寒い国から来たあなたへ reprise

越川千太郎

文字の大きさ
4 / 34

4.王子様と高円寺の夜。ME IN HONEY

しおりを挟む
4.

高円寺、リエが住むマンション。
 アレクが菱菱商事に初挨拶に行った日の夜。会社で説明された通り、リエの隣の部屋に沖田と近藤明日香が付き添いでアレクがやって来た。
 近藤明日香がアレクに説明している
「トイレと風呂以外はアレクさんを守るために監視カメラが付いています。何かあればスグに連絡ください。24時間交代で監視はしておきます」。
 その説明を横で聞いていたリエは小声で沖田に質問する。
「24時間カメラで監視って、アレクさんは何者ですか?」
「アレクはイタリアの貴族の王子で日本政府が守らなければいけないのです。気難しいとこもあると思いますが、リエさんお願いしますよ」
リエにささやく沖田。
リエ、ウンとうなずく。

沖田と近藤明日香が帰ったアレクの部屋。
 着の身着のまま日本にやってきたアレクは、銀座で衣類を買い込んできたようで部屋中にルイヴィトンやグッチと行ったハイブランドの紙袋が大量に置かれていた。
 アレクはリエを見ずに、開口一番
「スーツはこっちに入れて下さい、靴はブラシを掛けてこちらに収納で、下着は色を揃えてロール式で収納、ベッドのシーツはピシッとシワなくお願い、石鹸はシリア石鹸を買い忘れたので明日ロフトで買ってきてください」と召使いのように当然に言いつけて来た。
 リエはアレクの言い方にカーッと来て
「あのね、私はメイドじゃないわよイタリアの王子様!全部自分でやりなさいよっ」
と怒鳴りつけ、スリッパをアレクの顔に投げつけると部屋を出て行った。
「なんなんだ、あの子は?」
一人グチるアレク。

—————————————————————

 リエは自分の部屋に戻り
「何よあのイタリア貴族、エラソーに命令なんかしてっ!サイテーっ!」
と一人怒っている。
 リエはプンプンと怒りながらも気を落ち着けようとギターをつま弾く。適当に曲を弾きながら鼻歌を歌っているうちにリエは怒りの感情が静まり、可哀想という感情が湧き上がってきた。
【アレクさんは知らない異国に来て違う環境で慣れないはずなんだ、貴族の人だから他人に命令するのが当然の環境だったから先程の命令の件は許してワタシはアレクさんを手伝おう】とリエは考えてたらグーッとお腹が鳴った。
 とりあえずアレクを手伝う前に食べ物を買いに行こうか、リエはマンションを出て高円寺駅前の焼き鳥屋「ME IN HONEY」へ焼鳥とビールを買いに行った。

—————————————————————

約1時間後。
 リエがアレクの部屋のチャイムを鳴らし、ドアが開いてアレクが顔を見せる。
「仲河さん・・・」
「アレクさんあのね・・・」
一瞬の間があり
「先程はごめんなさい」示し合わせたかの様に同時に謝り、同じ文言がシンクロして恥ずかしくなり顔が赤くなる二人。
「アレクさん、さっきは怒ってスリッパなんか投げつけてごめんなさい。ケガしてないですか?痛くないですか?」
「いえいえ仲河さん、僕の方が悪かったんです。使用人を扱うような言い方をして、仲河さんを傷つけてしまいすいません。あなたを雑に扱うつもりはなかったのですが、ごめんなさい」
「んーん、いいんです。貴族の方ですから、私達庶民とは感覚が違うと思いますので。慣れてなかったワタシの方が悪いんです。リエって下の名前で呼んで下さい呼んで」
「えっ、貴族っ・・?」アレクが質問を
言い終わらないうちに
「ささっ、アレクさんもお腹すいてるでしょ。食べ物買って来ましたから」
リエは焼き鳥屋のビニール袋を見せ、大きなアレクとドアの間をチョコチョコとすり抜けて部屋に入っていく。アレクは、自分の真横を通り過ぎていくリエを見下ろしながら、子犬かリスの小動物みたい又は昔見た日本のアニメのキャラだなと思った。

 部屋に入り、
「えーっ」
1時間たっても1割も片付いていない部屋を見たリエが言う。
「アレクさん何やってるんですか、片付いてないじゃないですか。だめですね」
「はい~」
 リエは雑然と散らかった部屋の床に二人分のスペースを確保し、焼き鳥とビールを並べる。
「とりあえずは、後でワタシも一緒に片付けるので、食べましょ食べましょ」
「はぁ」

 リエとアレクは床に座ってビールを片手に焼鳥を食べる。
「美味しいですね」
「そうでしょ、高円寺駅前にある焼き鳥屋「ME IN HONEY」の焼鳥なんですよ。会社の若山さんとよく行くんです。今度アレクさんも連れて行きますね」
リエは楽しいのかビールが進んでいる。
「アレクさんがイタリアの方ですからワインを探したんですが、この時間にいいワインが売ってる店がなくてビール買っちゃいました。でも、ビールも美味しいですもんね」
焼鳥を頬張りビールを飲み干すリエ。短時間に2缶目だ。
「リエさん、ビール飲み過ぎ・・・・」
リエを心配するアレク。

30分後。
 自分の荷物を整理して一生懸命片付けるアレク。
 しかしリエはというと、ベッドでへたり込みながらアレクに指示というより命令を飛ばしている。
「そのルイヴィトンのスーツはそっちのウオーキングクローゼットに」
「はいっ」
「トムフォードのシャツは、そのタイプは畳んでタンス棚に入れろ」
「ハイッ!」
「おいっアレク、お前ベルルッティのカバンなんて買いやがって金持ちだな~。でもギャルソンのシャツ着てるのは許すっ!俺もギャルソンは好きだぜっ」
「ハハッ」
クダを巻くリエに苦笑いしかない、酔っ払ってるが服関係に勤めてるから服の扱いは的確だなと感心するアレク。
 リエは酒に弱く、ビール2缶で酔っぱらてしまい、手伝わずにアレクに命令するばかりだ。アレクは酔っ払いのリエの命令に従い部屋を片付けていく。
「リエさん、酒弱すぎですよ、水飲みますか」
「うん」
リエさんは飲んだら酒乱になるタイプか、と思いながらアレクは冷蔵庫からミネラルウォーターを持ってくる。
「リエさん水ですよ」
 水を持って来たが、リエはアレクのベッドからこぼれ落ちる様に寝入っていた。
 アレクはヤレヤレと首を振り、ベッドから落ちそうなリエを抱え上げ自分のベッドへ仰向けに置き直しシーツをかけてあげた。
イビキをかくリエを見ながら
「面白い子だな~」
一言呟き整頓作業を再開したアレクだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

僕《わたし》は誰でしょう

紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。 「自分はもともと男ではなかったか?」  事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。  見知らぬ思い出をめぐる青春SF。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】あやかし団地 管理人見習い日誌

双月ねむる
キャラ文芸
就活全滅で「自分には社会性がない」と思い込む凛は、遠縁の親戚に紹介され、昭和レトロな巨大団地・さくらヶ丘第一団地の『管理人見習い』として住み込みで働くことに。しかしその団地には、中庭の「靴鳴らし」、エレベーター表示盤に棲む狐など、団地限定あやかし達が当たり前のように暮らしていた。 最初は逃げ腰の凛だったが、すねた空き部屋や、ベランダの風鈴が告げるSOSなど、人とあやかしのトラブルに巻き込まれながら、少しずつ『共同体』に関わる勇気を取り戻していく。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...