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アツモリ、竜殺し(ドラゴンスレイヤー)とデスマッチをやる

第124話 これが魔術師協会所属の魔術師がやる事なのですか?

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” バチーーーン! ”

 いきなり、ミアータの頬に平手打ちを喰らわせた人物がいた!

 だが、それはミアータの襟首を持って怒鳴っていたユーノスではなかった。ミアータに平手打ちを喰らわせた人物は・・・セレナ王女だ!

 敦盛も満里奈も唖然とした表情でセレナ王女を見たし、ユーノスも思わずミアータの襟を離してセレナ王女を見てしまったが、ミアータは茫然とセレナ王女を見る事しか出来なかった。
 セレナ王女は冷酷な目でミアータを見ている。その表情は、国民からは聖女とまで呼ばれているセレナ王女とは別人かと思わせるほど、氷のように冷たいものだ。
 その表情はまるで、見ている物すべてを凍り付かせるかのような冷たい物だった。『氷の魔女』ミアータをもってしても出来ないと思わせるほどだ・・・いや、敦盛はその目を以前に見た事があるのを思い出した。剣士バネットとしてレパード子爵と1対1で戦った時に見せた、凄まじいまでの殺気を放っていた時の目だという事に・・・

「・・・セレナの名において命じます、先ほどの『自爆シュイサイド』発言を撤回しなさい。見苦しいにもほどがあります。これが竜殺しドラゴンスレイヤーとまで言われた人物の発言かと思うと情けなくなります」
「し、しかし王女殿下・・・」
「お黙りなさい!ここはドルチェガッバーナ王国、すなわち、わたくしの国ですから『王族に対する侮辱罪』を適用できます。『自爆シュイサイド』発言を撤回しないようなら、『王族に対する侮辱罪』を本当に適用します」
 セレナ王女はミアータを威嚇するかのような態度を取っているから、周囲にいたユーノスや敦盛だけでなくレクサス支部長やシエナ、ソアラといった冒険者ギルドの面々もハラハラしながらセレナ王女とミアータを見ている。ティアナはそんな主人の背後に控えているが、その表情は青ざめていて、敦盛が見ても、いや、誰が見ても、今すぐにでも倒れるのではないかと思わせるほどのものだ。

 そのミアータの目はさっきまでの冷たい物ではないが、それでもセレナ王女の顔を真っ直ぐに見たままだ。
「・・・セレナ王女殿下に申し上げます」
「・・・どうぞ」
「『王族に対する侮辱罪』は魔術師協会の魔術師には適用されません。たしかに私は冒険者ギルドに所属してますが、同時にリーバイス王国の魔術師協会に所属していますから、リーバイス王国魔術師協会を侮辱した事になります。魔術師協会の魔術師と聖職者には適用しないと法律文に書かれている以上、これ以上の事は私は言いたくありません」
「たしかに正論ですが、あなたは肝心な事を見落としている」
「肝心な事?私には王女殿下の言ってる意味が分からないのですが・・・」
「では、単刀直入に言います。リーバイス王国魔術師協会1級魔術師ミアータ、あなたはわたくしの叔母おばを侮辱した。これが世界最高と言われるリーバイス王国魔術師協会所属の魔術師がやる事なのですか?」
「!!!!!」
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