時空記 壱

アリセ

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第一部 日常の日々の崩壊編 

新生活

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         ~壱~
あの日から、半月が経った。自然と城内の殆どの人々とも顔見知りになった。勝家さんや長秀さん、滝川さん、そして明智光秀。今は1582年。本能寺の変まであまり時間が無い上に、いつ動き出すか分からない。明智光秀という男には注意が必要だ。今は情報を掴むために積極的に話しかけたりしている。すると、
「来也、稽古の時間だぞ。着替えて武道場に早く来いよ!」
と、勝家さんの声がした。勝家さんは俺の剣術師範役でもあるのだ。早速袴に着替えて武道場に向かう。
武道館に着くと既に勝家さんが入り口で待ち構えていた。
「来るのが遅いぞ!時間が無いから早速練習じゃ!」
勝家さんは実戦経験が豊富で、教え方もすごく上手い。どんどん上達する上に、楽しすぎて練習時間がいつも早く過ぎてしまうのであった。勝家さんとの練習が終わると、長秀さんのもとへ走って向かう。長秀さんは頭が良い。長秀さんは右も左も分からない俺の事を思って勉学を教えてくれるのだ。勉学はとても難しいのだが、現代の学校で受けていたつまらない授業よりは数倍楽しかった。最初は戸惑っていた俺だが、今は現代にこれといった未練も無くなり、忙しいのだがとても充実している安土城での新生活に、ずっとここにいたいという気持ちが芽生え始めていた。
         ~弍~
今日は剣術と勉学が無い為、空き時間が多くあった。俺は最近あまり話していなかった明智光秀と飯を食べることにした。歩いていると、縁側で一人、弁当を食べている光秀を発見した。早速話しかける。
「光秀さん、お久しぶりです。」
「あぁ、来也殿か!どうしたのじゃ。」
「来也で良いです。光秀さんの方が年上ですし。」
「すまんすまん。ゴホン、では、来也、どうしたのじゃ。」
「あの、良かったら弁当、一緒に食べませんか?」
「え、あぁ、もっと大事な用かと思うたわ!そのようなことなら全然良いぞ!」
あまり誰かと一緒にご飯を食べないのか、光秀はとても嬉しそうだ。二人で弁当を食べ始める。待てども待てども光秀が何も話しかけない為、俺から話しかけることにした。
「あの、信長殿のことはどう思っているのですか?」
「いきなりその話か。あぁ、信長殿は皆をまとめる良い武将だと思うている。だがしかし…」
そこで光秀は話すのをやめた。今しかチャンスが無いので、突っ込んでみる。
「だがしかし、何ですか?」
光秀がため息をつきながら話し始める。どうしよう、怒らせちゃたかな…
「だがしかし、信長殿は私のことを『キンカン頭』とお呼びになされたりされるのが…私、冗談を真に受けてしまうので…」
と、困った顔で俺に言った。光秀は真面目なのだろう。すると、光秀はハッと我に返り、こう言った。
「この事は秘密にしておいて下さい。ばれると…あれですから。」
「あ、はい。もちろんですよ!」
「君みたいな口の堅いやつに愚痴をこぼせて良かったよ。…今日はありがとう。」
「俺も一緒にご飯を食べることが出来て楽しかったです。また機会があれば食べましょう!」
「あぁ、その時はまた。では。」
そう言って颯爽と光秀は去っていった。今わかった事は…
1、信長のリーダー性は悪いイメージを持っていないと言う事。
2、信長がつけたあだ名が気に食わないこと。
3、真面目な性格だと言う事。
の三つである。あの感じだとあだ名が気に食わなくて…となる確率が高い。信長のあだ名はすぐやめさせないと…
そう思った。というか、グズグズしている時間は無い。だって、あと何ヶ月かで信長は暗殺されてしまうから。たとえ歴史が変わっても良い。信長を守れるのは未来を知っている俺しかいない。なんとしてでも守りきらなければ―――
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