寒い国から来たあなたへ reprise

越川千太郎

文字の大きさ
34 / 34

34.寒い国から来たあなたへ〜OUTRO.

しおりを挟む
34.

アレク大統領と沖田が『高山ドンフライ状態』で殴り合って騒然としてるバックヤード。
 リエのステージディレクターも兼任するH@RUKAがやってきて「アレク、沖田、どけ!」と怒鳴りつけて二人をシュンとさせる。
H@RUKAは続けてリエの控室をノックする「リエさん時間よ、お願いします」

 バックステージがシーンと静まり返り1分程してから
「はい」の返答と共に控室のドアが開き、バックステージに居るをものを圧倒するオーラを纏ったリエが出てくる。
 リエには、少女の様な天真爛漫な可愛さだけでなく、大統領夫人、世界の音楽界の女王、母親、アレクの妻として風格と威厳が備わってきた。
「リエさん、大丈夫?」アレクが心配そうに尋ねる。
「うん、問題ないわ。あっ明日香さーん久しぶり。沖田さんも旦那と相変わらずバカですね」明日香に抱かれてる花子の頬を触り
「パパ。花ちゃんがね、パパは『バックン』に出てくるポールくんに似てるって」
「そーですか」そのポールくんとはハンサムなんだろうかと思うアレクだった。
「花ちゃん、ママは今から歌ってくるからね」
花子のホッペを人差し指でペチペチとタップするリエだった。

—————————————————————

控室からステージまで20mの廊下を歩くリエとアレクとH@RUKA。
「H@RUKAさん、ステージで産気付いたらどうしよう。ワタシ、それだけが心配で」
ステージドレスの上からでもハッキリわかる大きなお腹を触りながら歩を進める。
「大丈夫よ、世界一のSOMYレコードが抱えるアーティスト連中がブラヴァ・ドームに遊びにきてるから、もしもの場合は彼らが助けてくれるわ」
ステージに向かうリエから離脱するH@RUKA。

—————————————————————

 前座アーティストのステージが終わり、「仲河リエ」を待ち望む観衆のボルテージが最高潮になってきた。
「RIE!RIE!RIE!」と日本、アメリカ大陸、旧中国圏、ヨーロッパ、東南アジア、旧ロシア圏、アフリカ、中東、豪州と全世界から集まった観客が『RIE』コールを発している。その観客席には、日本から来た健吉歌子夫妻、秋山社長夫妻の姿も見られる。

 ステージ横、観客に見えないギリギリのローディーピットに立つリエとアレク。
 ドーム内の喧騒とは違って、そこだけシーンとした二人だけの世界だ。
スタッフの誰も気を使い入り込まない。
「シンガー『仲河リエ』さん、気分はどうです?」
「そうですねアレク大統領、気分はいいです」
 リエはアレクの顔を見て、この人と菱菱商事で出会ってからココまで来るのに長かったのだろうか短かったのだろうかと考えた。カッコよくて、大男で、優しくて、頭がよくて、ケンカが強くて、でも少し間抜けなとこがある変なガイジンさん。
 この人と出会わなければ、歌手になる事もなく菱菱商事で働き母親の介護をし、違う人と結婚してたかもしれないし独身だったかもしれない。それも人生だし、よかったかもしれない。
 でも今は、アレクさんと出会い、歌手で世界中を周り、大統領夫人にもなり、自分の服ブランドをリリースし、もうダメだと思った母親も数年間は元気に生活し、二人の子供を授かり、多くの友人ができた。アレクさんの狙撃騒ぎ等危険な事もあったが、トータルでは満足だ、普通の人が叶えられない人生の5倍は生きてるみたいで、精神が歳をとったと感じる時もある。これからも何があるかわからないが、ワタシはいい人生を送れている幸せな方なんだろう。どうなんだろう、ワカラナイ。目の前の事に全力で対応していくだけだ。でも一つだけわかる事がある。


 ワタシは寒い国から来たアナタを愛してる。


「アレクさん」
リエは、アレクの顔に両手を添え爪先立ちで顔を近づける。
「リエさん」
呼応してアレクも顔を近づける。
「アレクさん、あなたを好きでよかった」
「僕もです」
二人は軽くキスをする。

リエがローディピットからステージへ一歩踏み出す。
「行ってきます」
手を振り見送るアレク。

リエの登場に熱狂するブラヴァ・ドームの大観衆。


終わり
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

僕《わたし》は誰でしょう

紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。 「自分はもともと男ではなかったか?」  事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。  見知らぬ思い出をめぐる青春SF。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】あやかし団地 管理人見習い日誌

双月ねむる
キャラ文芸
就活全滅で「自分には社会性がない」と思い込む凛は、遠縁の親戚に紹介され、昭和レトロな巨大団地・さくらヶ丘第一団地の『管理人見習い』として住み込みで働くことに。しかしその団地には、中庭の「靴鳴らし」、エレベーター表示盤に棲む狐など、団地限定あやかし達が当たり前のように暮らしていた。 最初は逃げ腰の凛だったが、すねた空き部屋や、ベランダの風鈴が告げるSOSなど、人とあやかしのトラブルに巻き込まれながら、少しずつ『共同体』に関わる勇気を取り戻していく。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...