健康で文化的な異世界生活

三郎吉央

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58.キック自転車の完成と自転車の進化

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数日後、キック自転車が完成したとサムから連絡があったので、早速ボクの館へ運んでもらう。

大広間の豪華なタイルの上に置かれたキック自転車。
第一印象は『竹』という感じだった。

所々縄で縛ってあったりしてかなり素朴な作りでメリアはかなり不満そうだったが、ボクが描いたテキトーな絵からここまで作ってくれたのだ。
サムには感謝だ。

キック自転車は三本の竹の棒を組み合わせて三角形を作り、それにまた二本の竹の棒二つを繋げてトラス構造に組んでメインフレームを組んである。

トラス構造に組むことで縦方向には強くなったけど、横に捻る方向への強度が足りなかったのだろう。
トラス構造に組んだ竹の横に沿えるように気の棒が括り付けられており、その棒で三角のフレームが横に折れるのを防ぐようになっている。

前後に木製の車輪が付いていて、その車輪は新しい物なのか車輪の縁が四角いからバンクさせたら乗りにくいかもしれない。
だけど、ハンドルもちゃんと浅い角度がついていて曲がる事もできそうだ。

座るための座面には馬の鞍の様な物が取り付けられていてちょっと足漕ぎしにくいかもしれないが椅子の後ろから上方向に伸びた竹槍マフラーの様な、いや一本の棒だから幟立ての様な飾り……は何のためについているのかわからないが、こういう乗り物はイイ!テンションが上がる!

「乗ってもいい?ねえ、乗ってもいい?」

「ですがご主人様、コレは危ないのではないですか?」

テンション高めなボクに半分諦めた様にメリアが聞いてくるが、
「ちょっと見た目はなんですが、あっしが座っても壊れやせんから大丈夫でごぜえますよ。」
と、サムが答える。

加えて、
「なにかありましたら私とテレサでお支え致しますので大丈夫ですよ。」
と、マルカが口添えしてくれたのでメリアも渋々と引き下がった。

「さあ!乗ってみよう!」
ボクはそう言って早速跨ってみる。

フレームを跨ぐ時、背もたれのような幟立てが少し邪魔だが、跨って据え付けられた鞍に座った感じは凄く安定感がある。
これはあれか?車輪のタイヤ部分が四角いためだろうか?

そういう疑問は湧くが、今僕は自転車に乗っている。コレはテンションが上がる!

「レッツゴー!」

ボクはそう言ってハンドルを握ると床を蹴ってみるとキック自転車は結構な勢いで加速した。

「おお~!」

一蹴りしただけなのに、キック自転車はフレームをギシギシとたわませながらも大広間を横切って大広間の端っこまで走っていった。

おお!これはスゴイ!たった一蹴りで30メートル近くも走れたぞ!

「サム、これはスゴ……イ。」

その感動をサムに伝えようと振り返ると、すぐ後ろにテレサが居た。
キック自転車の座席の後ろから幟立てのように伸びた棒を持って。

……。

「……押しますか?」

ボクと目が合うとテレサはちょっと考えて、そう聞いてきた。
って、スゴく長い距離走れたと思ったけど、もしかしてテレサが押してたのか?

「押してた?」

「?……はい。」

テレサは無表情ながらも『どうしたんだろう?』って感じの表情をしている。

「持ってちゃダメでしょ!子供は自転車に乗るとき『転んでおぼえるモノだ』ってのが定番でしょ!」

ボクがそう言うと、
「転ぶ、のですか?」
と、『その部分』にメリアが反応した。

うお、ヤバい。あえて黙ってたのに自らバラしてしまった。

「メリア様、転ばないようにこの持ち手が付いているのですわ。テレサもおりますし、大丈夫ですわよ。」

ヤバい、どうしようとか考えているとマルカが助け舟を出してくれた。

「それは、そうかもしれませんが。」

「それに、じきにノーも出来上がるとトマス様より連絡もありましたので危なくないですわ。」

加えてマルカがそう言うとメリアは少し考えて、
「わかりました。ですが、頼みましたよ。マルカ。」
と言って引き下がった。

『ノー』ってなんだっけ・ああ、ヘルメットの事か。

メリアはボクの事を心配してくれんだけど、すごく心配性で過保護なところがあるなあ。

しかし、ということはボクのキック自転車は補助ハンドル付きのままになるのか。

ムゥと少し憮然とした気持ちになったが、ここでゴネてメリアに止められては元も子もない。
ということで補助ハンドルについては妥協することにした。

などと考えていたが、大人にハンドルで押してもらうと結構速い。

押すのは基本テレサなのだが、急いでいる様子も息が切れている様子もないほど普通に押してくれている様子なのだが、それでも結構な速さで進む。

「ブルンブル~ン。そ~れ、ハングオ~ン。」

と、体勢を傾けてもビクともしないし、なんなら後輪を滑らせるようにターンもしてくれる。

アハハ、おもしろい!
欲を言えば、足が置けるペダルがあればもっと良かったかもしれない。

ひとしきり遊んだ後、キック自転車を作ってくれたサムにご褒美のお菓子を作ってあげることにした。

「サム、ご褒美だよ。」

そう言ってコルネロがいる厨房へ向かうと、めずらしく?厨房にコルネロは居なかったのでレーネが探しに行ってくれた。
待っている間にさっきキック自転車に乗っていて思ったことをサムに伝えて改善を頼む。

「車輪だけど、車輪は丸くしてほしいんだ。それと、この際だからこんな風な足ふみペダルもつけてくれるかな。ほら、前にサムが持ってきてくれた車輪が二つ付いたような道具があったじゃない?あんな感じのものをここに付けるの。」

ボクはキック自転車の絵図面を指し示しながら、そこにペダルとチェーンを書き足していく。

「へい?この前持ってきたって、言うと糸スクウィルでごぜえますか?あれは糸を巻く道具でごぜえますよ?」

「そうそう、アレの手で回すハンドルを両側に付けたみたいなヤツ。それをココに付けるんだ。そしたら足で踏んで車輪を回せるし、足も置けるでしょ?」

ボクがそう言うと、
「いやしかし、アレはそんな強く回らんですぜ?」
と少し困った顔をした。

ああ、なるほど、あの糸車みたいなやつだと摩擦力とか強度とか足りないか。

「それじゃあさ、こんな感じのギヤ作って、チェーン……は無理だから、縄でこういう縄梯子みたいなのを編んでチェーンの代わりにできないかな?」

ボクはそう言って2本の縄とその間に紐を結んで縄梯子のようになったチェーンモドキと、車輪の輪っかを外したようなギヤを絵図面に描き出す。

一瞬、ベルトドライブとかシャフトドライブとかも考えたのだが、ああいうのはゴムとか金属加工とかできないと無理そうだ。

「へい?こういう形のもんを……でごぜえますか?なるほど、こういうモンなら出来そうでさ。」

「ホントはチェーンは金属でこういう形のものを作って組んでやればいいんだけど、難しいし、チェーンはバラバラがいっぱい要るからねえ。」

「へい!?金属で、でごぜえますか?そいつぁ……スゲエでごぜえますな。」

ボクが絵図面の横にギヤとチェーンとチェーンの部品を描くとサムは凄く驚いた顔をしている。
そうだよね。チェーンって部品がたくさん必要だし、こんな小さい部品をたくさん作るのは大変だ。

「あとはブレーキがあれば正式な自転車なんだけどね。」

「ブェーキ?なんですかい?そりゃ?」

「止まるときに使うんだ。こういう風になってて、この棒を握ったらこの紐が引っ張られてここが動く。でも、これはバネとかワイヤがないと厳しそうなんだよねぇ。」

ブレーキはテコの原理とか使うし、ワイヤのような弾力のある紐でないと作るのがむつかしそうだ。

昔の自転車とかだとワイヤじゃなくて金属でブレーキを引っ張ったりしてたみたいだけど、こういうのは言葉での説明が難しい。

「う~ん、こういうのはよくわかんねえんで、トマスに相談してみまさあ。」

サムもブレーキの部分はよくわからなかったようで、難しそうな顔をしてヒゲを撫でている。

「そういやあ、トマスでごぜえますがキックディテンシャーを使わせてほしいとか言うとりましたぜ?」

考え込んでいたサムが思い出したようにそんなことを言う。

「え?トマスがキック自転車を?なんで?」

なんでトマスがキック自転車を使いたいんだ?というか、キック自転車の事を知ってるんだ?

「へい。作ったキックディテンシャーが壊れるんでトマスに相談したんでごぜえますが、そん時に気に入ったらしくて、使いてえって、そう言ってたんでさあ。」
サムはそう言ってまたヒゲを撫でた。

「別にいいよ?乗りたいんだったら使えば良いんじゃない?」

むう、トマスもこういう乗り物に興味があるのか?
いや、トマスはなんかモノを作るのが得意みたいだからああいうメカチックなものが好きなのかもしれない。

「ああ、でも、ちゃんとヘルメットは被らないとだめだよ?危ないからね。」

自転車乗るときはちゃんとヘルメット着用しないとね。

「へい?ヘゥメットってのは?……ああ、ノーの事ですかい?わかりやした。そう伝えときまさあ。」
サムはそう言ってヒゲを撫でながら笑った。

「コルネロを連れてきました。」

「おくれやした。すいやせん。」

ちょうど、レーネとコルネロが厨房に入ってきた。
さあて、今日はどんなお菓子を作ってもらおうかな。
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