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21.食環境改善
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隣の部屋に入ると、そこにはカマドではなくやたら広い暖炉?のようなものがあった。
薪を燃やしたのであろう燃えカスと灰、すすけた壁。
多分、そこで火を焚くのは間違いないと思う。
食材も積んであるし、この部屋はおそらく調理場なのだろう。
ちょっと自信が無い言い方になるのは、煮炊きする炊事場がそれっぽくないためだ。
前世の記憶を探ると、昔の薪で炊事するカマドは粘土などで鍋なんかがすっぽりはまるような形を作り、煙は煙突を介して外に抜けるようになっていた。
だが、ここは暖炉のような焚き火場があってその焚火の上に金属の台を据え、その上に鍋などを置いて煮炊きするという仕組みらしく、屋外で行う焚火をそのまま屋内で行っているだけのような構造をしている。
これって煙たくないのだろうか?
まあ、それはさておき、ボクの興味はそっちではない。
ボクの目は調理台と思われる木のテーブルの上、籠に盛られて置かれている丸い物体たちに注がれていた。
丸い物体とは卵である。
テーブルの上に置かれた籠の中には、10個くらいの茶色い卵が盛られていたのだ。
「コレ、どうするの?」
「へい、茹でて明日の昼食にお出ししようかと。」
「2~3個貰ってもいい?」
ボクの言葉を聞いて、コルネロは訳が分からないという様子でテレサに顔を向ける。
つられてボクもテレサの顔を見る。
コルネロの中では、ボクよりテレサの許可の方がウェイトが重いらしい。
テレサが頷くと、
「いいですよ。でも、何に使うんで?」
「マヨネーズを作るんだ。」
「え?マイョ……何です?」
「マヨネーズ、だよ。野菜とかにかけるんだ。」
「マィォネェズ?何ですか?そりゃ。」
コルネロはマヨネーズを知らないのだろう。
『マヨネーズ』という単語を聞いて首を傾げている。
いや『マヨネーズ』は前世語だからコルネロが知らなくても仕方ないのか……。
『マヨネーズ』って、今世では何と言うのだろう?
いや、名称は何でも良いか、ボクはマヨネーズが食べたいのだ。
この世界でもサラダはあるのだが、玉ねぎの香りのする塩味のドレッシングやスゴく肉の味がするドレッシングのようなものがかかっていることが多く、これまで酸味の効いたドレッシングは出てきていない。
だからってなんでマヨネーズなんだっていうと、マヨネーズは応用がききやすい。
サラダにも使えるし、パンにも使える。
タルタルソースなどの派生品や、マヨネーズ炒めなど他の料理にも使える。
基本的なハーブ、塩味、コショウ味だけの味付けにバリエーションが生まれるのだ。
「どうすればいいんですかい?」
コルネロはやれやれといった感じで、ヘラのようなシャモジのような棒と深めの木の器を取り出した。
あれってかき混ぜる棒だよね?
あれ?混ぜるって知ってるのかな?
「作り方知ってるの?」
「いいえ、全然知りやせん。」
「お料理できるの?」
「へい、できやす。」
そういえばこの台所で働いてるって言ってたっけ。
「どうやって作るんでやんすか?」
「ああ、そうだね。ちょっと待ってね。今調べるから。」
作り方、作り方、マヨネーズの作り方。
ボクはこめかみに指を当てて前世の記憶を検索して作り方を思い出す。
「ど、どうしたんでやすか?」
うん、思い出した。
「卵と油を混ぜるんだ。白くなるまで。」
「卵と油が白くなる?なんででやんすか?ハハハ、卵は茹でなきゃ白くなんてならないでやんすよ?」
いや、茹でて白くなるのは凝固してるんでしょ?かき混ぜると乳化して白くなるんだよ。
ところで、話しているうちに口調が気安くなっちゃってるけどテレサの目つきが怖くなってるよ?
コルネロ、早く気付いた方が良いと思うよ?
「あはは、ご主人様は料理のことは何にも知らないでしょうからねぇ。」
おい、コルネロ、後ろ後ろ。気付け~。
「言ったな。白くなったら、コルネロはボクの子分になるんだからね。」
「あ~、いいですぜ。子分でもなんでもなってやろうじゃないですかい。」
このままボクへ気安い言葉をつづけると、テレサに消されそうなんだけどこのオジサンは全く気付いていなさそうだ。
一応、ボクの子分ってことにすれば、コルネロがテレサに消され……行方不明になることはないだろう。
……多分。
「まず、卵と塩と酢と油を器に入れて混ぜる。」
「スってのは何ですかい?」
「酸っぱいヤツ。」
「いや、だからスッパイってのは、何ですかい?」
え?酢って、お酢だよね。
あれ?酢って、前世語か?今世の言葉でなんて言うんだ?
「舐めると、スッぱ~ってなるヤツ。」
ボクが顔をすぼめて『酸っぱさ』について説明すると、コルネロの後ろでテレサの顔が少しひきつっている。
あれ?面白い?
「あはは、なんでやすか。その顔は、ハハハハハ。」
いや、コルネロ、君は笑いすぎ。
あと、後ろのテレサが瞬時にコワイ顔になったぞ。
自重しろ。
「もしかして、リーフェンですかい?」
そういって、コルネロが棚から壺を持ってくる。
持ってきただけで、なんだか変な匂いが感じられる。
なんだ?この匂い……?。
コルネロがその壺から中身を一匙掬って差し出す。
それをテレサが持ってきてくれたので、ひと舐めしてみる。
「うっわ、ちゅう~。」
その味はとても刺激が強くて口が『チュ~』って形になる。
コレが『酸っぱい』って味なんだね。
「アハハ、リーフェンで間違いなさそうでやんすね。」
コルネロがそう言って笑う。
酢はリーフェンというらしい。
「コレが『酢』なのかぁ。」
調理台の上に、卵、塩、油、酢が並ぶ。
「どのくらい入れるんでやすか?」
「さぁ?」
原材料は知ってるけど、分量はわからない。
そこまで調べてない。
そもそも分量の単位もわからない。
「作り方は、どうするんでやすか?」
「卵を混ぜながら油を入れる、だったかな?」
「塩はどうするんでやすか?酢は?」
「塩は先に卵と一緒に入れる。酢は後からちょっとずつ入れる?」
「聞かれても困るでやんす。ホントでやすか?」
近所の子供をからかうような表情で手早く卵を二つ割ると、手馴れた様子でかき混ぜ始めるコルネロ。
コルネロがボクに対して『ナメた口』をきくたびに後ろのテレサの眉がヒクヒク動く。
それを横目で見ながらボクが油の入った水差し(油差し?)を手に取ると、
「ご主人様、私がやりましょう。」
と言って、テレサが水差しをボクから受け取る。
あれ?さっきまで、コルネロの後ろに居なかったっけ?
いつの間にボクの横に来たんだ?
「どのようにいたせばよろしいでしょうか?ご指示願います。」
「分かった。コルネロが混ぜているところへゆっくり少しずつ入れてって。油の量は卵と同じくらい。」
「わかりました。さぁ、コルネロ。混ぜてください。」
そう言ってテレサはコルネロの方を向いて、コルネロの混ぜている器へ油を注いでいく。
最初はシャカシャカと軽くかき混ぜていたが、油が入ると少しずつ音が変わり始める。
おお、木べらでかき混ぜているのにどんどん混ざって泡立ってくる。
おお!なんだかプロの料理人みたいだ。
「ちょっと待って、ちょっと酢を入れて味見をしてみて。」
「え?ここで入れるんでやすか?」
「うん、ちょっと酢を入れてかき混ぜてみて。」
ボクがそう言うと、コルネロの返事を待たずにテレサが酢の壺のふたを開ける。
「どのくらい入れましょうか?」
「う~ん、あまり酸っぱくなくて良いと思うんだ。スプーン2杯くらい?」
テレサはコルネロの返事を待たずに酢をスプーン2杯、器へ入れる。
コルネロは料理人みたいだけど、コルネロに確認しなくてよいのだろうか?
と、コルネロの顔を見ると、何やら青い顔をしている。
あれだけ激しくかき混ぜたのに、暑くないのか?
「さあ、コルネロ。かき混ぜてください。ご主人様のおっしゃる通り、白くなるまで。」
少し低い声でテレサが攪拌の指示を出す。
コルネロは無言でコクコクと頷くと、先ほどにも増して早くかき混ぜ始めた。
見事な手つき、というか速すぎて手元がブレて見える。
「ハハハ、速い速い。」
ボクが褒めると先ほどの青い顔はどこへやら、コルネロはちょっと得意げな顔をしてニヤリと笑っている。
と、しばらくすると、明らかに粘度の高いものを混ぜている音に代わってきた。
「これは、結構、きついで、やすね。」
コルネロの額にも汗がにじみ、言葉も片言になっている。
「そろそろいいんじゃない?味見させてよ。」
ボクがそう言うと、テレサが小さなスプーンで白く粘着質になった液体を掬いその匂いを嗅いだ後、ボクの前に跪いて差し出してくる。
ボクは差し出されたスプーンを口に入れた。
すると、ボクの口の中にはまろやかな味が広がる。
でも、正直ほとんど味がしない。
「ちょっと酢と塩が薄いかな?」
出来上がったものは、かなり薄口だった。
それを聞いてテレサが即座に立ち上がり、酢をスプーンに掬い、器に入れようとする。
「ちょっと待ってくだせぇ。」
コルネロがそれを止めて自分も小さなスプーンで味見をする。
そしてなるほどと言って塩を数つまみと酢をスプーン3杯入れ、またかき回す。
そして出来上がったモノを小さなスプーンに掬い、また味見をする。
今度は、うんと頷くと、
「これでいかがでやすか?」
と言って、スプーンに掬ったモノをボクに差し出す。
ボクが手を伸ばす前にテレサが先に受け取り、また匂いを嗅ぐと跪いてボクの前にスプーンを差し出す。
それを舐めると今度は適度な酸味と少し塩味の効いた美味しい味がした。
「ちょっと塩味が強いけど、良いね。野菜に合いそうだ。」
ボクがそう言うと、テレサも掬って味見をする。
「左様でございますね。これならば脂ののったお肉にも合うかもしれません。」
うん、そうだね。
酸味が脂っこさを押さえてくれるから、肉だけに比べればちょっとさっぱりと感じるよね。
でも、実際には肉の脂に油でできたマヨネーズがプラスされるから、油摂り過ぎになっちゃんだけどね。
とはいえ、これでボクの食事にマヨネーズが出てくるようになるだろう。
塩味とコショウ味、謎の肉味だけだったボクの野菜生活に、マヨネーズという少し酸味がある調味料が加わって味のバリエーションが広がった。
食事の楽しみが増えてよかったよかった。
と、思っていたら、テレサに部屋に戻るように促された。
屋敷の探検のつもりだったのにマヨネーズ作りに熱中しすぎて時間が遅くなってしまった。
今日の探検はこのへんにしとこう。
ボクは、早速今夜の夕飯にマヨネーズを出してくれるようにコルネロに頼むと、少しルンルン気分で部屋に戻るのだった。
薪を燃やしたのであろう燃えカスと灰、すすけた壁。
多分、そこで火を焚くのは間違いないと思う。
食材も積んであるし、この部屋はおそらく調理場なのだろう。
ちょっと自信が無い言い方になるのは、煮炊きする炊事場がそれっぽくないためだ。
前世の記憶を探ると、昔の薪で炊事するカマドは粘土などで鍋なんかがすっぽりはまるような形を作り、煙は煙突を介して外に抜けるようになっていた。
だが、ここは暖炉のような焚き火場があってその焚火の上に金属の台を据え、その上に鍋などを置いて煮炊きするという仕組みらしく、屋外で行う焚火をそのまま屋内で行っているだけのような構造をしている。
これって煙たくないのだろうか?
まあ、それはさておき、ボクの興味はそっちではない。
ボクの目は調理台と思われる木のテーブルの上、籠に盛られて置かれている丸い物体たちに注がれていた。
丸い物体とは卵である。
テーブルの上に置かれた籠の中には、10個くらいの茶色い卵が盛られていたのだ。
「コレ、どうするの?」
「へい、茹でて明日の昼食にお出ししようかと。」
「2~3個貰ってもいい?」
ボクの言葉を聞いて、コルネロは訳が分からないという様子でテレサに顔を向ける。
つられてボクもテレサの顔を見る。
コルネロの中では、ボクよりテレサの許可の方がウェイトが重いらしい。
テレサが頷くと、
「いいですよ。でも、何に使うんで?」
「マヨネーズを作るんだ。」
「え?マイョ……何です?」
「マヨネーズ、だよ。野菜とかにかけるんだ。」
「マィォネェズ?何ですか?そりゃ。」
コルネロはマヨネーズを知らないのだろう。
『マヨネーズ』という単語を聞いて首を傾げている。
いや『マヨネーズ』は前世語だからコルネロが知らなくても仕方ないのか……。
『マヨネーズ』って、今世では何と言うのだろう?
いや、名称は何でも良いか、ボクはマヨネーズが食べたいのだ。
この世界でもサラダはあるのだが、玉ねぎの香りのする塩味のドレッシングやスゴく肉の味がするドレッシングのようなものがかかっていることが多く、これまで酸味の効いたドレッシングは出てきていない。
だからってなんでマヨネーズなんだっていうと、マヨネーズは応用がききやすい。
サラダにも使えるし、パンにも使える。
タルタルソースなどの派生品や、マヨネーズ炒めなど他の料理にも使える。
基本的なハーブ、塩味、コショウ味だけの味付けにバリエーションが生まれるのだ。
「どうすればいいんですかい?」
コルネロはやれやれといった感じで、ヘラのようなシャモジのような棒と深めの木の器を取り出した。
あれってかき混ぜる棒だよね?
あれ?混ぜるって知ってるのかな?
「作り方知ってるの?」
「いいえ、全然知りやせん。」
「お料理できるの?」
「へい、できやす。」
そういえばこの台所で働いてるって言ってたっけ。
「どうやって作るんでやんすか?」
「ああ、そうだね。ちょっと待ってね。今調べるから。」
作り方、作り方、マヨネーズの作り方。
ボクはこめかみに指を当てて前世の記憶を検索して作り方を思い出す。
「ど、どうしたんでやすか?」
うん、思い出した。
「卵と油を混ぜるんだ。白くなるまで。」
「卵と油が白くなる?なんででやんすか?ハハハ、卵は茹でなきゃ白くなんてならないでやんすよ?」
いや、茹でて白くなるのは凝固してるんでしょ?かき混ぜると乳化して白くなるんだよ。
ところで、話しているうちに口調が気安くなっちゃってるけどテレサの目つきが怖くなってるよ?
コルネロ、早く気付いた方が良いと思うよ?
「あはは、ご主人様は料理のことは何にも知らないでしょうからねぇ。」
おい、コルネロ、後ろ後ろ。気付け~。
「言ったな。白くなったら、コルネロはボクの子分になるんだからね。」
「あ~、いいですぜ。子分でもなんでもなってやろうじゃないですかい。」
このままボクへ気安い言葉をつづけると、テレサに消されそうなんだけどこのオジサンは全く気付いていなさそうだ。
一応、ボクの子分ってことにすれば、コルネロがテレサに消され……行方不明になることはないだろう。
……多分。
「まず、卵と塩と酢と油を器に入れて混ぜる。」
「スってのは何ですかい?」
「酸っぱいヤツ。」
「いや、だからスッパイってのは、何ですかい?」
え?酢って、お酢だよね。
あれ?酢って、前世語か?今世の言葉でなんて言うんだ?
「舐めると、スッぱ~ってなるヤツ。」
ボクが顔をすぼめて『酸っぱさ』について説明すると、コルネロの後ろでテレサの顔が少しひきつっている。
あれ?面白い?
「あはは、なんでやすか。その顔は、ハハハハハ。」
いや、コルネロ、君は笑いすぎ。
あと、後ろのテレサが瞬時にコワイ顔になったぞ。
自重しろ。
「もしかして、リーフェンですかい?」
そういって、コルネロが棚から壺を持ってくる。
持ってきただけで、なんだか変な匂いが感じられる。
なんだ?この匂い……?。
コルネロがその壺から中身を一匙掬って差し出す。
それをテレサが持ってきてくれたので、ひと舐めしてみる。
「うっわ、ちゅう~。」
その味はとても刺激が強くて口が『チュ~』って形になる。
コレが『酸っぱい』って味なんだね。
「アハハ、リーフェンで間違いなさそうでやんすね。」
コルネロがそう言って笑う。
酢はリーフェンというらしい。
「コレが『酢』なのかぁ。」
調理台の上に、卵、塩、油、酢が並ぶ。
「どのくらい入れるんでやすか?」
「さぁ?」
原材料は知ってるけど、分量はわからない。
そこまで調べてない。
そもそも分量の単位もわからない。
「作り方は、どうするんでやすか?」
「卵を混ぜながら油を入れる、だったかな?」
「塩はどうするんでやすか?酢は?」
「塩は先に卵と一緒に入れる。酢は後からちょっとずつ入れる?」
「聞かれても困るでやんす。ホントでやすか?」
近所の子供をからかうような表情で手早く卵を二つ割ると、手馴れた様子でかき混ぜ始めるコルネロ。
コルネロがボクに対して『ナメた口』をきくたびに後ろのテレサの眉がヒクヒク動く。
それを横目で見ながらボクが油の入った水差し(油差し?)を手に取ると、
「ご主人様、私がやりましょう。」
と言って、テレサが水差しをボクから受け取る。
あれ?さっきまで、コルネロの後ろに居なかったっけ?
いつの間にボクの横に来たんだ?
「どのようにいたせばよろしいでしょうか?ご指示願います。」
「分かった。コルネロが混ぜているところへゆっくり少しずつ入れてって。油の量は卵と同じくらい。」
「わかりました。さぁ、コルネロ。混ぜてください。」
そう言ってテレサはコルネロの方を向いて、コルネロの混ぜている器へ油を注いでいく。
最初はシャカシャカと軽くかき混ぜていたが、油が入ると少しずつ音が変わり始める。
おお、木べらでかき混ぜているのにどんどん混ざって泡立ってくる。
おお!なんだかプロの料理人みたいだ。
「ちょっと待って、ちょっと酢を入れて味見をしてみて。」
「え?ここで入れるんでやすか?」
「うん、ちょっと酢を入れてかき混ぜてみて。」
ボクがそう言うと、コルネロの返事を待たずにテレサが酢の壺のふたを開ける。
「どのくらい入れましょうか?」
「う~ん、あまり酸っぱくなくて良いと思うんだ。スプーン2杯くらい?」
テレサはコルネロの返事を待たずに酢をスプーン2杯、器へ入れる。
コルネロは料理人みたいだけど、コルネロに確認しなくてよいのだろうか?
と、コルネロの顔を見ると、何やら青い顔をしている。
あれだけ激しくかき混ぜたのに、暑くないのか?
「さあ、コルネロ。かき混ぜてください。ご主人様のおっしゃる通り、白くなるまで。」
少し低い声でテレサが攪拌の指示を出す。
コルネロは無言でコクコクと頷くと、先ほどにも増して早くかき混ぜ始めた。
見事な手つき、というか速すぎて手元がブレて見える。
「ハハハ、速い速い。」
ボクが褒めると先ほどの青い顔はどこへやら、コルネロはちょっと得意げな顔をしてニヤリと笑っている。
と、しばらくすると、明らかに粘度の高いものを混ぜている音に代わってきた。
「これは、結構、きついで、やすね。」
コルネロの額にも汗がにじみ、言葉も片言になっている。
「そろそろいいんじゃない?味見させてよ。」
ボクがそう言うと、テレサが小さなスプーンで白く粘着質になった液体を掬いその匂いを嗅いだ後、ボクの前に跪いて差し出してくる。
ボクは差し出されたスプーンを口に入れた。
すると、ボクの口の中にはまろやかな味が広がる。
でも、正直ほとんど味がしない。
「ちょっと酢と塩が薄いかな?」
出来上がったものは、かなり薄口だった。
それを聞いてテレサが即座に立ち上がり、酢をスプーンに掬い、器に入れようとする。
「ちょっと待ってくだせぇ。」
コルネロがそれを止めて自分も小さなスプーンで味見をする。
そしてなるほどと言って塩を数つまみと酢をスプーン3杯入れ、またかき回す。
そして出来上がったモノを小さなスプーンに掬い、また味見をする。
今度は、うんと頷くと、
「これでいかがでやすか?」
と言って、スプーンに掬ったモノをボクに差し出す。
ボクが手を伸ばす前にテレサが先に受け取り、また匂いを嗅ぐと跪いてボクの前にスプーンを差し出す。
それを舐めると今度は適度な酸味と少し塩味の効いた美味しい味がした。
「ちょっと塩味が強いけど、良いね。野菜に合いそうだ。」
ボクがそう言うと、テレサも掬って味見をする。
「左様でございますね。これならば脂ののったお肉にも合うかもしれません。」
うん、そうだね。
酸味が脂っこさを押さえてくれるから、肉だけに比べればちょっとさっぱりと感じるよね。
でも、実際には肉の脂に油でできたマヨネーズがプラスされるから、油摂り過ぎになっちゃんだけどね。
とはいえ、これでボクの食事にマヨネーズが出てくるようになるだろう。
塩味とコショウ味、謎の肉味だけだったボクの野菜生活に、マヨネーズという少し酸味がある調味料が加わって味のバリエーションが広がった。
食事の楽しみが増えてよかったよかった。
と、思っていたら、テレサに部屋に戻るように促された。
屋敷の探検のつもりだったのにマヨネーズ作りに熱中しすぎて時間が遅くなってしまった。
今日の探検はこのへんにしとこう。
ボクは、早速今夜の夕飯にマヨネーズを出してくれるようにコルネロに頼むと、少しルンルン気分で部屋に戻るのだった。
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