風のささめき

崖っぷちビバーチェ

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アンサー

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「ねえ、本当のことを教えてよ
多分つまらないと思うけど
ずるい人ばっか得していたり
頑張れば頑張るほど馬鹿を見たり
愛した分だけ愛されるわけじゃなかったり
どうしてなのかな」


「ねえ、本当のことを教えてよ
きっとありきたりのことだけど
転んだら膝に傷ができたり
頭を打ってたんこぶができちゃったり
でも笑われて苦しくなって痛むのは
胸だけなのかな」

どろり雲をこぼしたような曇天の空は
今にも泣き出しそうだったから
わたしはまたひとつ息をついた

「人の心をわかる人にって
学校でも散々言われたのに
今を生きる誰もが自分を隠して生きるのは
どうしてなのかな?
言葉にしなきゃわかんないって
何度もしくじって知ってるのに
わたしの喉につっかえて出てこない空気は
どうしてなのかな?」



「ねえ、本当のことを教えてよ
たまにふと思うことがあるの
正しくたって救われないのに
無意識に盲目的に信じてしまうんだ
正しければ正しい分だけ幸せになる
そんなのあるわけないのに」

夕立のなかを傘もささないで歩いていた
落ちる細い水がまるで針のようで
わたしはまたひとつ息をついた

「真面目に誠実に生きろって
みんな一度は聞いたことあるのに
それがいつでも裏目にしか出ない毎日は
どうしてなのかな?
常識とかいうものが首を締めて
もう息ができないぐらいなのに
自分から型に流されてしまうのは
どうしてなのかな」


「ねえ、本当はわたし知ってるの
愛なんかじゃなにも買えないって
夢も希望も幸福も心だって
愛したら愛した分だけ愛される
そんな事務的なシステムなら」

「ねえ、本当のことを教えてよ
多分興味もないだろうけど
あなたから見えるわたしのこと
見え透いた言葉じゃ響かないんだな
もっとちゃんと突き放して欲しいの
断崖の底へ」

なんてね、これは嘘
……気づかないでね


「誰でもいいからなんて
ヤケクソになって求めたって
誰も振り向いちゃくれない それが現実だよ
なんで??
生きててもいいんですか
このままのうのうとただ時間を貪って
正しく優しく清らかにただ白痴のように
知らないふりして?」 

うまく笑えないのはどうしてなのかな

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