って厨房の方を見ながらお替りが来るのを今か今かと待っていた。直ぐに赤髪の女の子がトレーに4つのお茶碗と生たまごの茶碗を持ってテーブルに向かってきたから、思わず4人とも拍手をしたほどだ。

 でも・・・

 そのお替りがテーブルの上に置かれた時、いきなり店の入り口の扉が『ガラガラー!』と乱暴に開けられた。

 店員だけでなく客も一斉に入り口に顔を向けたけど、そこには4人の男たちが立っていた。
 その男たちは一見すると武官のような恰好をしているが、その左胸には同じ紋章が入っていて、しかも全員が腰に剣を吊るしているから騎士ようだ。
 だが、その男たちは大仰な態度のままズカズカと店内に入ってきた。先頭の男は周囲の客を一瞥したかと思ったら胸を張って
「・・・我々は王太子セドリック様の親衛隊『マーレ』に所属する者である。本日は休暇を取ってもまでして店に来たのだから、我々の為に席を空けよ!」
 男はそう言い放つと同時に店員に向かって「料理を提供せよ!」と大声で言い放った。

 当たり前だが店内は騒然としたけど、その先頭の男が「静かにしろ!」と大声を上げたから、店内は逆に静まり返ってしまった。

 敦盛も満里奈も『カチン!』という表情になったし、ルシーダも怒りの表情を隠そうともしない。それはココアも同じだった。
 4人は互いの顔を見合わせると「ウン」と頷きあった。
 そのまま立ち上がろうとしたのだが、店の一番入り口の席に座っていた一人の男がサッとばかりに立ち上がった!その男は左腰に剣を吊るしていたが一般の市民と同じような服を着ていたから傭兵のようだ。
「おい、お前たち!」
 その男は『マーレ』の4人組を睨みながら怒鳴ったから、同じテーブルに座っていた他の4人の男女も立ち上がったけど、逆に『マーレ』の4人組は怒りの表情で5人組を睨み返した。しかも先頭にいた男は顔を真っ赤にして怒り心頭だ!
「貴様!平民の分際で我々に『お前』などと言うとは言語同断である!この場で斬り殺されても文句を言えぬとわきまえよ!」
「フン!親衛隊だか何だか知らねえが、この国では親衛隊が『席を空けろ』とか『料理を出せ』と言うのが普通にまかり通るのかよ!」
「当たり前だ!我々はお前たち庶民のために命をかけて王国を守っている。その我々が貴重な休暇を使って店の売り上げに協力してやろとしているのだ!逆に店主自ら『お越し頂いて感謝しております』と泣いて喜ぶような名誉ある事だというのを、貴様は分かってないのか!!」
 『マーレ』の男はそう言うと自分の右手で上着の左胸に刺繍してある紋章を指差して「これを見ろ!」と言わんばかりの態度で『フン!』と胸を反らしながら鼻息を荒くしたけど、傭兵風の男は逆に両肩を窄めて一瞥した。
「お前さあ、本当に騎士なのかあ?!そんな事を平然と言い放つような奴が王太子の親衛隊?『法と秩序の神』を国教としてる国の騎士が言うセリフかあ?お前の頭の中はどうかしてるぞ!」
「貴様!騎士を侮辱するとは程がある!」
「お前のような奴が王太子の親衛隊の騎士を名乗るは片腹痛いぞ!」
「その言葉、王太子殿下に対する侮辱と受け止めた!決闘だあ!!」
「上等だ!その決闘、受けてやる!!」
 店主夫妻と思われる老夫婦が慌てて二人の間に体を入れたけど、『マーレ』の男は顎をしゃくりながら態度で「外へ出ろ!」とばかり傭兵風の男を催促したから、傭兵風の男も黙って店の外へ出た。他の『マーレ』の騎士も傭兵風の男の仲間たちも黙って外へ出て行ったから、逆に店内は『シーン』と静まり返ってしまった。

 敦盛は「はーー」とため息をつきながら立ち上がり、ルシーダも立ち上がった。
 そのまま二人は店の外へ出ようとしたから、老夫婦は慌てて敦盛たちの腕を掴んで
「・・・お客様、そんな事をしたら親衛隊の人たちから睨まれますよ」
「決闘だか何だか知らないけど、立会人も審判も無しで決闘をやるつもりなのかあ?」
「し、しかし、王族の意向に背く事など、首をその場で斬られても文句を言えないはずですよ。ましてや、この国では普通にあると聞いてます」
「だからこそ、決闘の立会人が必要だ」
 敦盛はそう言うと自分の上着の下に隠していたギルドバッジを上着の外に出した。それの意味する事に気付いた老夫婦は目を丸くした。
「・・・冒険者さまだったのですか?」
「そういう事だ。こういう時は俺たちのような部外者が立会人をやるに限る」
 そう言うと敦盛は老夫婦の腕を自分の腕から剥がすと、そのまま外へ出て行った。ルシーダも敦盛に並ぶ形で外へ出たが、その首にはギルドバッジではなくバレンティノ神の聖職者である事を示す首飾ペンダントをぶら下げていから、逆に老夫婦の方がルシーダに頭を下げて道を空けたくらいだ。満里奈もココアも立ち上がって敦盛たちに続き、老夫婦のうち夫人は店内に残ったけど、主人の方は満里奈たちと一緒に店の外へ出て、他にも赤髪の女の子も店の外へ出た。 
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