壺の中にはご馳走を

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山奥のレストラン②

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「厨房にズカズカ入るのも失礼だから、手前でシェフに声をかける。

『すみませーん、シェフ?』

 やはり返事がない。

 もしかして倒れてるのか、と不安になり、咎められるのを覚悟で厨房に足を踏み入れた。


 厨房を見て、ゾッとした。

 包丁は錆だらけ、まな板は大量の蛆が蠢いていた。

 料理台からポトポトと落ちる蛆が、俺に向かって来る。


 壁や床は何十年も掃除していないような、カビや変色が見られる。

 レストランにあって当然の、オーブンやコンロ、冷蔵庫はなかった。


 こんな設備でどうやってステーキを作ったんだ?

 俺たちが食べてる肉って一体何なんだ?


 すぐに引き返して、若本さんに食事を止めるように言った。

『先輩、ここヤバイです!! 料理に何入ってるか分かりません。今すぐ出ましょう!!』

 若本さんの腕を引っ張って無理やり外に出ようとするが、石みたいに動かない。


『若本さん!? 何でまだ食べてるんすか!! 詳しいことは車で話しますからっ』

 覗き込んだ若本さんの目は、焦点が合わずただ前を見ながらステーキを口へ運び続けいていた。

『ダイジョウブダ。オレハ ゼンブ タベルゾー』

 若本さんは抑揚のない言葉を発しながら、後2、3口で完食しそうだった。


 俺は完食させてはならないと直感した。

 いくら口で言っても、俺の言葉は若本さんに届かない。

 だから、フォークで若本さんの腕を突き刺した。


『いってぇー!!』

 若本さんは痛そうにしていたが、元に戻ったようだった。

『先輩、今すぐここを出ますよ! 話は後です!!』


 俺たちは急いで車に乗り込み、腕を傷めた若本さんに代わり俺の運転で山を下りた。

 道中、車内で俺は見たものを全て話した。

『そんなことがあったのか……。俺は何をしていたのかサッパリ覚えてない』

 やはり若本さんはあの時、危険な状態にあったようだ。


 翌日、若本さんと俺は顔を合わせて、同じことを言い出した。

 口に入れる物全てが不味くて仕方ないんだよ。

 まるで土や紙、粘土を食べているみたいだ。

 さっきの羊羹も、食べ物として味わうことができない」
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