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2.嬉しいこと、悲しいこと
しおりを挟む今から18年前、アールノイドには1つの嬉しい出来事と、1つの悲しい出来事が起こった。
空がどんよりと曇ったその日、朝早くから城内はざわついていた。
「ほらこれ持って行って!あとこれも!!」
使用人たちは廊下を駆け回り、兵士たちは今か今かと待ち望んでいる。
それは、アールノイド王国初の、王女の誕生だった。
「王女様がお生まれになったわ!!!」
「可愛らしい女の子よ!!」
すぐにその知らせは王国一帯に広がり、民は王女の誕生を心から祝福した。
雪のように白い肌に長い睫毛。王妃によく似た顔立ちで、とても愛らしい王女様。
そんな赤子の頬を、6歳の王子である兄、レオン・アールノイドは優しく撫でた。
彼はお兄ちゃんになったのだ。こんなに可愛い妹の兄に。それが嬉しくてたまらなかった。今日は自分の誕生日よりも素晴らしい日だと思った。
そして、赤子を抱いている母もまた、幸せな気持ちで胸がいっぱいだった。
「娘は!!!?」
そこへ国王も駆けつけた。
「ここに」
ゆっくりと近づく。
妻の腕の中で気持ちよさそうに眠る娘の姿に、国王はホロリと涙を流す。
「あらあなた、ふふ、そんなに嬉しかったのね」
「当たり前だろう!!」
「父上!母上!赤ちゃんの名前は決まったの?」
「ああ決まったよレオン。この子の名は______________…
王室から幸せそうな笑い声が溢れた。
だが、この時すでに、悲劇は起こっていた。
王女が生まれて間もなく、ある事件が起きる。
その日は大雨だった。
「空が暗い……」
6歳のレオンは王室の窓から空を見上げていた。降り注ぐ雨。まだ昼過ぎにもかかわらず、分厚く黒い雲のせいで辺りは夜のように暗い。
レオンはどこからか不安を感じ取り、側に立っている彼の使用人に声をかける。
「ねぇ、クリス。なんだか嫌な予感がするんだ」
クリスと呼ばれたその男、本名をクリストファー・アラベル。高身長で長いプラチナの髪、眼鏡をかけているせいなのか、感情の見えない顔がさらに彼を固く見せる。
レオンの言葉に彼は遠い何処かを見つめながら言った。
「嫌な予感ですか…。残念ながらその予感は当たってしまうかもしれません」
「どうして?」
「ここアールノイドは決して乾いた土地ではありませんが、こんなにも記録的な雨が降るのは稀です。
レオン様はご存じなのでしょうか。
これは私が幼い頃に祖父から教えてもらったことでございますが、アールノイドに大雨が降るのは不吉なことへの前兆だと言います」
「そうなのか?」
「はい。本当かどうかは定かではありませんが、実際、過去に起きた自然災害や紛争、魔物の襲撃など、大雨の翌日にそれらのよくない出来事が起こっています。
故に、アールノイドに大雨が降るのは悪いことが起こる前触れだと……」
「そんな話、父上からも母上からも聞いたことなかったよ。
…………ただの噂話とかだったらいいね」
「そうですね。ほんとうに」
レオンは心の中で祈った。
(悪いことが何も起こりませんように。)
しかし、それは本当に前触れとなってしまった。
翌日、母上と生まれたばかりの妹が
消えたのだ。
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