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第三章:妹が家に帰ってきたよ
兄への目覚め
しおりを挟む【二】
【進藤蓮のオリジン】
その人物は、一目で並ではないとわかった。
ボサボサの髪、擦り切れてボロボロになった外套。
リュックには、当時の進藤蓮にはわからないサバイバル道具が詰まっていた。
パンパンに膨らんだそれは、担ぐだけで苦行になるだろう。
「おう、なんの用だ、坊主」
目元を覆う前髪に清潔感はなく、獣臭が男児の鼻孔を貫く。
自然に涙が浮かぶほどの刺激臭。
極めて長い時間、シャワーを浴びていないのがわかった。
「ここは、うちの山だ」
「へえ、良い遊び場があってよかったじゃねえか」
「不法侵入とかになるんじゃないの?」
覚えたての言葉を使ってみた。
別に本当に違法だと糾弾しているわけではない。
少しでも相手と話ができるきっかけを求めていた。
蜥蜴の串焼きを食いながら、毛むくじゃらの不審者がニヤリと笑う。
「難しいこと知ってんな」
「あんた、強いんだろ」
「どうしてそう思う?」
蓮が指差した先には、この山の主である巨大なヒグマの亡骸があった。
身の丈五メートルは超えようかという尋常ならざる巨体。
銃で殺されたものではない。
素手の一突きで殺されたものだ。
「ここにいてもいいし、警察にも連絡しない。ただ、俺を鍛えてくれ」
「おめえには無理だ」
想定していた反応だった。
取り付く島もない。
「自信がないんだろ? だからホームレスなんてやってるんだ」
皮肉が効いたわけではなかった。
だが、毛むくじゃらの奥にある眼光が蓮を一瞥し、舌打ちした。
そうしている間も、食事の手は止まらない。
「そんなガキの身分で、地獄に行こうと考えるな」
「妹が異世界転生した」
焚き火で煮ていた蛙の煮物を、木の椀で掬っていた手が止まる。
「…………帰ったやつはいねえんだろ?」
「強くなりたい」
両の拳を強く握りしめ、
太陽の光が燦々と照りつける下で、
進藤蓮は一念を提げ、不審者に弟子入りをした。
「妹が、どこかで泣いているかもしれないんだ」
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