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行間15 永遠に漂って・・・
第127話 絶対に見てはいけない物(後編)
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「・・・おーい、あれ、何だと思う?」
精霊使いの男は後ろを振り向いて他の7人に声を掛けたから、他の7人も一斉にその精霊使いの男が指差した物に魔法灯を集中させた。
その物体は水中に立っていた。
いや、その物体の周囲一体は水の箱のような物で覆われていて、それはあたかも水で出来た棺のようにも見える。
しかも石板の上に石像が立っているようにも見える。
その石像は、見方によっては長い髪をした傷だらけの若い女の石像のようにも思えるのだ。
それに気付いた瞬間、先頭にいた精霊使いの男は「はっ!」と声を上げた。
しかも体がブルブル震えている。この時期のエウリュアレ海は海水浴が出来るほどなのだが、まるで真冬の海に潜っているかのような寒気に襲われた感じがした。
「・・・ま、まさか、これは伝説の・・・」
それだけ言うと精霊使いの男はヘナヘナと海底に座り込んでしまい、そのまま腰が抜けてしまった。他のメンバーも海中に漂っている物の正体に思い当って、ほぼ同時に海底に座り込んでしまった。
「氷原の乙女グラバー・・・」
精霊使いの男がそう呟くと、他の7人もほぼ同時に首を縦に振った・・・
「うわーっ!オレ、絶対に見てはいけない物を見てしまったのかよ!」
若い魔術師が発狂したかのように叫んだから、慌てて『戦の守護者』の元神官が『治癒』を唱えて落ち着かせたほどだが、そういう元神官も手がブルブル震えていて、普段通りに『治癒』を使えなかった程だ。
「まさか、ここを漂ってのたのかよ!?」
「もしかして、船が沈んだのはこいつの呪いかあ!?」
「これを見た女はグラバーの魂が乗り移ってくるって言われてるけど・・・オレ、冗談かと思ってたけど、これを見たら真実だとしか思えなくなった・・・」
「あの水の箱は『大海原の覇者フェンディ』とその妻の『太陽の守護者ヴェルサーチェ』が作ったと言われてるから、人間では絶対に壊せないと言われてるけど、こうやって近くで見ると、余りにもリアルすぎて逆にこっちが吸い込まれそうだぜ」
「おいおいー、縁起でもない事をいうなよー。ますます寒気が止まらなくなったぞ」
「この事、絶対に言うなよ。話を聞いただけでも逃げ出す連中が後を絶たない代物だぜ。もっとも、これを回収しようなどという馬鹿はいなけいど、こいつが本当に復活したら、魔王以上の存在になるのは間違いないからな」
「というかさあ、今のままで地上へ持って帰っても、役に立たないどころか世界中で扱いに困る代物だぜ。このまま海中を永遠に漂っていてくれた方が人間にとって都合がいいに決まってる」
「オレも同感。教会へ行って今日の記憶を消してもらいたい位だ」
「だよなー」
「おいおいー、それが出来れば苦労しないぞ。今日はもう帰ってヤケ酒を飲んで綺麗サッパリ忘れようぜ」
「あったり前だあ!オレだってそれを提案したかったくらいだ。金はいくらでも出すから、今日の出来事そのものを記憶から消す!それがオレたちにとっても、人間にとっても一番いいに決まってる!」
8人の中のリーダー格だった盗賊がそう叫ぶと、残りの7人も一斉に頷き、『氷原の乙女グラバー』を閉じ込めた水の棺に背を向け、浮上を始めた。
でも・・・8人のうち、本気で怖がって浮上を始めたのは7人だけで、1人は怖がっているフリをしていたのに過ぎないのだ!
「・・・神よ、必ずやあなた様を蘇らせてみせます!この事は尊師イゾア様に伝えますから、今しばらくの御辛抱を・・・」
そう呟いた声を聞いたのは誰もいなかった・・・
~第1部 完~
精霊使いの男は後ろを振り向いて他の7人に声を掛けたから、他の7人も一斉にその精霊使いの男が指差した物に魔法灯を集中させた。
その物体は水中に立っていた。
いや、その物体の周囲一体は水の箱のような物で覆われていて、それはあたかも水で出来た棺のようにも見える。
しかも石板の上に石像が立っているようにも見える。
その石像は、見方によっては長い髪をした傷だらけの若い女の石像のようにも思えるのだ。
それに気付いた瞬間、先頭にいた精霊使いの男は「はっ!」と声を上げた。
しかも体がブルブル震えている。この時期のエウリュアレ海は海水浴が出来るほどなのだが、まるで真冬の海に潜っているかのような寒気に襲われた感じがした。
「・・・ま、まさか、これは伝説の・・・」
それだけ言うと精霊使いの男はヘナヘナと海底に座り込んでしまい、そのまま腰が抜けてしまった。他のメンバーも海中に漂っている物の正体に思い当って、ほぼ同時に海底に座り込んでしまった。
「氷原の乙女グラバー・・・」
精霊使いの男がそう呟くと、他の7人もほぼ同時に首を縦に振った・・・
「うわーっ!オレ、絶対に見てはいけない物を見てしまったのかよ!」
若い魔術師が発狂したかのように叫んだから、慌てて『戦の守護者』の元神官が『治癒』を唱えて落ち着かせたほどだが、そういう元神官も手がブルブル震えていて、普段通りに『治癒』を使えなかった程だ。
「まさか、ここを漂ってのたのかよ!?」
「もしかして、船が沈んだのはこいつの呪いかあ!?」
「これを見た女はグラバーの魂が乗り移ってくるって言われてるけど・・・オレ、冗談かと思ってたけど、これを見たら真実だとしか思えなくなった・・・」
「あの水の箱は『大海原の覇者フェンディ』とその妻の『太陽の守護者ヴェルサーチェ』が作ったと言われてるから、人間では絶対に壊せないと言われてるけど、こうやって近くで見ると、余りにもリアルすぎて逆にこっちが吸い込まれそうだぜ」
「おいおいー、縁起でもない事をいうなよー。ますます寒気が止まらなくなったぞ」
「この事、絶対に言うなよ。話を聞いただけでも逃げ出す連中が後を絶たない代物だぜ。もっとも、これを回収しようなどという馬鹿はいなけいど、こいつが本当に復活したら、魔王以上の存在になるのは間違いないからな」
「というかさあ、今のままで地上へ持って帰っても、役に立たないどころか世界中で扱いに困る代物だぜ。このまま海中を永遠に漂っていてくれた方が人間にとって都合がいいに決まってる」
「オレも同感。教会へ行って今日の記憶を消してもらいたい位だ」
「だよなー」
「おいおいー、それが出来れば苦労しないぞ。今日はもう帰ってヤケ酒を飲んで綺麗サッパリ忘れようぜ」
「あったり前だあ!オレだってそれを提案したかったくらいだ。金はいくらでも出すから、今日の出来事そのものを記憶から消す!それがオレたちにとっても、人間にとっても一番いいに決まってる!」
8人の中のリーダー格だった盗賊がそう叫ぶと、残りの7人も一斉に頷き、『氷原の乙女グラバー』を閉じ込めた水の棺に背を向け、浮上を始めた。
でも・・・8人のうち、本気で怖がって浮上を始めたのは7人だけで、1人は怖がっているフリをしていたのに過ぎないのだ!
「・・・神よ、必ずやあなた様を蘇らせてみせます!この事は尊師イゾア様に伝えますから、今しばらくの御辛抱を・・・」
そう呟いた声を聞いたのは誰もいなかった・・・
~第1部 完~
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