壺の中にはご馳走を

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ユキちゃん②

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「でもそんなことって有り得ないんです。

 だってユキちゃんは私のイマジナリーフレンドだから。

 私にしか見えないし、聞こえない、実在しない存在です。


 なのに、ユキちゃんは校内で目撃されています。

 授業中、窓の外を見ると、教室の方を向いた女が落ちてきた。

 トイレで『ぐぎぎぎぎぎぎ』と声がする。

 私の席に座って、『死ね死ね死ね死ね……』と繰り返す女を見た。


 私はそんなもの見たり聞いたりしていません。

 でも周りが怖がっていて、次々と目撃情報が出ています。


 昔のユキちゃんは、雪のように可愛らしかった。

 声も透き通るようでした。

 でも浅黒く頬がコケたユキちゃんを最後に、私には見えなくなりました。


 ユキちゃんは目撃されるたびに、恐ろしい形相になっているようです。

 今日は、学年集会で学年主任が話している壇上に女が出たと騒ぎになりました。

 その女はボロボロの布切れを身にまとい、キバを剥き出しにして学年主任の背後に立っていたそうです。

 白髪やシワだらけの老婆だった、と言う人もいました。

 頭の中ではユキちゃんは私と同じペースで歳をとっていたのに、急にお婆さんになったんです。


 ユキちゃんが見えなくなった理由は分かりません。

 でも解放してあげたいんです。

 皆に怖がられて、ユキちゃんが可哀想です。

 私が作り出してしまったものだから、私が――。

 どうか、ユキちゃんをお祓いしてください」


 及川エリカは、親友との別れを決意しティサへやってきたのだった。

「お祓いありがとうございました。でもどうせだったら、ユキちゃんに直接会ってありがとうとごめんねを言いたかったです」

 ほろほろと涙を流して、店を出た。


 真也ももらい泣きしていた。

「エリカちゃん良い子でしたね~。イマジナリーフレンドでも大事な友達ですよぉ」

 と感傷に浸っている。


 だが茉美は違った。

「これが美談に聞こえるなんて、お前はバカだねぇ。呆れ返るほどのバカだよ。


 エリカにとっては親友でも、他人には恐怖の対象でしかない。それもそのはず、そいつは妖怪だからな。

 イマジナリーフレンドの正体は、かいだ。傀は元々人形にとり憑く妖怪で、人形を通して人間の精気を吸い取る。やがて人形に収まりきらない強大な力を持つと、その人間を乗っ取る。


 エリカも始めは人形遊びをしていたんじゃないか。そして傀は人形から飛び出した。何を考えたんだろうな。すぐにはエリカに危害を加えなかった。幼稚園児に成り代わるのが癪だとでも思ったんだろうか。

 ゆっくり時間をかけてエリカからより多くの精気を奪い、乗っ取る絶好のタイミングを待っていた。だが、高校生になったエリカは、自分への興味を失いつつあった。だから、学校で事件を引き起こし、エリカの興味を惹いた。

 自分だけ見えない、聞こえないとなると、原因が自分にあると思い込むからな。

 実際にエリカは涙を流すほど心を傾けたんだ。ここへ来るずっと前から、ご丁寧に名前まで付けた、その『ユキちゃん』とやらのことを想ったはずだ。

 傀の誤算は、エリカがヤツの元へ戻るのではなく、祓うという選択をしたことだ。

 親友より彼氏を選んだエリカの勝ちだよ」


 茉美は勝ち誇ったように笑った。

「興味をなくした相手を必死に押しても、煙たがられるだけさ。真也、お前も耳が痛いんじゃないか? 何事も駆け引きが大事だって、ねえ?」


 ゴチソウサマ、ゴチソウサマ。 
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