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EPISODE 7 決闘、アナザーセントラル
星の中心へ
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エレベーターが起動する音が聞こえた。
きっと、彼等が乗っている。彼女達が乗って来る。
意味を与えに、来てくれる。
私は静かに、そっと銃弾を込めた。
EPISODE 7 決闘、アナザーセントラル
「これで動くはずだ」
エントランスの中は殺風景な空間であった。暗がりを照らす電灯と、中央に大きめのエレベーターがあるだけの施設。まるで、何かの入り口と言った方が正しい様相。この建物自体に何かの意味があると思えないほど、内装は簡素だった。
アンディはエレベーターの配電盤、スイッチ、操作パネル、あらゆる装置を介して起動させる。どうやらパスワードが必要だったようだが、元治安維持部隊の時のものが使えたらしい。起動に時間は掛からなかった。
透明な素材作りのエレベーターが開くと、中から怪しい光が漏れる。重苦しい霧のような煙がウィンとアンディの足元を這いずった。
「……行きましょう」
「この先にマザーがいるはずだ」
二人はエレベーターに乗り込む。静かに扉が閉まり、駆動音と同時、浮遊感を覚えた。エレベーターは下方へと向かっているらしい。透明な外壁越し、電子部品や基板のランプやケーブルの光沢が星のように輝き、流れていく。
「機械の星の中心にマザーがいるのですか?」
「機械の星は生活区域を拡張しながら、規模を拡大してきた。言わば機械の星の中枢部、そこにマザーは設置されている」
アンディはウィンの背中を押した。彼女はエレベーターの壁に向かって追いやられる。
「な、なんですか?」
「今に景色が変わる」
「え?お?おおっ?」
透明な外壁はやがて眼下の風景を映した。そこには見覚えがある。
「セ、セントラルがもう一つ⁉」
それは先程まで渡り歩いていた都市と、まるで同様。背の高い建物にはネオン管のような幻想的な光。照らされた路地には薄く霧がかかっていて、地面はコンクリートで舗装されている。
都市の中心には軌道エレベーターと、その基部には歪な構造物が鎮座していた。
「……これは」
アンディが呟いた。彼の声は懐かしむように柔らかい声だったが、同時に驚愕を孕んでいる。
ウィンはアンディの顔を覗く。
「どうしました?」
「本当は、俺はこの都市を知っているはずだ。だが……」
アンディは手をエレベーターの外壁に滑らせた。機械の手が外壁を引っ掻く。指の先にある景色、そこはかつて、彼が人間と共に過ごした街があるはずであった。
「この都市は……、懐かしくもあるが、違う」
「どう違うんですか?」
「発展し過ぎている。ここまでの居住区域は無かった」
アンディは腕を組み考える。自身の記憶が曖昧になったのか、定かではない。漠然とした不安が彼の胸に宿った。
「大丈夫ですよ」
「む?」
腕が引かれた。小さな手によって。
ウィンは考え込むアンディの腕を解き、彼の背中を叩いた。
「やることは変わりませんから。マザーに会いに行く。そうでしょう?」
「……ああ、そうだな」
二人は軽く笑いあった。やることは変わらない。二人は進み始めたのだ。
マザーを説得し、機械の星を存続させる。そのために歩み始めたのだ。
二人は眼下の都市を見下ろす。目を離さないよう、見逃さないように、長い間そうしていた。
きっと、彼等が乗っている。彼女達が乗って来る。
意味を与えに、来てくれる。
私は静かに、そっと銃弾を込めた。
EPISODE 7 決闘、アナザーセントラル
「これで動くはずだ」
エントランスの中は殺風景な空間であった。暗がりを照らす電灯と、中央に大きめのエレベーターがあるだけの施設。まるで、何かの入り口と言った方が正しい様相。この建物自体に何かの意味があると思えないほど、内装は簡素だった。
アンディはエレベーターの配電盤、スイッチ、操作パネル、あらゆる装置を介して起動させる。どうやらパスワードが必要だったようだが、元治安維持部隊の時のものが使えたらしい。起動に時間は掛からなかった。
透明な素材作りのエレベーターが開くと、中から怪しい光が漏れる。重苦しい霧のような煙がウィンとアンディの足元を這いずった。
「……行きましょう」
「この先にマザーがいるはずだ」
二人はエレベーターに乗り込む。静かに扉が閉まり、駆動音と同時、浮遊感を覚えた。エレベーターは下方へと向かっているらしい。透明な外壁越し、電子部品や基板のランプやケーブルの光沢が星のように輝き、流れていく。
「機械の星の中心にマザーがいるのですか?」
「機械の星は生活区域を拡張しながら、規模を拡大してきた。言わば機械の星の中枢部、そこにマザーは設置されている」
アンディはウィンの背中を押した。彼女はエレベーターの壁に向かって追いやられる。
「な、なんですか?」
「今に景色が変わる」
「え?お?おおっ?」
透明な外壁はやがて眼下の風景を映した。そこには見覚えがある。
「セ、セントラルがもう一つ⁉」
それは先程まで渡り歩いていた都市と、まるで同様。背の高い建物にはネオン管のような幻想的な光。照らされた路地には薄く霧がかかっていて、地面はコンクリートで舗装されている。
都市の中心には軌道エレベーターと、その基部には歪な構造物が鎮座していた。
「……これは」
アンディが呟いた。彼の声は懐かしむように柔らかい声だったが、同時に驚愕を孕んでいる。
ウィンはアンディの顔を覗く。
「どうしました?」
「本当は、俺はこの都市を知っているはずだ。だが……」
アンディは手をエレベーターの外壁に滑らせた。機械の手が外壁を引っ掻く。指の先にある景色、そこはかつて、彼が人間と共に過ごした街があるはずであった。
「この都市は……、懐かしくもあるが、違う」
「どう違うんですか?」
「発展し過ぎている。ここまでの居住区域は無かった」
アンディは腕を組み考える。自身の記憶が曖昧になったのか、定かではない。漠然とした不安が彼の胸に宿った。
「大丈夫ですよ」
「む?」
腕が引かれた。小さな手によって。
ウィンは考え込むアンディの腕を解き、彼の背中を叩いた。
「やることは変わりませんから。マザーに会いに行く。そうでしょう?」
「……ああ、そうだな」
二人は軽く笑いあった。やることは変わらない。二人は進み始めたのだ。
マザーを説得し、機械の星を存続させる。そのために歩み始めたのだ。
二人は眼下の都市を見下ろす。目を離さないよう、見逃さないように、長い間そうしていた。
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